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東大数理院試過去問解答例(2022A06)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2022A06の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2022A06

$3$次実正方行列$P$に対し対称行列
$$ A=\begin{pmatrix} \frac{1}{3}&0&0\\ 0&\frac{2}{3}&0\\ 0&0&1 \end{pmatrix}+{}^tPP $$
を考える。ここで$^tPP$の固有値$\rho_1<\rho_2<\rho_3$は全て整数であるとする。$A$の固有値を$\alpha_1\leq\alpha_2\leq\alpha_3$とする。

  1. $A$は正則行列であることを示しなさい。
  2. 不等式
    $$ \frac{1}{3}+\rho_1\leq\alpha_1\leq1+\rho_1 $$
    $$ \frac{1}{3}+\rho_3\leq\alpha_3\leq1+\rho_3 $$
    を示しなさい。
  3. 不等式
    $$ \frac{2}{3}+\rho_1+\rho_3<\alpha_1+\alpha_3<1+\rho_1+\rho_3 $$
    を示しなさい。
  4. $\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3$は相異なることを示しなさい。
  1. $A$は正定値行列と半正定値行列の和なので正定値行列であり、特に正則行列である。
  2. まず
    $$ \alpha_1=\min_x\frac{|Ax|}{|x|}\geq\min_x\frac{|Bx|}{|x|}+\min_x\frac{|{}^tPPx|}{|x|}=\frac{1}{3}+\rho_1 $$
    $$ \alpha_3=\max_x\frac{|Ax|}{|x|}\leq\max_x\frac{|Bx|}{|x|}+\max_x\frac{|{}^tPPx|}{|x|}=1+\rho_3 $$
    である。一方$\alpha_3<\frac{1}{3}+\rho_3$であったとすると、${}^tx{}^tPPx=\rho_3|x|^2$なる$x$${}^txBx<\frac{1}{3}|x|^2$を満たさなければならないから矛盾。同様に${1}+\rho_1<\alpha_1$であったとすると、${}^tx{}^tPPx=\rho_1|x|^2$なる$x$${}^txBx>|x|^2$を満たさなければならないから矛盾。以上から
    $$ \alpha_3\geq\frac{1}{3}+\rho_3 $$
    $$ \alpha_1\leq1+\rho_1 $$
    が従う。
  3. まず(2)の辺々を足すことで
    $$ \frac{2}{3}+\rho_1+\rho_3\leq\alpha_1+\alpha_3\leq2+\rho_1+\rho_3 $$
    は得られるから、等号が成り立たないことを示せば良い。この等号が成り立つとすると、(2)の議論から
    $$ \max_{x}\frac{|Ax|}{|x|}=\max_{x}\frac{|Bx|}{|x|}+\max_{x}\frac{|^tPPx|}{|x|} $$
    である。これはつまり$\frac{|^tPPx|}{|x|}$の最大値は$x=^t(0,0,1)$によって実現されることを意味している。一方$1+\rho_1=\alpha_1$とすると、$\frac{|^tPPx|}{|x|}$の最小値も$x=^t(0,0,1)$によって実現されることを意味する。これは$\rho_1\neq\rho_3$に矛盾する。
  4. まずトレースの比較により
    $$ \alpha_1+\alpha_2+\alpha_3=2+\rho_1+\rho_2+\rho_3 $$
    である。これと(3)により
    $$ \rho_2<\alpha_2<\frac{4}{3}+\rho_2 $$
    が従う。まず$\rho_i$たちは相異なる整数であるから
    $$ \alpha_1\leq1+\rho_1\leq\rho_2<\alpha_2 $$
    より$\alpha_1<\alpha_2$が従う。同様に
    $$ \alpha_2<\frac{4}{3}\leq\frac{1}{3}+\rho_1\leq\alpha_3 $$
    より$\alpha_2<\alpha_3$が従う。以上から$\alpha_i$たちは相異なる実数である。
投稿日:922
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント

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