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ここでは東大数理の修士課程の院試の2024B04の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2024B04
関数体$F=\mathbb{Q}(S)$を考え、その上での多項式$X^{12}-S^4$の最小分解体を$K$、$K$上の多項式$X^{12}-S^3$の最小分解体を$L$とする。
- 拡大次数$[K:F]$を求めなさい。
- 拡大次数$[L:K]$を求めなさい。
- $L/F$の部分$2$次拡大$M/F$のうち、$K/F$の部分拡大でないようなものの個数を求めなさい。
- まず
$$
\begin{split}
X^{12}-S^4&=(X^6+S^2)(X^3+S)(X^3-S)\\
&=(X-\sqrt[3]{S})(X-\zeta_6^2\sqrt[3]{S})(X-\zeta_6^4\sqrt[3]{S})(X+\sqrt[3]{S})(X+\zeta_6\sqrt[3]{S})(X+\zeta_6^5\sqrt[3]{S})(X-i\sqrt[3]{S})(X-i\zeta_6^2\sqrt[3]{S})(X-i\zeta_6^4\sqrt[3]{S})(X+i\sqrt[3]{S})(X+i\zeta_6\sqrt[3]{S})(X+i\zeta_6^5\sqrt[3]{S})
\end{split}
$$
であるから$K=F(e^{i\frac{\pi}{6}},\sqrt[3]{S})$である。以上から$[K:F]=\color{red}12$である。 - まず$L=K(\sqrt[4]{S})$であるから$[L:K]=\color{red}4$である。
- まず$L=F(e^{i\frac{\pi}{6}},\sqrt[12]{S})$は$X^{12}-S^{12}$の最小分解体であるからGalois拡大である。ここで
$$
\sigma=\left(\begin{split}
\sqrt[12]{S}&\mapsto e^{i\frac{\pi}{6}}\sqrt[12]{S}\\
e^{i\frac{\pi}{6}}&\mapsto e^{i\frac{\pi}{6}}
\end{split}\right)
$$
で生成される部分群を$H\simeq \mathbb{Z}/12\mathbb{Z}$とし、
$$
\tau_5=\left(\begin{split}
\sqrt[12]{S}&\mapsto \sqrt[12]{S}\\
e^{i\frac{\pi}{6}}&\mapsto e^{i\frac{5\pi}{6}}
\end{split}\right)
$$
$$
\tau_7=\left(\begin{split}
\sqrt[12]{S}&\mapsto \sqrt[12]{S}\\
e^{i\frac{\pi}{6}}&\mapsto e^{i\frac{7\pi}{6}}
\end{split}\right)
$$
で生成される部分群を$I\simeq(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2$とおく。このとき$G\simeq H\rtimes I$である。ここで$L/F$の部分$2$次拡大はこの指数$2$の部分群に対応している。まず指数$2$であることからこのような部分群は$H'=\langle\sigma^2\rangle$を含み、これは$G$の正規部分群であるから$G/H'\simeq(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^3$の指数$2$の部分群に対応している。以上から$L/K$の部分$2$次拡大の個数は$\frac{{}_7C_2}{3}=7$個である。一方$K/F\simeq\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}\rtimes(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2$であり、$K/F$の部分$2$次拡大は$(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2$の指数$2$の部分群に対応しているから、その個数は$3$個である。以上から所望の部分拡大の個数は$7-3=\color{red}4$個である。