1

peak多項式と変形Foata-Strehl作用

95
0

n次対称群の元σ[n]:={1,2,,n}の順列σ(1)σ(2)σ(n)と同一視する. 降下集合をDes(σ):={1in;ai>ai+1}として, des(σ):=|Des(σ)|を降下数といい, 降下集合の元を降下という. Eulerian多項式 1nに対して,
An(t):=σSntdes(σ)+1
と定義する.

peak, 二重降下, 二重上昇

[n]の順列σ=a1anに対して, ai1<ai>ai+1となる1<i<nをpeakといい, σのpeakの個数をpeak(σ)と表し, peak数という. ai1>ai>ai+1となる1inを二重降下, ai1<ai<ai+1となる1inを二重上昇とする. この定義において, a0=an+1=と見なす.

peak多項式

1nに対し,
Pn(t):=σSntpeak(σ)+1
をpeak多項式という.

次の定理がこの記事の目標である.

1nに対し,
An(t)=(1+t2)n+1Pn(4t(1+t)2)
が成り立つ.

以下, 証明の準備を行う.

変形Foata-Strehl作用

[n]の順列σ=a1anに対し, x=aiとする(a0=an+1=とみなす). 変形Foata-Strehl作用ϕx:SnSnは以下のように定義される.

  1. iが二重降下ならば, xを取り除いたあと, aj<ai<aj+1,i<jとなる最小のjに対して, ajaj+1の間にxを挿入する.
  2. iが二重上昇ならば, xを取り除いたあと, aj1>ai>aj,j<iとなる最大のjに対して, aj1ajの間にxを挿入する.
  3. どちらでもない場合には何もしない.

定義からx,y[n]に対して, ϕx,ϕyは可換であることから, [n]の部分集合S={x1,,xn}に対して,
ϕS:=ϕx1ϕx2ϕxn
と定義する. 順列σに対して, その変形Foata-Strehl作用による軌道を
Orb(σ):={ϕS(σ);S[n]}
によって定義する.

[n]の順列σに対して,
πOrb(σ)tdes(π)=tpeak(σ)(1+t)n12peak(σ)
が成りたつ.

定義より, peak(σ)の値は変形Foata-Strehl作用により不変である. 二重降下であるようなxを選んで変形Foata-Strehl作用を繰り返すことによって, Orb(σ)の中で二重降下が1つもないようなただ一つの順列に帰着する. それをπ^とする. π^は二重降下を1つも持たないので, π^の降下は全てpeakである. つまり, des(π^)=peak(π^)=peak(σ)が成り立つ. またπ^の中で, 変形Foata-Strehl作用で動くのは先頭と降下とその直後を除いたm:=n12des(π^)=n12peak(σ)個であり, 動く数全体を[m][n]とすると, S[m]に対して, des(ϕS(π^))=des(π^)+|S|=peak(σ)+|S|となる. よって,
πOrb(σ)tdes(π)=S[m]tpeak(σ)+|S|=tpeak(σ)(1+t)n12peak(σ)
となって示される.

定理1の証明

定理2の証明より, σの軌道の要素の数は2n12peak(σ)であるから
2n+1σSntdes(σ)+1=2n+1σSn2(n12peak(σ))πOrb(σ)tdes(π)+1
と表される. 右辺に定理2を適用して, 定理1を得る.

投稿日:212
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

Wataru
Wataru
656
45547
超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中