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サルでも分かる!円に内接する正三角形の頂点座標の求め方!

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$$\newcommand{conv}[0]{\text{conv}} \newcommand{Rbb}[0]{\mathbb{R}} $$

\footnote{サルでも分かるとは,機械的に計算できるという意味である.}

困った,単位円に内接した正三角形の頂点座標が求められない…….

座標計算,したくないもの.

 空間内($\mathbb{R}^3$とか)に図形を埋め込んでごりごり座標計算するみたいなことを,人間なら誰しも1度はやっているはず.そういう場合って基本的に「原点中心」だったり「1点を適当な座標軸上にとる」みたいな感じで,比較的計算しやすいような形でスタートするわけだから,とりあえず次のような状況を考えてみる.

  • 単位球面に内接する正四面体の頂点座標を計算したい!

 これ自体はどうとでもできるけれど,例えば一点を$(0,0,1)\in \mathbb{R}^3$でとるとして,残りの3点はどう置いたら計算し易そうだろうか.例えばもう一点を$yz$平面上に来るように置いてあげれば$x$座標は$0$になるのだから,これまた計算しやすそうではある.そうすると残りの2点も自動的に決まりそうだから,まぁこれで計算すれば良さそう.しかし,どうやって?

ちょっと計算.

 恣意的に次のような手順を踏んで計算してみる:単位球面に内接する正四面体の4点を$a,b,c,d$とおいて,$a=(0,0,1)$とする.このとき$b,c,d$$z$座標を$-1/3$として,$b$$y$座標を$\sqrt{1-(-1/3)^2}=2\sqrt{2}/3$とする.次に$c,d$$y$座標を$-\sqrt{2}/3$として,$c$$x$座標を$\sqrt{1-(-\sqrt{2}/3)^2+(-1/3)^2}=\sqrt{6}/3$とおく.最後に$d$$x$座標を$-\sqrt{6}/3$とおく.つまり,単位球面に内接する正四面体の頂点座標は例えば次で与えられる.
\begin{align*} a&=\left(0,0,1\right)\,\\ b&=\left(0,\frac{2\sqrt{2}}{3},-\frac{1}{3}\right),\\ c=&\left(\frac{\sqrt{6}}{3},-\frac{\sqrt{2}}{3},-\frac{1}{3}\right),\\ d&=\left(-\frac{\sqrt{6}}{3},-\frac{\sqrt{2}}{3},-\frac{1}{3}\right) \end{align*}

 ほんまか? となるわけですが,それぞれの点は距離を具体的に計算すれば確かに全て長さが等しいうえに,各点すべて球面上に存在することが分かります.やってみてね.

 この手順をまとめてみると,

  1. 1点を固定して,残りの3点が同一平面上(今回だと$z=-1/3$)に来るように動かす.
  2. 他の1点を取って適当な平面上(今回だと$yz$平面)に固定して,残りの2点が同一平面上(今回だと$y=-\sqrt{2}/3$)に来るように動かす.
  3. $x$座標が正になるものと負になるものをそれぞれ取る.

という感じだった.ということは一般化できそうですね?

漸化式があれば機械的に計算できますよね.

準備

基本的な線形代数は既知とする.

affinely dependent

$n$次元ユークリッド空間$\Rbb^n$$n+1$個の点$v_0,v_1,\ldots,v_n$がaffinely dependentであるとは,$v_1-v_0,\ldots,v_n-v_0$$\mathbb{R}$上線形独立になるときをいう.

convex,convex hull

$C\subset \Rbb^n$がconvexであるとは,任意の$x,y\in C$に対してその線分$xy=\{tx+(1-t)y\mid 0\leq t\leq 1\}$$C$に含まれるときをいう.また$C$のconvex hullとは$C$に含まれるconvex全体の共通部分のことをいい,これを$\conv(C)$と表記する.特に有限集合$C=\{c_1,\ldots,c_n\}$に対しては$\conv(C)=\conv(c_1,\ldots,c_n)$と表記する.

 affinely dependentな点$x_0,x_1,\ldots,x_n$からなるconvex $\conv(x_0,x_1,\ldots,x_n)$は次のように表示できることが知られている:
\begin{align*} \conv(a_0,\ldots,a_n)&=\left\{\sum_{j=0}^k\lambda_ja_j \mathrel{} \middle| \mathrel{} \sum_{j=0}^k\lambda_j=1, \lambda_j\geqq 0 \right\} \end{align*}

$n$次元ユークリッド空間$\mathbb{R}^n$上に"四面体"や"正四面体"に対応するものを次のように定義しておく.

$n$- simplex

$n$次元ユークリッド空間$\mathbb{R}^n$の部分集合$\sigma^n$$n$- simplexであるとは,一般の位置にある有限個の点の集合$A$からなるconvex hullのことをいう.

regular $n$- simplex

$n$次元ユークリッド空間$\mathbb{R}^n$の部分集合$\Delta^n$がregular $n$- simplexであるとは,すべての辺の長さが等しい $n$- simplexのことをいう.

次の定理が,「単位球面に内接する正四面体の頂点座標の計算」を一般化したものになる.

主定理パート

 次の漸化式を考える.
\begin{equation*} \left\{ \begin{aligned} a_1&=1,\\ b_1&=-\frac{1}{n},\\ a_k&=\sqrt{1-\sum_{l=1}^{k-1}b_l^2} & (k=2,\ldots,n),\\ b_k&=-\frac{a_k}{n-k+1} & (k=2,\ldots,n) \end{aligned} \right. \end{equation*}

また次の$n\times n+1$行列を便宜的に考え,この第$i$列を$\mathbb{R}^n$の元とみなしたものを$x_i$とおく.

\begin{align*} A=\left(\begin{array}{ccccccc} 0&0 &\cdots &0& 0&0 &a_1\\ 0&& \cdots &0&0 &a_2 &b_1\\ \vdots & \vdots & &0 &a_3 & b_2 &b_1\\ \vdots& & & \iddots&&&\vdots\\ & & \iddots& &&&\\ 0& a_{n-1} & \cdots &b_4&b_3&b_2&b_1\\ a_n& b_{n-1} & \cdots &b_4&b_3&b_2&b_1\\ b_n& b_{n-1} & \cdots &b_4&b_3&b_2&b_1\\ \end{array}\right) \end{align*}

 このとき$x_1,\ldots,x_n,x_{n+1}\in \mathbb{R}^n$について次が成り立つ.

  1. $x_1,\ldots,x_n,x_{n+1}$は単位球面$S^{n-1}$上に存在する.
  2. $x_1,\ldots,x_n,x_{n+1}$はaffinely dependent.
  3. $n$- simplex $\conv(x_1,\ldots,x_n,x_{n+1})$はregularになる.

 もちろんregular $n$- simplex自体は,座標を定めて考えるのであれば無数にあるのだから,上の定理は一つのある種"標準的な"座標の取り方を与えているというだけ.

各点$x_i\ (i=1,\ldots,n,n+1)$が球面上にあるのは明らか.affinely dependentであることは行列
\begin{align*} A^\ast=\left(\begin{array}{ccccccc} 0&0& \cdots &0&0 &a_2 &b_1-a_1\\ 0 & \ddots & &0 &a_3 & b_2 &b_1-a_1\\ \vdots& & & \iddots&&&\vdots\\ & & \iddots& &&&\\ 0& a_{n-1} & \cdots &b_4&b_3&b_2&b_1-a_1\\ a_n& b_{n-1} & \cdots &b_4&b_3&b_2&b_1-a_1\\ b_n& b_{n-1} & \cdots &b_4&b_3&b_2&b_1-a_1\\ \end{array}\right) \end{align*}
が正則であることを示せばよい.これは
\begin{align*} \det A^\ast&= \det\left|\begin{array}{ccccccc} 0&0& \cdots &0&0 &a_2 &b_1-a_1\\ 0 & \vdots & &0 &a_3 & b_2-a_2 &0\\ \vdots& & & \iddots&&&\vdots\\ & & \iddots& &&&\\ 0& a_{n-1} & \cdots &b_4&b_3&b_2-a_2&0\\ a_n& b_{n-1} & \cdots &b_4&b_3&b_2-a_2&0\\ b_n& b_{n-1} & \cdots &b_4&b_3&b_2-a_2&0\\ \end{array}\right|\\ &=(-1)^{n+1}(b_1-a_1)\det\left|\begin{array}{cccccc} 0 & \cdots & &0 &a_3 & b_2-a_2 \\ \vdots& & & &b_3&b_2-a_2\\ & & \iddots& &&&\\ 0& a_{n-1} & \cdots &b_4&b_3&b_2-a_2\\ a_n& b_{n-1} & \cdots &b_4&b_3&b_2-a_2\\ b_n& b_{n-1} & \cdots &b_4&b_3&b_2-a_2\\ \end{array}\right|\\ &=(-1)^{n+1}(b_1-a_1)\det\left|\begin{array}{cccccc} 0 & \cdots & &0 &a_3 & b_2-a_2 \\ \vdots& & & &b_3-a_3&0\\ & & \iddots& &&\vdots\\ 0& a_{n-1} & \cdots &b_4&b_3-a_3&0\\ a_n& b_{n-1} & \cdots &b_4&b_3-a_3&0\\ b_n& b_{n-1} & \cdots &b_4&b_3-a_3&0\\ \end{array}\right|\\ &=(-1)^{l}\prod_{k=1}^{n-3}(b_k-a_k)\det\left|\begin{array}{ccc} 0& a_{n-1} & b_{n-2}-a_{n-2}\\ a_n& b_{n-1}-a_{n-1} &0\\ b_n& b_{n-1}-a_{n-1} &0\\ \end{array}\right|\\ &=(-1)^{l}\prod_{k=1}^{n}(b_k-a_k) \end{align*}
となることから従う.ここで$l$は適当な自然数.

$n$- simplex $\conv(x_1,\ldots,x_n,x_{n+1})$がregularになることを示す.相異なる二点$x_i,x_j\ (i< j)$の距離は$i=1$なら
\begin{align*} \|x_j-x_1\|&=\sqrt{a_j^2+\sum_{k=2}^{j-1}b_k^2+(b_1-a_1)^2}\\ &=\sqrt{a_j^2+\sum_{k=1}^{j-1}b_k^2+1-2b_1}\\ &=\sqrt{1+1+\frac{2}{n}}\\ &=\sqrt{\frac{2(1+n)}{n}} \end{align*}
となる.また
\begin{align*} \|x_j-x_i\|&=\sqrt{a_j^2+\sum_{k=i+1}^{j-1}b_k^2+(b_i-a_i)^2+\sum_{k=1}^{i-1}(b_i-b_i)^2}\\ &=\sqrt{a_j^2+\sum_{k=i}^{j-1}b_k^2-2a_ib_i+a_i^2}\\ &=\sqrt{1-\sum_{k=1}^{i-1}b_k^2-2a_ib_i+a_i^2}\\ &=\sqrt{a_i^2-2a_ib_i+a_i^2}\\ &=\sqrt{2\frac{n-i+2}{n-i+1}a_i^2} \end{align*}
となるから,数列
\begin{align*} c_1=\frac{1+n}{n},c_i=\frac{n-i+2}{n-i+1}a_i^2\ (i=2,\ldots,n) \end{align*}
が定数列になることを示せばよい.$i>2$において
\begin{align*} c_i-c_{i-1}&=\frac{n-i+2}{n-i+1}a_i^2-\frac{n-i+3}{n-i+2}a_{i-1}^2\\ &=\frac{n-i+2}{n-i+1}\left(1-\sum_{k=1}^{i-1}b_k^2\right)-\frac{n-i+3}{n-i+2}\left(1-\sum_{k=1}^{i-2}b_k^2\right)\\ &=\left(\frac{n-i+2}{n-i+1}-\frac{n-i+3}{n-i+2}\right)-\frac{n-i+2}{n-i+1}b_{i-1}^2-\left(\frac{n-i+2}{n-i+1}-\frac{n-i+3}{n-i+2}\right)\sum_{k=1}^{i-2}b_k^2\\ &=\left(\frac{n-i+2}{n-i+1}-\frac{n-i+3}{n-i+2}\right)a_{i-1}^2-\frac{n-i+2}{n-i+1}b_{i-1}^2\\ &=\left(\frac{n-i+2}{n-i+1}-\frac{n-i+3}{n-i+2}\right)a_{i-1}^2-\frac{n-i+2}{n-i+1}\frac{a_{i-1}^2}{(n-i+2)^2}\\ &=\left(\frac{(n-i+2)^2-(n-i+1)(n-i+3)}{(n-i+1)(n-i+2)}\right)a_{i-1}^2-\frac{1}{(n-i+1)(n-i+2)}a_{i-1}^2\\ &=\left(\frac{n^2+2(-i+2)n+(i-2)^2-n^2-(-2i+4)n-(-i+1)(-i+3)}{(n-i+1)(n-i+2)}\right)a_{i-1}^2\\ -&\frac{1}{(n-i+1)(n-i+2)}a_{i-1}^2\\ &=\frac{1}{(n-i+1)(n-i+2)}a_{i-1}^2-\frac{1}{(n-i+1)(n-i+2)}a_{i-1}^2\\ &=0 \end{align*}
であり,
\begin{align*} c_2&=\frac{n}{n-1}a_2^2=\frac{n}{n-1}\left(1-\frac{1}{n^2}\right)=\frac{1+n}{n}=c_1 \end{align*}
であるから,数列$\{c_i\}_{i=1,\ldots,n}$は定数列になる.つまり$\|x_j-x_i\|=\sqrt{2c_i}=\sqrt{2c_1}$が成り立つ.

系として次を得る.

円に内接する正三角形の頂点座標の一つは$(0,1),(\sqrt{3}/2,-1/2),(-\sqrt{3}/2,-1/2)$で与えられる.

あとがき

よかった,単位円に内接した正三角形の頂点座標を求められた…….

 明日の午後から自主ゼミあるんだから逃げずにそっちの進捗生んだ方がいい.

投稿日:1021
OptHub AI Competition

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