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京大数学系院試2003年度専門(代数)解答

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$$\newcommand{CC}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{FF}[0]{\mathbb{F}} \newcommand{Gal}[0]{\mathrm{Gal}} \newcommand{IIm}[0]{\operatorname{Im}} \newcommand{Ker}[0]{\operatorname{Ker}} \newcommand{NN}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{PP}[0]{\mathbb{P}} \newcommand{QQ}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{RR}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{RRe}[0]{\operatorname{Re}} \newcommand{tr}[0]{\operatorname{tr}} \newcommand{ZZ}[0]{\mathbb{Z}} $$

京大数学系の院試(2003年度専門問1,2)の解答です.
自分が作った解答は ここ に置いてあります.

(京大数学系2003年専門問1)
  1. $\ZZ[\sqrt{5}]$は整閉でないことを示せ.
  2. $p, q$を平方因子を含まない$1$と異なる奇数で,$p \not= q$とする.このとき,$R = \ZZ[\sqrt{p}, \sqrt{q}]$は整閉でないことを示せ.

$R$の商体を$Q(R)$と書く.

  1. $(1 + \sqrt{5}) / 2 \in Q(\ZZ[\sqrt{5}])$は monic な多項式$X^2 - X - 1 \in \ZZ[\sqrt{5}][X]$の根なので$\ZZ[\sqrt{5}]$上整であるが,$\ZZ[\sqrt{5}]$の元ではない.よって$\ZZ[\sqrt{5}]$は整閉ではない.
  2. $\alpha_\pm = 1 \pm \sqrt{p}, \beta_\pm = 1 \pm \sqrt{q}$として
    $$ x_1 = \frac{\alpha_+ \beta_+}{2}, \quad x_2 = \frac{\alpha_+ \beta_-}{2}, \quad x_3 = \frac{\alpha_- \beta_+}{2}, \quad x_4 = \frac{\alpha_- \beta_-}{2} $$
    とおく.$\alpha_+ + \alpha_- = \beta_+ + \beta_- = 2$より$x_1 + x_2 = \alpha_+, x_3 + x_4 = \alpha_-$であるから
    \begin{align*} \sum_{j = 1}^4 x_j &= \frac{(\alpha_+ + \alpha_-)(\beta_+ + \beta_-)}{2} = 2, \\ \prod_{j = 1}^4 x_j &= \frac{(\alpha_+ \alpha_- \beta_+ \beta_-)^2}{2^4} = \bigg( \frac{(1 - p)(1 - q)}{2^2} \bigg)^2, \\ \sum_{1 \leq j < k \leq 4} x_j x_k &= x_1 x_2 + (x_1 + x_2)(x_3 + x_4) + x_3 x_4 = \frac{\alpha_+^2 (1 - q)}{4} + \alpha_+ \alpha_- + \frac{\alpha_-^2 (1 - q)}{4} \\ &= \frac{(1 + p)(1 - q)}{2} + (1 - p) = \frac{3 - p - q - pq}{2}, \\ \sum_{1 \leq i < j < k \leq 4} x_i x_j x_k &= x_1 x_2 (x_3 + x_4) + (x_1 + x_2)x_3 x_4 = \frac{\alpha_+^2 (1 - q)}{4} \alpha_- + \alpha_+ \frac{\alpha_-^2 (1 - q)}{4} \\ &= \frac{\alpha_+ \alpha_- (1 - q)}{4} (\alpha_+ + \alpha_-) = \frac{(1 - p)(1 - q)}{2} \end{align*}
    は全て整数である.よって$x_1 \in Q(R)$は monic な$R$係数多項式の根なので$R$上整であるが,$R$の元ではない.従って$R$は整閉ではない.
(京大数学系2003年専門問2)
  1. 乗法の単位元$1$を持つ可換環$R$は整域$A$の部分環とする.商体の間の拡大$Q(A) \supset Q(R)$が代数的ならば,$A$$\{ 0\}$でないイデアル$I$について$I \cap R \not= \{ 0\}$であることを示せ.

  2. ($1$)において$Q(A) / Q(R)$が代数拡大という条件を外すと主張が必ずしも成り立たないことを,例を挙げて示せ.

  3. 可換環$A$は部分環$R$上の整拡大とする.$P$$R$の素イデアルとし,$A$の相異なる素イデアル$Q_1, Q_2$$R \cap Q_1 = R \cap Q_2 = P$を満たすとする.$Q_1$$Q_2$には含む含まれるの関係はないことを示せ.

  1. $a \in I \setminus \{ 0\}$を任意に取る.$a$$Q(R)$上最小多項式を$f(X) = X^n + c_{n - 1}X^{n - 1} + \cdots + c_1 X + c_0$とする.$A$が整域であることと次数の最小性から$c_0 \not= 0$である.$sf(X) \in R[X]$となる$s \in R \setminus \{ 0\}$が取れる.この時$sc_0 = -s(a^n + c_{n - 1}a^{n - 1} + \cdots + c_1 a) \in I$だから$sc_0 \in I \cap R.$また$A$は整域だから$sc_0 \not= 0$である.

  2. $R = \QQ, A = \QQ[x]$とする.ただし$x$は不定元である.この時$Q(R) = \QQ, Q(A) = \QQ(x)$であり$Q(A) / Q(R)$は超越拡大.また$A$のイデアル$I = (x)$$I \cap R = \{ 0\}$を満たす.

  3. $Q_1 \subset Q_2$であったとする.仮定から$A / Q_1$$R / P$の整拡大であり,これらは整域である.また$Q_2 / Q_1$$A / Q_1$の素イデアルである.さらに$R \cap Q_1 = R \cap Q_2 = P$より$(R / P) \cap (Q_2 / Q_1) = \{ 0\}$であるから,(1) より$Q_2 / Q_1 = \{ 0\}.$よって$Q_1 = Q_2$となって矛盾.

投稿日:23
更新日:23
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delta
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