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大学数学基礎解説
文献あり

有理数体に平方根を添加した体

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$$\newcommand{gausu}[1]{[]} $$

前提知識

体論
一応私が参考にした本を参考文献に載せておく。
これの$7$章を読んでおけば理解することはできると思う。

本題

$p_1,p_2,\cdots,p_n$$n$個の異なる、平方因子を持たない整数とする。
$ \mathbb Q( \sqrt{p_1} + \sqrt{p_2} + \cdots + \sqrt{p_n})=\mathbb Q(\sqrt{p_1},\sqrt{p_2},\cdots,\sqrt{p_n})$である。

ここで、$\mathbb{Q}(\alpha)$は、有理数体$\mathbb Q$$\alpha$を添加した体とする。
この記事では、上の命題を証明することを目標とする。
だが、証明に進む前に、使う定理を書いておく。

命題7.1.1(3)

$K$を体とする。$\alpha$$K$上代数的とするとき、次が成り立つ。
$f(x)\in K[x]$$\alpha$の最小多項式とし、$deg f(x)=n$とすると、$[K(\alpha):K]=n$である。
また、$K(\alpha)$$K$上の基底として${{1,\alpha,\alpha^2,\cdots,\alpha^{n-1}}}$が取れる。

系7.4.5

$L/K$を有限次ガロア拡大、$\alpha,\beta\in L$とするとき、次の$(1),(2)$は同値である。
$(1)$ $\alpha,\beta$$K$上共役である。
$(2)$ $σ\in Gal(L/K)$があり、$σ(\alpha)=\beta$となる。

上の三つの定理の証明は1の第$7$$1$$p.199$$7$$p.215$に載っているため省略する。
命題7.1.1、系7.4.5は1内の名称である。この記事内でも同様に呼ぶことにする。
では証明に入る。

まず、$L=\mathbb Q(\sqrt{p_1},\sqrt{p_2},\cdots,\sqrt{p_n})$$M=\mathbb Q( \sqrt{p_1} + \sqrt{p_2} + \cdots + \sqrt{p_n})$、と置く。
$M\subset L$なので$L$$M$の拡大体であり、$[L:M]=1$であることを示せばいい。
$[L:\mathbb Q]=2^n$であるので、$[M:\mathbb Q]=2^n$であることを示す。
ここで、$[M:\mathbb Q]$は、$\sqrt{p_1} + \sqrt{p_2} + \cdots + \sqrt{p_n}$$\mathbb Q$上の最小多項式の次数であり、$\mathbb Q$上の共役の個数である。
ここで$L/\mathbb Q$はがロア拡大であることと、$\sqrt{p_1} + \sqrt{p_2} + \cdots + \sqrt{p_n}\in L$であることから共役はすべて$L$の元。
ここで、系7.4.5より$a$$\sqrt{p_1} + \sqrt{p_2} + \cdots + \sqrt{p_n}$の共役とすると、
$σ\in Gal(L/\mathbb Q)$があり$σ(\sqrt{p_1} + \sqrt{p_2} + \cdots + \sqrt{p_n})=a$である。(これは同値)
よって$σ(\sqrt{p_1} + \sqrt{p_2} + \cdots + \sqrt{p_n})$の値の数だけ共役が存在する。
$σ,τ\in Gal(L/\mathbb Q)$で、$σ(\sqrt{p_1} + \sqrt{p_2} + \cdots + \sqrt{p_n})=τ(\sqrt{p_1} + \sqrt{p_2} + \cdots + \sqrt{p_n})$なら$σ=τ$であることを示す。
$σ(\sqrt{p_1} + \sqrt{p_2} + \cdots + \sqrt{p_n})=τ(\sqrt{p_1} + \sqrt{p_2} + \cdots + \sqrt{p_n})\Longrightarrow(σ(\sqrt{p_1})-τ(\sqrt{p_1}))+\cdots +σ(\sqrt{p_n})-τ(\sqrt{p_n}))=0$
となる。
$σ(\sqrt{p_i})-τ(\sqrt{p_i})=2\sqrt{p_i},-2\sqrt{p_i},0$なので、
$a_i\sqrt{p_i}=σ(\sqrt{p_i})-τ(\sqrt{p_i})$とすると、
$a_1\sqrt{p_1}+\cdots + a_n\sqrt{p_n}=0$だが、${\sqrt{p_1},\cdots,\sqrt{p_n}}$$L$$\mathbb Q$上の基底の一部なので一次独立。
よって$a_1,\cdots,a_n=0$
$σ(\sqrt{p_i})=τ(\sqrt{p_i})$
${\sqrt{p_1},\cdots,\sqrt{p_n}}$$\mathbb Q$$L$を生成するので$σ=τ$
よって$σ(\sqrt{p_1} + \sqrt{p_2} + \cdots + \sqrt{p_n})$の値の数は$|Gal(L/\mathbb Q)|=[L:\mathbb Q]=2^n$個ある。
これは$[M:\mathbb Q]=2^n$であることを示しており、$[L:M]=1\Longrightarrow L=M$である。□

なかなかに端折ったので、わかりにくいところがあれば質問してほしい。
それでは以上である。

参考文献

[1]
雪江明彦, 整数論1ー初等整数論からp進数へ, 整数論, 日本評論社, 20222
投稿日:113
更新日:113

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ringo
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ヱヴァが好きなRingo(知恵の実)です。 得意分野は数論 学生です

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