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東大数理院試過去問解答例(2026B07)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2026B07の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2026B07

$S^2$上の点
$$ p_1=(1,0,0) $$
$$ q_1=(-1,0,0) $$
$$ p_2=(0,1,0) $$
$$ q_2=(0,-1,0) $$
をとり、$M:=S^2\backslash\{p_1,p_2,q_1,q_2\}$とおく。ここで$M$上の微分形式
$$ \omega_{a,b}:=\frac{zdy-ydz}{1-x^2}a+\frac{xdz-zdx}{1-y^2}b $$
を考える。

  1. $\omega_{a,b}$は閉形式であることを示しなさい。
  2. $M_p:=S^2\backslash\{p_1,p_2\}$上の閉$1$形式$\omega_p$及び$M_q:=S^2\backslash\{q_1,q_2\}$上の閉$1$形式$\omega_q$で、
    $$ \omega_{a,b}=\omega_p|_M+\omega_{q}|_M $$
    を満たすようなものが存在するには、$a=b$であることが必要充分であることを示しなさい。
  1. まず$S^2$上に於いて
    $$ \omega_{a,b}=\frac{zdy-ydz}{y^2+z^2}a+\frac{xdz-zdx}{x^2+z^2}b $$
    である。このとき右辺第一項は$\{(x,y,z)\in \mathbb{R}^3|(y,z)\neq(0,0)\}$の閉形式、右辺第二項は$\{(x,y,z)\in \mathbb{R}^3|(x,z)\neq(0,0)\}$の閉形式なので、所望の結果が従う。
  2. まず$a=b$のとき$\omega_{a,a}$が所望の条件を満たすことを示す。そのためには$a=2$に対して条件が満たされることを示せばよい。そしてこのとき$\omega_{2,2}$
    $$ \begin{split} \omega_{a,b}=&\left(\frac{zdy-ydz}{1-x}+\frac{xdz-zdx}{1-y}\right)+\left(\frac{zdy-ydz}{1+x}+\frac{xdz-zdx}{1+y}\right)\\ =&\left((1+x)\frac{zdy-ydz}{y^2+z^2}+(1+y)\frac{xdz-zdx}{x^2+z^2}\right)\\ &+\left((1-x)\frac{zdy-ydz}{y^2+z^2}+(1-y)\frac{xdz-zdx}{x^2+z^2}\right)\\ \end{split} $$
    と分解でき、所望の結果を得るためには(1)より右辺第一項が$S^2$上の閉形式であることを示せば良い。右辺第一項に外微分を作用させると
    $$ \begin{split} &\frac{zdx\wedge dy-ydx\wedge dz}{y^2+z^2}+\frac{xdy\wedge dz-zdy\wedge dx}{x^2+z^2}\\ &=\left(\frac{z}{x^2+z^2}+\frac{z}{y^2+z^2}\right)dx\wedge dy+\frac{x}{x^2+z^2}dy\wedge dz+\frac{y}{y^2+z^2}dz\wedge dx \end{split} $$
    が得られる。ここで$TS^2$$S^2$の各点に於いて
    $$ x\frac{\partial}{\partial y}-y\frac{\partial}{\partial x} $$
    $$ y\frac{\partial}{\partial z}-z\frac{\partial}{\partial y} $$
    $$ x\frac{\partial}{\partial z}-z\frac{\partial}{\partial x} $$
    で生成され、これらのどの二つを取っても上で定めた交代形式で$0$に移るから、これによって$a=b=2$のとき$\omega_{2,2}$が所望の条件を満たすことがわかった。
     次に$a\neq b$のとき条件を満たさないことを示す。$S^2$上の閉路$C$$\{(x,y,z)\in S^2|x+y=0\}$$(-1,-1,-1)$から見て半時計周りに向きを入れたものを考える。このとき$C$$S^2\backslash\{p_1,q_1\}$に於いては$\{(0,y,z)\in S^2\}$に、$S^2\backslash\{p_2,q_2\}$に於いては$\{(x,0,z)\}$にホモトープであるから向きに気をつけて積分すると
    $$ \int_{C}\frac{zdy-ydz}{y^2+z^2}=\int_{C}\frac{zdx-xdz}{x^2+z^2}=\pi $$
    であり、$a\neq b$の仮定から
    $$ \int_C\omega_{a,b}\neq0 $$
    が従う。一方$C$$M_p$及び$M_q$に於いて一点にホモトープであるから、条件を満たす$\omega_p$及び$\omega_q$が存在したとすると
    $$ \int_C\omega_p=\int_C\omega_q=0 $$
    が従う。以上から$a\neq b$の場合$\omega_{a,b}=\omega_p+\omega_q$なる$\omega_{p}$及び$\omega_q$は存在しないことが従う。
投稿日:96
更新日:98
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藍色日和
藍色日和
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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