本記事の目的
一般に定義される「表現行列」と,齋藤先生の線型代数入門による「基底間に関する線形写像の行列」との間に,ギャップがあるように思えたので,それを埋めてみました.
定義の確認
ベクトル空間について,その間の線形写像を考える.
また,ここでは有限次元について考え,とし,の基底をそれぞれとおく.
線形写像を用いて,はの線形結合で表すことができる.この事を用いて,表現行列が定義される.
表現行列
型行列を用いて,と表されるとき,行列を基底からに関するの表現行列という.
また,次の補題を用いて「基底間に関する線型写像の行列」が定義できる.
をまたはとする.
この時,を上列ベクトルの集合とすると,である.
の基底を用いて,
と表すことができる.このとき,写像を
と定めると,は同型写像となる.
この補題により,ベクトル空間における基底を定めることで,それに対応する同型写像が決まる.特に,基底を定めて得られる同型写像との組を明示的に表すために,基底をとかくことにする.
基底間に関する線形写像の行列
ベクトル空間について,線形写像を定める.また,とする.の基底を定めるとき,次の図式を考える.
このとき,線形写像は,ある型行列に対応し,と書ける.この行列を,基底に関するの行列という.この図式は,定義より明らかに可換図式である.
この定義間の関係性
上の節で定義したベクトル空間と基底を引き続き用いることにする.
基底からに関するの表現行列をとし,基底に関するの行列をとする.このとき,
については,に注意すれば,次の書き方と同値になる.
ここで,の単位行列であるため,が成り立つ.以上より,二つの定義は同値である.