有名な関数方程式であるコーシーの関数方程式ですが,興味深い変種を見つけたので記事にしようと思いました.
-加法的な関数
をノルム空間とする.写像は,あるが存在して任意のに対してを満たすとき-加法的であるという.
コーシーの関数方程式を差を抑える不等式の形にした条件ですがこれに関して次の定理が成り立ちます.
をBanach空間とする.が-加法的ならある線形作用素が存在して任意のに対しを満たす.このは一意に定まる.
-加法的だから任意のに対して.帰納法で任意のに対し
が成立することを示す.のときは示した.これから
.
一方,帰納法の仮定から
このつを用いて
よって帰納法で示される.
に対しとおく.として
なので示した不等式から
.よってはコーシー列である.は完備だからとおける.-加法的であることから任意のに対して
.
両辺をで割って.
示した不等式でをでおきかえて
.よって
.
一意性を示す.線形変換が任意のに対しを満たすとする.あるが存在してとする.を満たす正整数に対し.これはかつであることに矛盾する.
さらに連続性について次のことがいえます.
前定理の仮定の下がの点で連続ならはの任意の点で連続である.
が連続でないとする.線形作用素に対しては原点で連続であれば任意の点で連続だから,ある正整数とに収束するの点列が存在して任意の正整数に対して.をを満たす正整数とする.
一方,のでの連続性から十分大きなに対して
.
これは矛盾.
位相群などでも同じような問題が考えられると論文にコメントがありました.他にもいろいろ考えられそうです.
参考文献
On the Stability of the Linear Functional Equation
D. H. Hyers
April 15, 1941