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大学数学基礎解説
文献あり

多項式環の基礎的なお話

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目次

・はじめに
・内容
・最後に

はじめに

どうも、色々やる数狂徒です。
高校に入ったら大学数学で遊べる時間がなさそうなので今のうちに代数をペロペロしておきます。
というのも、恩師にお借りしている本を返す時間がもうすぐなんですよね…

ここでは参考文献の本と同様に単に環といった場合は単位元1を持つ可換環を意味します

内容

今回は多項式環(のイデアルとか)で遊びましょうか。

多項式環

$R$上の多項式全体の集合を$R[X]$と表したとき次に定めた演算子によって環をなす
($f,g\in R[X],\textup{deg}(f)=\textup{deg}(g)$)
$\displaystyle f(X)+g(X)=\sum_{i=0}^m(a_i+b_i)X^i$
$\displaystyle f(X)g(X)=\sum_{k=0}^m\left(\sum_{i+j=k}a_ib_j\right)X^k$

イデアル

$R$の部分集合$I$が次を満たすとき、$I$$R$のイデアルであるという
(1)$0\in I$
(2)$x,y\in I\implies x+y,x-y\in I$
(3)$c\in R,x\in I\implies cx\in I$

イデアル

$R$は環とし、空でない$R$の部分集合$I$が次を満たすとき
$I$$R$のイデアルであるという
(1)$x,y\in I\implies -x+y\in I$
(2)$c\in R,x\in I\implies cx\in I$

環におけるイデアルとは群で考えた正規部分群と同じですね。

具体例を見てみましょう。

$I=\{f\in \mathbb R[X]|f(a)=0\}$$\mathbb R[X]$のイデアルである

自力で示せたので結構キモチェーでした。(まあイデアルの定義を一つずつ確かめるだけですね)

$0\in I$である。$f,g\in I$とすると
$(-f+g)(a)=-f(a)+g(a)=-0+0=0$より$-f+g\in I$
また、$\phi\in \mathbb R[X]$に対して
$(\phi f)(a)=\phi(a)・0=0$より$\phi f\in I$が成り立つ
以上より題意を示した。

$I$は環$R$のイデアルとし、$I≠R$とする。
$x,y\in R$に対して、$x-y\in I$が成り立つとき
$x\equiv y(\textup{mod}\;I)$と表すことにする

同値関係

$x\equiv y(\textup{mod}\;I)$は同値関係である

$x,y,z\in R$とする。$x-x=0\in I$より、$x\equiv x(\textup{mod}\;I)$である(反射律)
$x\equiv y(\textup{mod}\;I)$ならば、$y-x=-(x-y)\in I$より、$y\equiv x(\textup{mod}\;I)$である(対称律)
$x\equiv y(\textup{mod}\;I),y\equiv z(\textup{mod}\;I)$ならば$x-z=(x-y)+(y-z)\in I$より$x\equiv z(\textup{mod}\;I)$である(推移律)

この同値関係で同値類を考えましょう。
\begin{align} C(x)&=\{z\in R|z-x\in I\}\\ &=\{z\in R|あるa\in Iが存在してz=x+a\}\\ &=\{x+a|a\in I\}\\ &=x+I \end{align}
この同値類$x+I$をここでは$\bar x$と表し、この同値関係に関する商集合を$R/I$と表します。
$R/I=\{\bar x|x\in R\}$
うーん、もっとキモチェーしたい。
準同型なんかがいいですかね?
やりましょう!

準同型写像

$R,R’$に対する写像$f:R\to R’$が次を満たすとき
$f$を準同型写像とよぶ
(1)$f(1_R)=1_{R’}$
(2)$f(a+b)=f(a)+f(b)$
(3)$f(ab)=f(a)f(b)$

特にこの写像が全単射なら$f$は同型写像であるといい、環$R$から環$R’$への同型写像が存在するとき、$R$$R’$は同型であるといい$R\cong R’$と表す。
これはかなりエッチですね。

標準的準同型写像

$I$は環$R$のイデアルとし、$I≠R$とする。
$\pi:R\ni x\longmapsto \bar x\in R/I$と定めると、$\pi$は全射な準同型写像である。
この$\pi$を標準的準同型写像とよぶ

まずは簡単な例で慣れましょう。

$f:\mathbb Q[X]\ni g(X)\longmapsto g(\sqrt{2})\in \mathbb R$
と定めた$f$は準同型写像である

$h,g\in\mathbb Q[X]$とする。
$f(h+g)=(h+g)(\sqrt{2})=h(\sqrt{2})+g(\sqrt{2})=f(h)+f(g)$
$f(h・g)=(h・g)(\sqrt{2})=h(\sqrt{2})g(\sqrt{2})=f(h)f(g)$
より示した

上でわかるように代入という操作は環準同型写像となっています。

では準同型定理というキモチェー定理を示してその応用を見て終わりましょう。

環の準同型定理

$R,R’$は環とし、$f:R\to R’$は準同型写像とする。
$\pi:R\to R/\textup{Ker}(f)$は標準的準同型写像とする。このとき、単射な準同型写像$g:R/\textup{Ker}(f)\to R’$であって、$f=g\circ\pi$を満たすものがただ一つ存在する。さらに、$f$が全射ならば$g$は同型写像であり$R/\textup{Ker}(f)\cong R’$となる
$\xymatrix{R\ar[r]^f \ar[d]_{\pi}&R’ & \\ R/\textup{Ker}(f)\ar[ur]_g}$

$\colorbox{cyan}{更新予定}$

最後に

どうでもいいけど「イデアルである」ってなんか面白くないですか?

参考文献

[1]
海老原 円, 代数学教本
投稿日:217
更新日:217

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