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大学数学基礎解説
文献あり

n次元閉円盤の境界を一点につぶして得られる空間とn次元球面が同相であることの証明

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今回はトポロジーで重要な例である、次の事実を証明します。

n次元閉円盤の境界を一点につぶして得られる空間とn次元球面は同相

$n$を自然数、$D^n$$n$次元閉円盤、$S^n$$n$次元球面とする。
このとき、$D^n/\partial D^n \approx S^n$である。

方針としては、適当な連続写像$\varphi:D^n \rightarrow S^n$であって、$D^n/\sim_{\varphi}=D^n/\partial D^n$かつ同相写像$\tilde{\varphi}:D^n/\partial D^n \rightarrow S^n$をひきおこすようなものを構成すればよい。以下、$n=2$の場合を考える。一般の$n$の場合も$n=2$の場合と同様である。
この証明において、最も難しいのは上で述べたような連続写像$\varphi$の構成である。$\varphi$の作り方は様々な方法が考えられるが、ここではそのうちの一つを詳しく説明する。
まず、$\varphi$$\partial D^2=S^1$を一点につぶすような連続写像になっていなければならない。
そこで、$S^2$の北極を$N=(0,0,1)$、南極を$S=(0,0,-1)$とおき、
$\varphi(\partial D^2)= \lbrace N \rbrace$となるようにする。つまり、$\partial D^2$$S^2$の北極点につぶす。
このことを踏まえて、$\varphi$を、「$D^2$の内部のうち、半径$1/2$以下の部分を$S^2$の南半球に写し、半径$1/2$以上の部分を$S^2$の北半球に写す」というように定義しよう。特に、$\varphi(0,0)=S$となるようにする。このような$\varphi$は、次のように定義できる。

$\varphi(x,y)= \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} (2x,2y,-\sqrt{1-4(x^2+y^2)}) & (0\le x^2+y^2\le1/4)\\ (\alpha(x,y)x,\alpha(x,y)y,\sqrt{1-\alpha(x,y)^2(x^2+y^2)}) & (1/4\le x^2+y^2\le 1) \end{array} \right. \end{eqnarray}$
ただし、$\alpha(x,y)=4-4\sqrt{x^2+y^2}$とする。これは、$x^2+y^2=1/4$のときwell-definedである。

この$\varphi$の定義は一見複雑で、最初は思い付くのは難しそうに見える。しかし、実際には突然天から降ってきた定義などではなく、上の「」内に書いたような写像を作るために試行錯誤して得られたものである。この試行錯誤こそが、腕の見せ所である。そこで、次にどのようにして$\varphi$を作ったのかを説明する。

$(x,y)\in D^2$を固定する。$r=\sqrt{x^2+y^2}$とおく。重要なのは、$D^2$の点は原点からの方向及び半径の大きさで決まり、$S^2$の点は$z$軸を中心とする方位角及び$xy$平面からの高さ$z$で決まるという所である。
連続写像!FORMULA[42][1017910466][0]の作り方 連続写像$\varphi$の作り方
そこで、まず$\varphi(x,y)=(X,Y,z)$の方向(方位角)は、点$(x,y)$から変えないことにする。つまり、$\varphi$は原点まわりの回転について対称に定める。これより、ある実数$\alpha$を用いて、$(X,Y)=(\alpha x,\alpha y)$となる。ただし、$\alpha$$(x,y)$に依存する量であるから、$\alpha =\alpha(x,y)$である。

あとは、高さ$z$を決めればよいが、$z=\pm \sqrt{1-\alpha^2(x^2+y^2)}$より、$\alpha$を決めれば$z$も決まってしまう。そこで、以下$\alpha$を決定する。

  • $0\le r=\sqrt{x^2+y^2} \le 1/2$のとき:$r=0$なら、$(x,y)=(0,0)$より$\alpha$がどんな値でも$(X,Y)=(0,0)$なので、$\alpha(0,0)=2$とする。$r=1/2$のとき、$D^2$内の半径$1/2$の円は$S^2$の赤道に移るようにしたいので、このとき$\alpha(x,y)=2$とする。以上より、$0\le r \le 1/2$の場合には、$\alpha(x,y) \equiv 2$と定める。
  • $1/2\le r=\sqrt{x^2+y^2} \le 1$のとき:$r=1/2$のときは上と同じ。$r=1$なら、$\partial D^2$$S^2$の北極に移るようにしたいので、このとき$\alpha(x,y)=0$とする。したがって、この場合には$r\alpha$平面の線分を考えて、$\alpha=-4r+4=4-4\sqrt{x^2+y^2}$と定める。


特に$\alpha$は、原点からの方向を固定して、点$(x,y)$の長さ$r$に依存して決まるものとして定めていることに注意する。
以上より、上の$\varphi$の定義を得る。$\varphi$は、それぞれが連続写像の合成からなることと、貼り合わせの補題より連続である。また、写像の作り方より、$\varphi$は全射である。さらに、$x\sim_{\varphi}y (\Longleftrightarrow \varphi(x)=\varphi(y))$を写像$\varphi$が定める同値関係とすれば、写像の作り方より$\varphi$$\partial D^2$を一点に写すので、$D^2/\sim_{\varphi}=D^2/\partial D^2$であることが確かめられる。よって、$\varphi$は連続全単射$\tilde{\varphi}:D^2/\partial D^2 \rightarrow S^2$をひきおこす。
ここで、$S^2$はハウスドルフ空間であり、$D^2/\partial D^2$はコンパクト空間$D^2$の自然な連続全射による像なのでコンパクトである。コンパクト空間からハウスドルフ空間への連続写像は閉写像であるから、$\tilde{\varphi}$は同相写像である。

よって、$D^2/\partial D^2 \approx S^2$である。(証明終)

Note

定理1の別の証明としては、例えば次のようなものが考えられる。
$\mathbb{R}^n$の一点コンパクト化空間と、$S^n$が同相であることはよく知られている(←立体射影を使う)。そこで、代わりに$D^n/\partial D^n \approx \mathbb{R}^n \cup \lbrace \infty \rbrace$をいえばよい。連続写像$\varphi:D^n \rightarrow \mathbb{R}^n \cup \lbrace \infty \rbrace $を次のように定義する。
$\varphi(x)= \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \frac{x}{1- \left\| x \right\|} & (\left\| x \right\| < 1)\\ \infty & (\left\| x \right\|=1) \end{array} \right. \end{eqnarray}$
これは、開円盤$D^n\setminus \partial D^n$$\mathbb{R}^n$に写し、$\partial D^n$を一点$\infty$に写すという写像である。あとは、定理1の証明と同様であるが、$\varphi$の連続性はこの場合自明ではないので注意する必要がある。特に、$\partial D^n$上での連続性が自明でないが、これは、$\mathbb{R}^n$の一点コンパクト化位相に基づいて簡単に確かめられる(check!)。


今回は、これで終わります。お疲れ様でした。

参考文献

投稿日:20231027
更新日:20231110

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