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大学数学基礎解説
文献あり

Fermatの二平方和定理の初等的な証明

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pを奇素数とするとき,次の2条件は同値である.
(1) ある整数x,yが存在してp=x2+y2
(2) p1(mod4).

(1)(2)の証明は簡単なので省略する.(2)(1)を証明するために,次の補題を用意する.以下の証明はEulerによるものであるCox

正整数Nが2つの互いに素な平方数の和であるとする.Nの素因数pp=x2+y2,gcd(x,y)=1の形に表せるならば,N/pも2つの互いに素な平方数の和として表せる.

N=a2+b2,gcd(a,b)=1とおく.このとき,素数pは整数
x2Na2p=x2(a2+b2)a2(x2+y2)=x2b2a2y2=(xbay)(xb+ay)
を割り切る.よって,必要ならばaの符号を置き換えることにより,pxbayであると仮定してよい.xbay=dpとおく.このとき, xa+dyを割り切る.実際,これはx(a+dy)yと同値であり,
(a+dy)y=ay+dy2=xbdp+dy2=xbdx2
は明らかにxで割り切れる.よって,a+dy=cxとおけば,上の等式により
a=cxdy()b=cy+dx
であることがわかる.ゆえに
N/p=(a2+b2)/(x2+y2)=[(cxdy)2+(cy+dx)2]/(x2+y2)=(c2+d2)(x2+y2)/(x2+y2)=c2+d2
だから,N/pは2つの平方数の和として表せる.そして () により,cdは互いに素である.

定理の証明

2段にわけて証明する.
(第1段) 合同方程式x2+y20(modp)に整数解が存在するならばpは2つの平方数の和として表せることを示す.N=x2+y2,pNとする.x,yにそれぞれpの整数倍を加えてもpNであるから, |x|<p/2,|y|<p/2であるとしてよい.さらに,gcd(x,y)=d>1のときは,x,yをそれぞれdで割ってもpNなので,gcd(x,y)=1であるとしてよい.(x,yはどちらもpより小さいのでdpの倍数ではない.) このときN<p2/2であるので,Nの正の約数は全てp以下である.もしpが2つの互いに素な平方数の和として表せないならば,補題によりNp以外の素因数で,2つの互いに素な平方数の和として表せないものが存在する.それをp1とすれば明らかにx2+y20(modp1)である.そして,同様にしてp2,p3を作っていくことができ,素数の真減少列p1>p2>ができる.しかし,素数全ての集合は下に有界なのでこれは矛盾である.ゆえに,合同方程式x2+y20(modp)が整数解をもつならば,pは2つの平方数の和として表すことができる.
(第2段) 合同方程式x2+y20(modp)が整数解をもつことを示す.p1(mod4)だから,p=4n+1とおけば,Fermatの小定理により
(X2n1)(X2n+1)=X4n10(modp)
が任意のpの倍数でない整数Xに対して成り立つ.よって,X2n10ならばX2n+10となって証明が完了するが,平方剰余の第一補充則によってp1(mod4)であるときそのような整数Xが存在する.

参考文献

[1]
David A. Cox, Primes of the form x2+ny2, Wiley, 2013, 10-12
投稿日:525
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