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部分多様体からの関数の拡張

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LeeSM (J. M. Lee “Introduction to Smooth Manifolds”) の演習問題 5.17, 18 の解答を書く.

$S\subset M$ をはめ込まれた部分多様体とする.これが (固有に) 埋め込まれた部分多様体であるかどうかを判定するには,次の必要十分条件がある.

問題 5.17, 18(1)

$S\subset M$ が埋め込まれた部分多様体であるための必要十分条件は,任意の $f\in C^\infty(S)$ に対してある $S$ の開近傍 $U$$F\in C^\infty(U)$ が存在して $F|_S=f$ をみたすことである.

(必要性) $S$ を埋め込まれた部分多様体,$f\in C^\infty(S)$ とする.$S$ の slice chart による開被覆 $\{V_\alpha\}_{\alpha\in A}$ をとる.ここで各 $V_\alpha$ は開直方体 $W_\alpha\subset M$ のスライスであるとしてよい.$\{W_\alpha\}$ に従属する$1$の分割 $\rho_\alpha$ を取る.$W_\alpha$ を開直方体としたことから $f|_{V_\alpha}$ は自明な拡張 $\tilde{f}_\alpha:W_\alpha\to \mathbb{R}$ をもつので,$\sum \rho_\alpha \tilde{f}_\alpha:\bigcup_\alpha W_\alpha\to \mathbb{R}$ とおけばこれは $f$ の滑らかな拡張になっている.
(十分性) $S$ が埋め込まれた部分多様体であることを示す.LeeSM における埋め込まれた部分多様体の定義は

  • $S$ の位相は $M$ の部分空間としての位相に一致する
  • $S\hookrightarrow M$ は埋め込みである

の二つをみたすことであるから,これらを確認する.まず一つ目.$V$$S$ の任意の開集合とする.このとき [LeeSM, Theorem 2.29] により $V=f^{-1}((0,+\infty))$ をみたす $f\in C^\infty(S)$ が存在する.この $f$$S$ の近傍上の関数 $F$ へと拡張する.$F^{-1}((0,+\infty))$$M$ の開集合であって,$V=S\cap F^{-1}((0,+\infty))$ より $V$ は部分空間の位相における開集合である.はめ込み $S\hookrightarrow M$ は特に連続だから,逆の包含関係はすぐに分かる.
次に二つ目.$S\hookrightarrow M$ が像 (with 相対位相) への同相写像であることはすでに確認した.元々 $S\hookrightarrow M$ ははめ込みとしていたから,これは埋め込みである.$\blacksquare$

$U$$M$ 全体に取ることができない例として,たとえば $S=(-1,1),\ M=\mathbb{R}$ に標準的な位相と微分構造を入れて,$f(x)=1/(1-x^2)$ を考えるとよい.余次元を正にしたい場合,$(-1,1)\times\{0\}\subset\mathbb{R}^2$ などを考えるとよい.

問題 5.17, 18(2)

$S\subset M$ が固有に埋め込まれた部分多様体であるための必要十分条件は,任意の $f\in C^\infty(S)$ に対してある $F\in C^\infty(M)$ が存在して $F|_S=f$ を満たすことである.

(必要性) 前定理により $f$$M$ における $S$ の開近傍 $U$ への拡張 $F$ をもつ.いま $S\hookrightarrow M$ は固有で $M$ は局所コンパクト Hausdorff だから,$S$$M$ において閉である.そこで滑らかな関数 $\chi:M\to\mathbb{R}$ であって $\chi|_S=1,\ \operatorname{Supp}\chi\subset U$ をみたすものがある.$\chi F$ (を零拡張したもの) は $f$$M$ への拡張である.
(十分性) 埋め込まれた部分多様体であることは前の問題からわかる.よって固有であることを示せばよい.$S$ 上の滑らかな皆既 (exhaustion) 関数 $\psi:S\to\mathbb{R}$ をとる.仮定により $\psi$$M$ への拡張 $\Psi:M\to\mathbb{R}$ が存在する.$K\subset M$ を任意のコンパクト集合とする.このとき $M_K:=1+\max_K\Phi<+\infty$ であって
$$K\cap S\subset \{x\in S\mid \phi(x)< M_K\}\Subset S $$
であるから,埋め込み $S\hookrightarrow M$ は固有である.$\blacksquare$

これらの判定法は $S,M$ の幾何学的な関係をそれら上の関数の情報から知ることができるといったタイプのものである.それでは $S,M$ を複素多様体,$C^\infty$$\mathcal{O}$ (正則関数) とすればどうなるだろうか.たとえば $S=\mathbb{C}^2\setminus\{0\},\ M=\mathbb{C}^2$ としたとき,実は制限写像 $\mathcal{O}(\mathbb{C}^2)\to\mathcal{O}(\mathbb{C^2}\setminus\{0\})$ は全射であることが知られている.しかし当然 $S\hookrightarrow M$ は固有ではないので,複素多様体が固有に埋め込まれているかどうかについては,その上の正則関数を見るだけでは判断できない.もちろん“下にある”微分構造に移れば判断することができる.

投稿日:915
更新日:915
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とと
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