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数学史・伝記解説
文献あり

ラマヌジャンの公式集:初等的な恒等式

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はじめに

 この記事ではラマヌジャンの発見した公式の数々を鑑賞していきます。
 今回はB.C. Berndtの"Ramanujan's Notebooks"の
・Part VI, Chap. 22 Elementary Results
・Part VI, Chap. 23 Number Theory
にて紹介されている公式を(独断と偏見により)いくつかピックアップして紹介していきます。

開方公式

 以下の5つの公式は"Elementary Results"の対応するEntryにて解説されている。

Entry 1 (改)

2(a2+b2a)(a2+b2b)=a+ba2+b23(a3+b33a)(a3+b33b)3=(a+b)23a2ab+b23

Entry 2

Bk44Ak38Bkp4Ap=0
において
A+Bp3=Bp+k3(12k2+kp3p23)

Entry 23

m4m8n3+n4m+n3=13((4m+n)23+4(m2n)(4m+n)32(m2n)23)

Entry 24

(m2+mn+n2)(mn)(m+2n)(2m+n)3+3mn2+n3m33=(mn)(m+2n)293(2m+n)(mn)293+(m+2n)(2m+n)293

Entry 29

32(931)3=cos403+cos803cos2036(931)3=1cos403+1cos8031cos203

恒等式

 以下の13個の公式は"Number Theory"の対応するEntryにて解説されている。

Entry 1

p3+q3+r3=s3
において
m=±(s+q)sqr+p,n=±(rp)r+psq
とおくと
(pa2+mabrb2)3+(qa2nab+sb2)3+(ra2mabpb2)3=(sa2nab+qb2)3

Entry 2

(a+b)2=x+na2=y+nab=z+nb2
において
x2+(n2)xz+z2=ny2

Entry 3

(a+b)2=p+3a2=q+3ab=r+3b2
つまり
において
n(mp+nq)3+m(mq+nr)3=m(np+mq)3+n(nq+mr)3

 このとき
p=2a2+2ab+b2q=a2ab+b2r=a2+2ab2b2
と表せることに注意する。

Entry 4

(3a2+5ab5b2)3+(4a24ab+6b2)3+(5a25ab3b2)3=(6a24ab+4b2)3

 これはEntry 1あるいはEntry 3の直系として得られる。

Entry 42

(8s2+40st24t2)4+(6s244st18t2)4+(14s24st42t2)4+(9s2+27t2)4+(4s2+12t2)4=(15s2+45t2)4(4m212n2)4+(3m2+9n2)4+(2m212mn6n2)4+(4m2+12n2)4+(2m2+12mn6n2)4=(5m2+15n2)4

ちなみにEntry 42, 44についてはラマヌジャンのノートブックに次のような具体例がみられる。 Notebook 3より
左のページついては[前に書いた記事](https://mathlog.info/articles/WpyJcz7DjhhvWArh214T)の最後にてちょっとした解説を載せている。 Notebook 3より
左のページついては 前に書いた記事 の最後にてちょっとした解説を載せている。

Entry 43

 a+b+c=0において
2(ab+bc+ca)2=a4+b4+c42(ab+bc+ca)4=a4(bc)4+b4(ca)4+c4(ab)42(ab+bc+ca)6=(a2b+b2c+c2a)4+(ab2+bc2+ca2)4+(3abc)42(ab+bc+ca)8=(a3+2abc)4(bc)4+(b3+2abc)4(ca)4+(c3+2abc)4(ab)4

Entry 44

 ad=bcおよびn=2,4において
(a+b+c)n+(b+c+d)n+(ad)n=(c+d+a)n+(d+a+b)n+(bc)n

Entry 45

 ad=bcにおいて
64((a+b+c)6+(b+c+d)6(c+d+a)6(d+a+b)6+(ad)6(bc)6)×((a+b+c)10+(b+c+d)10(c+d+a)10(d+a+b)10+(ad)10(bc)10)=45((a+b+c)8+(b+c+d)8(c+d+a)8(d+a+b)8+(ad)8(bc)8)2

Entry 46

 3k=a2+ab+b2において
(ax3+k)3(bx3+k)3=k((x4+ax)3(x4+bx))

Entry 47

(x4+1)4+4(x55x2)4+5(x42)4=34+4(x5+x2)4

Entry 48

(4x4+1)4+(4x55x)4+5(4x42)4=34+(4x5+x)4

Entry 49

(4x4+1)4+(4x55x)4+(6x43)4=34+(4x5+x)4+(2x41)4

Entry 50

 α2+αβ+β2=3λγ2において
(α+λ2γ)3+(λβ+γ)3=(λα+γ)3+(β+λ2γ)3

ガウス記号

 以下の3つの公式は"Number Theory"の対応するEntryにて解説されている。
 個人的な好みによりxを越えない最大の整数のことをガウス記号[x]ではなく床関数xによって表す。

Entry 6

n=0npxn=xp(1x)(1xp)

Entry 22

n+46n+36+n+26=n2n3

Entry 23

n+1+n=4n+2

Entry 24

12+n+12=12+n+14

参考文献

[1]
B. C. Berndt, Ramanujan's Notebooks Part IV, Springer, 1994
投稿日:202419
更新日:2024113
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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