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大学数学基礎解説
文献あり

圏論における随伴 Part2

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今回は次の2つの随伴の定義が同値であることを見ていきます.

随伴(1)

$\mathcal{C},\mathcal{D}$を圏,$F:\mathcal{C}\rightarrow\mathcal{D}$$G:\mathcal{D}\rightarrow\mathcal{C}$を関手とします.
この時,二つのhom関手
$\text{Hom}_\mathcal{D}(F(-),-):\mathcal{C}^{\text{op}}\times \mathcal{D}\rightarrow \text{Set}$
$\text{Hom}_\mathcal{C}(-,G(-)):\mathcal{C}^{\text{op}}\times \mathcal{D}\rightarrow \text{Set}$が自然同型であるとき,$F$$G$の左随伴(または$G$$F$の右随伴)であるといい,記号では$F\dashv G$と書く.

随伴(2)

$\mathcal{C},\mathcal{D}$を圏,$F:\mathcal{C}\rightarrow\mathcal{D}$$G:\mathcal{D}\rightarrow\mathcal{C}$を関手とします.
この時,二つの自然変換$\eta:id_\mathcal{C}\rightarrow GF$$\varepsilon:FG\rightarrow id_\mathcal{D}$が存在し,これらが三角等式
$ \xymatrix{ FGF \ar[r]^-{\varepsilon F} &F& &G\\ F \ar[u]^{F\eta}\ar[ur]_{1_F} & &G\ar[ur]^{1_G}\ar[r]_-{\eta G}&GFG\ar[u]_{G\varepsilon} } $
を満たすとき,$\langle F,G,\eta,\varepsilon\rangle$を随伴と呼ぶ.また,$\eta$を単位(unit),$\varepsilon$を余単位(counit)と呼ぶ.

(1)→(2)

$Step1$
単位$\eta$$\eta_X=\overline{id_{FX}}$,余単位$\varepsilon$$\varepsilon_Y=\overline{id_{GY}}$とおく.ここで,上棒は自然同型で移すことを表している.これら$\eta,\varepsilon$が自然変換であることを確認します.
 まず,次の事実に注目します:$p\in\text{Hom}_\mathcal{C}(FX',Y)$$f\in\text{Hom}_\mathcal{C}(X,X')$$g\in\text{Hom}_\mathcal{D}(Y,Y')$について,
$$\overline{\xymatrix@=10pt{FX\ar[r]_-{Ff}&FX'\ar[r]_-p&Y\ar[r]_-g&Y'}}=\xymatrix@=10pt{X\ar[r]_-f&X'\ar[r]_-{\overline{p}}&GY\ar[r]_{Gg}&GY'}$$
が成り立ちます.言い換えれば,
$$\xymatrix@=10pt{FX\ar[r]_-{Ff}&FX'\ar[r]_-p&Y\ar[r]_-g&Y'}=\overline{\xymatrix@=10pt{X\ar[r]_-f&X'\ar[r]_-{\overline{p}}&GY\ar[r]_{Gg}&GY'}} $$
ですね.よって,
$$\overline{\xymatrix@=12pt{X\ar[r]_-{\eta_X}&GFX\ar[r]_-{GFf}&GFX'}}=\overline{\xymatrix@=12pt{X\ar[r]_-{\overline{id_{FX}}}&GFX\ar[r]_-{GFf}&GFX'}}=\xymatrix@=10pt{FX\ar[r]_{Ff}&FX'}$$
です.また,
$$\overline{\xymatrix@=10pt{X\ar[r]_-f&X'\ar[r]_-{\eta_{X'}}&GFX'}}=\overline{\xymatrix@=10pt{X\ar[r]_-f&X'\ar[r]_-{\overline{id_{FX'}}}&GFX'}}=\xymatrix@=10pt{FX\ar[r]_{Ff}&FX'}$$
も成り立ちます.よって$f:X\rightarrow X'$に対して$GFf\circ\eta_X=\eta_{X'}\circ f$が成り立ち,$\eta$は自然変換です.同様にして(双対的に)$\varepsilon$も自然変換であることが分かります.
$Step2$
三角等式が成り立つことを確認してください.
QED.

(2)→(1)

$Step1$
二つの自然変換を次のように定義する;
$\varphi:\text{Hom}_\mathcal{D}(F(-),-)\rightarrow\text{Hom}_\mathcal{C}(-,G(-))$$\varphi_{X,Y}(f)=Gf\circ \eta_X$
$\psi:\text{Hom}_\mathcal{C}(-,G(-))\rightarrow\text{Hom}_\mathcal{D}(F(-),-)$$\psi_{X,Y}(g)=\varepsilon_Y\circ Fg$
で定義する.これらが確かに自然変換であることを確認してください.
$Step2$
互いに逆写像であることを見ます.
$\psi_{X,Y}(\varphi_{X,Y}(f))=\psi_{X,Y}(Gf\circ\eta_X)=\varepsilon_Y\circ FGf\circ F\eta_X=f\circ\varepsilon_{FX}\circ F\eta_X=f$
最後の等式で三角等式を使いました.
同様にして(双対的に)$\varphi_{X,Y}(\psi_{X,Y}(g))=g$が成り立ちます.
QED.

おわりに

随伴のもう一つの定式化(コンマ圏を使うやつ)との同値性についてはやりたいんですけどまだ理解できていないので気長に待っていてください.それでは.

参考文献

[1]
T.レンスター, ベーシック圏論
[2]
西郷甲矢人・能美十三, 圏論的集合論~集合圏とトポス~
投稿日:16日前
更新日:16日前
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投稿者

はじめまして!楽しい記事を書ければと思いますので、よろしくお願いします。

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