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阪大数学科院試過去問解答例(2023B1)

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ここでは阪大数学科の修士課程の院試の2023B1の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2023B1

位数$n$の有限群$G$及び群同型$\sigma:G\to G$を考え、部分集合$I,J\subseteq G$
$$ I:=\{g\in G|\sigma(g)=g\} $$
$$ J:=\{g\in G|\sigma(g)=g^{-1}\} $$
で定める。ここで$G$$|I|=1$かつ$|J|>\frac{n}{2}$を満たしているとする。このとき以下の問いに答えなさい。
(1) $\sigma^2=\mathrm{id}_G$を示せ。
(2) $G=\{g^{-1}\sigma(g)|g\in G\}$を示せ。
(3) $G$はアーベル群であることを示せ。

  1. $g\in J$をとる。このとき$$\sigma(g^{-1})=\sigma(g)^{-1}=g$$であるから、$\sigma$$J$を保存する。ここで定義から$\sigma^2|_J=\mathrm{id}_J$である。ここで$J$によって生成される$G$の部分群を$H$とすると、$\sigma^{2}|_H=\mathrm{id}_H$である。ここで$|J|>\frac{n}{2}$より$[G:H]<2$であるから$H=G$である。よって$\sigma^{2}=\mathrm{id}_G$である。
  2. 写像
    $$ \begin{split} F:G&\to G\\ g&\mapsto g^{-1}\sigma(g) \end{split} $$
    を考える。ここで$h,g\in G$について$F(g)=F(h)$であったとすると、これは$hg^{-1}=\sigma(hg^{-1})$を意味するが、$|I|=1$の条件から$h=g$が従う。よって$F$は単射であるが、$G$
    有限集合であるから$F$は全射になる。特に$G=\{g^{-1}\sigma(g)|g\in G\}$が従う。
  3. $h\in G$を任意にとったとき、(2)からある$g\in G$を用いて$h=g^{-1}\sigma(g)$と表せる。このとき
    $$ \sigma(h)=\sigma(g^{-1}\sigma(g))=\sigma(g)^{-1}g=(g^{-1}\sigma(g))^{-1}=h^{-1} $$
    であることから$J=G$が従う。よって任意の$a,b\in G$について
    $$ ab=\sigma^2(ab)=\sigma((ab)^{-1})=\sigma(b^{-1}a^{-1})=\sigma(b^{-1})\sigma(a^{-1})=ba $$
    であることがわかるから、$G$はアーベル群である。
投稿日:20231010

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投稿者

佐々木藍(Ai Sasaki)です。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。X(旧Twitter)→@sasaki_aiiro

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