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数学における証明のポイント【随時更新】

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命題論理に関する証明のポイント

  1. 真理表(または評価)の計算$ $
    1.1 $\lor,\land,\Rightarrow,\neg$(および後述の $\Leftrightarrow$)の真偽は、
    以下の定義(真理表または評価規則)に還元して判断する。
    必要最小限の列を、定義に従って機械的に埋める($\neg$$\lor$$\land$$\Rightarrow$$\Leftrightarrow$)。
    $$ \begin{array}{|c|c|c|c|c|c|c|c|} \hline P & Q & \neg P & P \lor Q & P \land Q & P \Rightarrow Q & Q \Rightarrow P & P \Leftrightarrow Q \\ \hline T & T & F & T & T & T & T & T \\ \hline T & F & F & T & F & F & T & F \\ \hline F & T & T & T & F & T & F & F \\ \hline F & F & T & F & F & T & T & T \\ \hline \end{array} $$
    1.2 特に $\Leftrightarrow$ は基本記号として扱わず、
    $$ (A\Leftrightarrow B)\ \text{は}\ (A\Rightarrow B)\land(B\Rightarrow A)\ \text{の略記} $$
    として定義に接続して扱う。
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  2. 定義への接続で結論する$ $
    2.1 トートロジーのときは「全ての評価 $v$$v(\cdot)=T$」を確認して結論する。
    2.2 矛盾式のときは「全ての評価 $v$$v(\cdot)=F$」を確認して結論する。
    2.3 同値を示したいときは、任意の評価 $v$ に対して
    $$ v(f\Leftrightarrow g)=T\ \Longleftrightarrow\ v(f)=v(g) $$
    が成り立つ(すなわち $\forall v$ で成り立つ)ことを用いて「全ての評価 $v$$v(f)=v(g)$」を結論する。
    同値の定義より、このとき $f\equiv g$ が従う。
    $ $
  3. 命題 $P\Rightarrow Q$ を証明するパターン$ $
    3.1 $P$ を仮定し、そのとき必ず $Q$ が成り立つことを示す(直接法)。
    3.2 $\neg P$ を示し、含意 $P\Rightarrow Q$$Q$ の真偽に関わらず常に真となることを結論づける(空虚に真)。
    3.3 対偶 $\neg Q\Rightarrow \neg P$ を証明して結論する($P\Rightarrow Q$ と同値である)。
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  4. 命題 $P\Leftrightarrow Q$ を証明するパターン$ $
    4.1 同値変形($\equiv$)の連鎖により、$P$$Q$ の真偽が常に一致することを示して結論する。
    4.2 次の定義に従い、$P\Rightarrow Q$$Q\Rightarrow P$ の両方を証明する。
    $$ (P \Rightarrow Q) \land (Q \Rightarrow P) $$
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  5. 背理法(矛盾を導く事による証明)$ $
    5.1 ある結論 $C$ を示したいとき、$\neg C$ を仮定して矛盾を導き、よって $C$ が成り立つと結論する。
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  6. 「必要性・十分性」による証明の進め方$ $
    6.1 必要性:主張 $P\Leftrightarrow Q$ を示したいとき、まず $P\Rightarrow Q$ を示す(「$P$ を仮定して $Q$ を導く」)。
    6.2 十分性:次に $Q\Rightarrow P$ を示す(「$Q$ を仮定して $P$ を導く」)。
    6.3 両方向が示せたら、定義より $P\Leftrightarrow Q$ が結論できる。
    $ $
  7. 同値変形を用いる場面$ $
    7.1 (古典論理では)含意は次で置き換えられる。
    $$ A\Rightarrow B\ \equiv\ \neg A\lor B $$
    7.2 ド・モルガン則で連言と否定を変換する。
    $$ \neg(A\land B)\ \equiv\ \neg A\lor \neg B,\quad \neg(A\lor B)\ \equiv\ \neg A\land \neg B $$
    7.3 二重否定の除去
    $$ \neg\neg A\ \equiv\ A $$
    7.4 対偶
    $$ A\Rightarrow B\ \equiv\ \neg B\Rightarrow \neg A $$
    7.5 同値記号の分解と展開
    $$ A\Leftrightarrow B\ \equiv\ (A\Rightarrow B)\land(B\Rightarrow A) $$
    $$ A\Leftrightarrow B\ \equiv\ (A\land B)\lor(\neg A\land\neg B) $$
    7.6 可換則
    $$ A\lor B\ \equiv\ B\lor A,\qquad A\land B\ \equiv\ B\land A $$
    7.7 結合則
    $$ (A\lor B)\lor C\ \equiv\ A\lor(B\lor C),\qquad (A\land B)\land C\ \equiv\ A\land(B\land C) $$
    7.8 分配則
    $$ A\land(B\lor C)\ \equiv\ (A\land B)\lor(A\land C) $$
    $$ A\lor(B\land C)\ \equiv\ (A\lor B)\land(A\lor C) $$
    7.9 冪等則
    $$ A\lor A\ \equiv\ A,\qquad A\land A\ \equiv\ A $$
    7.10 吸収則
    $$ A\lor(A\land B)\ \equiv\ A,\qquad A\land(A\lor B)\ \equiv\ A $$
    7.11 恒真と恒偽との単位則と零則
    $$ A\land \top\ \equiv\ A,\qquad A\lor \bot\ \equiv\ A $$
    $$ A\lor \top\ \equiv\ \top,\qquad A\land \bot\ \equiv\ \bot $$
    7.12 排中律と矛盾律
    $$ A\lor\neg A\ \equiv\ T,\qquad A\land\neg A\ \equiv\ F $$
    7.13 含意の入れ子の同値
    $$ (A\land B)\Rightarrow C\ \equiv\ A\Rightarrow(B\Rightarrow C) $$
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  8. その他の基本$ $
    8.1 含意の基本:$P\Rightarrow P$ は常に真である。
    8.2 選言の扱い:$P$ から $P\lor Q$ を得る(選言導入)。
    8.3 連言の扱い:$(P\land Q)$ を仮定したら、$P$$Q$ をそれぞれ取り出して用いる(連言除去)。
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述語論理に関する証明のポイント

  1. 全称命題と存在命題の証明の基本$ $
    1.1 全称命題 $\forall x\in S,\ P(x)$ を示すときは、任意の $a\in S$ を任意に取り(以後固定して)$P(a)$ を導く。
      ※ 証明の最後は「$x\in U$ は任意であったから」などにより、全称的な結論($\forall x\in U$ の形)へ戻して締める。
      反例で否定するなら、ある $a\in S$$1$つ示して $\neg P(a)$ を導く。
    1.2 存在命題 $\exists x\in S\ \text{s.t.}\ P(x)$ を示すときは、具体的な $a\in S$(証人)を構成し、
      $P(a)$ が成り立つことを確認する。
      存在を否定するなら、任意の $x\in S$ に対して $\neg P(x)$ を示す(すなわち $\forall x\in S,\ \neg P(x)$ を示す)。
    1.3 特に $S=\varnothing$ では、$\forall x\in S,\ P(x)$ は空虚に真、$\exists x\in S\ \text{s.t.}\ P(x)$ は常に偽となる。
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  2. 全称量化子・存在量化子と否定の関係$ $
    2.1 量化の否定規則により、量化子と否定を交換する。
    $$ \neg\forall x\,A(x)\ \equiv\ \exists x\,\neg A(x),\quad \neg\exists x\,A(x)\ \equiv\ \forall x\,\neg A(x) $$
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  3. 集合 $S$ を定義域とした命題の取り扱い$ $
    3.1 $S$ が空集合となり得る文脈では、量化を含む命題の真偽が $S=\varnothing$ で変化しないかを必ず確認する。
      必要に応じて $S=\varnothing$$S\neq\varnothing$ の場合分けを行うか、仮定 $S\neq\varnothing$ を明示する。
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  4. 唯一性の証明$ $
    4.1 次の $2$ 段構成で証明する。
      STEP1 候補を構成して存在を示す:$\exists a\in S\ \text{s.t.}\ P(a)$
      STEP2 任意に $2$ 点を取り等号を導いて唯一性を示す:$\forall b\in S,\ \forall c\in S,\ \bigl((P(b)\land P(c))\Rightarrow b=c\bigr)$
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  5. 量化($\forall\varepsilon>0$)を含む主張の扱い$ $
    5.1 「任意の $\varepsilon>0$ に対して…」を示すときは、
      任意の $\varepsilon>0$$1$つ取って固定し、その $\varepsilon$ について不等式を示す。
    5.2 「任意の $\varepsilon>0$ に対して…」から結論を導くときは、
      仮定を全ての $\varepsilon>0$ に対して使えるものとして扱い、
      矛盾を作りたい場合は $\varepsilon$ を都合よく具体的に選ぶ。
      (例:$|a-b|>0$ のとき $\varepsilon:=|a-b|/2$$a-b>0$ のとき $\varepsilon:=a-b$ など。)
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集合に関する証明のポイント

  1. 全体集合(議論領域)を固定して量化を明確にする$ $
    1.1 議論の対象となる全体集合$U$をあらかじめ固定し、以後の集合は基本的にその部分集合として扱う(例:$A\subseteq U$)。
      ※「任意の$x$」「ある$x$」のような量化は、必ずどの集合の上で量化しているか(範囲)に注意して読む。
      特に、同じ条件式でも、全体集合$U$の取り方により定まる集合が変わることがある。
      (例:$x^2+1=0$ の解集合は $U=\mathbb R$$U=\mathbb C$ で異なる)。
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  2. 集合$S$で制限された量化の略記$ $
    2.1 $\forall x\in S\ P(x)$$\forall x\ (x\in S\Rightarrow P(x))$ の略記
    2.2 $\exists x\in S\ P(x)$$\exists x\ (x\in S\land P(x))$ の略記
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  3. 「集合の主張」を「論理式の主張」に帰着する$ $
    3.1 内包的表記 $\{x\in U\mid P(x)\}$ を、次の形に機械的に戻す。
    $$ x\in\{y\in U\mid P(y)\}\ \Leftrightarrow\ \bigl(x\in U\land P(x)\bigr) $$
    3.2 記号 $a\in A,\ a\notin A,\ A=\varnothing,\ A\subseteq U$ などは、必要に応じて定義へ戻して論理式で扱う。
    3.3 特に空集合の定義は次の同値な形を使い分ける。
    $$ \begin{align} A&=\varnothing\ :\Leftrightarrow\ \neg\bigl(\exists x\in U \ \text{s.t.}\ (x\in A)\bigr)\\ A&=\varnothing\ :\Leftrightarrow\ \forall x\in U (x\notin A) \end{align} $$
    3.4 特に、空集合の性質
    $$ \forall x\ (x\in\varnothing\ \text{は偽}) $$
    したがって、任意の $x$ について
    $$ x\in\varnothing\ \Leftrightarrow\ \bot $$
    が成り立つ($\bot$ は常に偽である命題定数)。
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    3.5 量化子の否定は次で処理する(必要に応じて使用)
    $$ \forall x \in U,\ \neg P(x)\ \Leftrightarrow\ \neg\bigl(\exists x\in U\ \text{s.t.}\ P(x)\bigr) $$
    3.6 集合の等式・包含・演算は、まず「任意の $x\in U$」を取り、$x$ が属する条件を論理式に直して証明。
    3.7 今後頻出する変換規則(集合演算 $\leftrightarrow$ 論理演算)
    $$ \begin{align} x\in A\cap B\ \Leftrightarrow\ (x\in A\land x\in B)\\ x\in A\cup B\ \Leftrightarrow\ (x\in A\lor x\in B)\\ x\in A\setminus B\ \Leftrightarrow\ (x\in A\land x\notin B)\\ \end{align} $$
    3.7 論理式に直した後は、命題論理の同値変形(結合法則・分配法則・ド・モルガン則など)で整理し、
      必要なら再び $x\in(\text{集合式})$ に戻す。
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  4. 部分集合の定義に戻して示す$ $
    4.1 $A\subseteq B$ の定義は
    $$ A\subseteq B\ :\Leftrightarrow\ \forall x\in U\ (x\in A\Rightarrow x\in B) $$
    である。よって、$A\subseteq B$を示す標準形は次である。
     STEP1:任意の$x\in U$を取る。
     STEP2:$x\in A$を仮定する。
     STEP3:定義や既知の同値変形を用いて$x\in B$を導く。
     STEP4:よって$A\subseteq B$
    $ $
  5. 集合の等号は「両方向の包含」で示す$ $
    5.1 集合の等号の定義は
    を示せばよい。
    $$ \begin{align} &A=B\ :\Leftrightarrow\ \forall x\in U\ (x\in A\Leftrightarrow x\in B)\\ &A=B\ :(x\in A\ \Rightarrow\ x\in B)\land(x\in B\ \Rightarrow\ x\in A)\\ &A=B\ \Leftrightarrow\ (A\subseteq B)\land(B\subseteq A)\\ \end{align} $$
    である(厳密には、後者は定義と部分集合の定義から導かれる定理)。よって、$A=B$を示す標準形は次である。
     STEP1:任意の$x\in U$を取る。
     STEP2:$x\in A$を仮定し、定義や既知の同値変形を用いて$x\in B$を導く。これにより$A\subseteq B$が従う。
     STEP3:任意の$x\in U$を取る。
     STEP4:$x\in B$を仮定し、同様にして$x\in A$を導く。これにより$B\subseteq A$が従う。
     STEP5:以上より$A\subseteq B$かつ$B\subseteq A$であるから$A=B$が成り立つ。
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投稿日:17日前
更新日:13時間前
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投稿者

集合論の勉強から再度始める事にしました。自分自身がいつ読み返しても理解できるようなノート作りをコンセプトにしています。証明や命題に誤りなどがありましたら、ご指摘いただけると幸いです (2025年12月28日)。

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