ここでは東大数理の修士課程の院試の2019A10の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
偏微分方程式の院試の問題は初めてで、解く際には様々な本やPDFを漁って、見よう見まねでなんとか答案を作りました。なので数学的な誤りはもちろん不慣れな箇所・慣例から外れた書き方・議論の甘い箇所などが普段よりたくさんあるかもしれないので、そのような箇所があればどんなに些細なことでも指摘していただけると嬉しいです。
のある領域上で定義された級関数に関する微分方程式
を考える。但しである。
- 及びを変数とする級関数に対して、連立階偏微分方程式
を考える。そしてこのような連立階偏微分方程式に対して常微分方程式系
を特性方程式と呼ぶ。初めの偏微分方程式の解に対して、及びが上記の連立偏微分方程式を満たすようなを求め、これの特性微分方程式を求めなさい。 - 上で求めた特性微分方程式の保存量のうち、に関するつの斉次次式で、一次独立であるようなものをつ求めなさい。但し、微分方程式の保存量とは、関数で、微分方程式の解に対してがに依らないようなものを指す。
- 初めに与えられた偏微分方程式の解のうち、つの独立な積分定数を含むものをつ構成しなさい。
- 初めに与えられた偏微分方程式を辺々で微分したとき
が得られ、これを整理することで
が得られる。一方辺々で微分したとき
が得られ、これを整理することで
が得られる。これらは所望の形になっている。その特性方程式は定義に従って
であることがわかる。 - 上の微分方程式から例えば
が所望の条件を満たすことがわかる。 - こ等式
を整理すると
が得られる。このとき
とおいて
とおく。これを元々の偏微分方程式に代入すると、
が得られる。よっては問題の偏微分方程式の解になっていて、また解と定数の和も解になっている。以上から
は解になっていて、しかも所望の条件を満たす。