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反復ベータ積分の応用:楕円積分のモーメントを計算する

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今回は反復ベータ積分を利用して楕円積分のモーメントを計算し、最後に系として二項係数が3乗入った級数の値を計算してみます。例によってβn:=(12)nn!=(2nn)22nとします。
以下の公式は基本的です。

反復ベータ積分

0xt2n11t2dt=12nβnnmβmx2m1x20xt2n1t2dt=βnn<mx2m11x22mβm x1t2n11t2dt=12nβnm=0n1βmx2m1x2x1t2n1t2dt=βn(x111t2dt+m=1nx2m11x22mβm)

以上の公式を用いて、まずは補題として次のモーメントを計算します。

01arctanh(x)1x2x2n1dx=π212nβnm=0n1βm201arctanh(x)1x2x2ndx=βn(2β(2)+m=1n1(2m)2βm2)
ただしarctanh(x)=12ln(1+x1x),β(2)=0n(1)n(2n+1)2

01arctanh(x)1x2x2n1dx=0<t<x<111t2dtx2n11x2dx=12nβnm=0n1βm01t2m1t2dt=π212nβnm=0n1βm2

01arctanh(x)1x2x2ndx=βn(01arctanh(x)1x2dx+m=1n12mβm01x2m11x2dx)=βn(2β(2)+m=1n1(2m)2βm2)

楕円積分K(x)は次の級数表示を持ちます:
K(x)=π20mβm2x2m
したがって、その整数モーメントの級数表示は次のようになるはずです。
01K(x)x2n1dx=π20mβm22n+2m
この級数はよく観察すると、項別積分によって次のような反復積分による表示を持つことがわかります。
π20mβm22n+2m=0<x<t<1x2n11x2dx1t2n1t2dt
これを反復ベータ積分によって前から計算してみると、
0<x<t<1x2n11x2dx1t2n1t2dt=12nβn0mβn+m01t2n+2m1t21t2n1t2dt=12nβn0mβn+m2m+1=12nβn2π01arctanh(x)1x2x2n1dx =1(2n)2βn2m=0n1βm2
というようにarctanh(x)1x2のモーメントに帰着できることがわかります。同様にしてnn+12として半整数モーメントも計算することができ、まとめると次のようになります。

K(x)のモーメント

01K(x)x2n1dx=1(2n)2βn2m=0n1βm201K(x)x2ndx=βn2(2β(2)+m=1n1(2m)2βm2)

これを用いてよく知られた積分01K(x)1x2dx=π240nβn3=π24πΓ(34)4にもう一つの級数表示を与えることができます。積分を11x2のモーメントではなくK(x)のモーメントを用いて展開してみると、
01K(x)1x2dx=0nβn01x2nK(x)dx=0nβn3(2β(2)+m=1n1(2m)2βm2)となり、
0nβn3(2β(2)+m=1n1(2m)2βm2)=π24πΓ(34)4
が得られます。

投稿日:2023123
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