本記事では広義楕円曲線とそのレベル構造を司るモジュラー曲線を考えていきます。初めに基本的な定義・性質をおさらいして、次節でを構成し、最後にのカスプを見ていきます。
わたしの記事は全て院試の解答と趣味のどちらかです(尤も院試の解答も趣味ですが...)。趣味の記事を書くに当たっては、ゆくゆくはフェルマーの最終定理の証明をわたしの記事のみで追えるようにすることを目標にしています。本記事もその目標に向けての足掛かり的な記事ですが、今の時点ではの性質を軽く述べただけのメモ的な内容に終始しています。なのであまり参考になる箇所はないかもしれませんがご了承ください。今後中身のある記事にしていきたいと思っているので期待しないで待っていただけると幸いです。
関手及びについて
をスキームの圏、を小さな集合の圏とする。
関手をスキームに対して、上の楕円曲線及びその群スキームの同型の組全体の集合を出力する関手と定義する。
また関手をスキームに対して、上の広義楕円曲線及びその構造の組全体の集合を出力する関手と定義する。
このとき次の定理が成り立ちます。
を自然数とする。
- 及びは粗モジュライを持つ。のときこれらは精モジュライになっている。
- の粗モジュライは上の固有スムーズな代数曲線である。またの粗モジュライはの稠密開部分スキームである。
は自然数とする。
- は連結多様体で、定数体はである。
- 代数曲線の種数は
である。
両者ともSTに載っていますが、前者は証明が省略されている箇所があり、後者に至っては方針だけ述べて証明が完全に省略されているので、あるが存在して年以内にこれらの証明についての記事を書こうと思います。
小さいについては実際に計算することで、次がわかります。
| | | |
1 | 1 | 1 | 0 |
2 | 1 | 3 | 0 |
3 | 2 | 4 | 0 |
4 | 2 | 6 | 0 |
5 | 4 | 6 | 0 |
6 | 2 | 12 | 1 |
7 | 6 | 8 | 3 |
8 | 4 | 12 | 5 |
9 | 6 | 12 | 10 |
10 | 4 | 18 | 13 |
ここで次の事実があります。
ここで各に対して、Neronの角形とそれに付随する構造を構成することで、X(N)の有理点を構成でき、これによって上記の補題及び例から
がわかる(但しはの原始乗根である)。
モジュラー曲線
ここではモジュラー曲線を見ていきます。これはSTに於いて命題2.21(本記事の定理1)を示すための足掛かりになっているので、前節の内容は一旦忘れて議論を進めていきます。
をの非斉次座標とする。ここで上の平面曲線を
とおく。更にこの切断
をとっておく。ここでは上ではスムーズ平面次曲線なので、切断を原点とする楕円曲線と見れる。
ここで及びをの標準基底とし、群スキームの準同型を
によって定義する。これによって関手の射
が定まる。以下これが同型であること、つまり任意のスキーム及び構造付き楕円曲線に対しであるようなが一意的に存在することを示す。(証明自体は下に続きます)
以上から次の補題を示すことに帰着されました。
代数及び広義楕円曲線に対して、をの構造とする。このとき及びなるで、は
で定義されるの閉部分スキームに同型であり、及びが及びに対応するようなものが一意的に存在する。
以下補題を示していきますが、まず一意性が述べられていることから証明はがアファインの場合に帰着できます。また簡単のためはネーター代数のアファインスキームとします。ネーターとは限らない環の場合もこの場合に帰着できます。
まず上の可逆層が非常に豊富なことを示していく。初めにはネータスキームの間の平坦射なので、Stacks Project
Theorem 41.10.2
から開写像であることがわかる。特に上の任意の層に対して、自然な射は同型になる。次には固有射(特に準コンパクト射かつ分離的射)なのでStacks Project
Lemma 29.38.7
からの非常に豊富性を確かめるには射が閉埋め込みなことを確かめればよい。この射及びその余域の構成が基底変換と整合的であること、そしてスキーム上の固有射の間の射が閉部分スキームなことを見るには各幾何的ファイバー上で見ればよく、これによっての非常に豊富性の確認は(は代数閉体)の場合に帰着された。これはRH3系3.2から従う。以上からは非常に豊富な層であり、閉埋め込みでを満たすものの存在がわかる。よって大域切断は元生成され、しかもこれはファイバーに制限しても次元線型空間であるから、RH2定理12.11も考慮すればを十分小さくとることではランクの自由加群であることがわかる。
またの部分加群
を考える。初めには自然な形でを含んでいることとRH2定理12.11からを十分小さく取ることでランクの部分加群を定めている。まず一般のスキーム上で、広義楕円曲線に定まった作用から誘導される作用
は自明な作用である(DRII Proposition 1.13)。特にを小さいものに取り替えることで、
が成り立ち、これは特には非零元を持つことを導く。よって及びもRH2定理12.11と併せてランクの自由加群であることがわかる。以上から単射
が得られるが、これは任意の極大イデアルによる還元によって同型に移ることを考慮するとこの単射は同型である。よって加群の自然な同型
が従う。各直和成分はによる作用で安定であり、なるが存在してはに倍に作用する。ここでがであったとすると、であるから、及びの固有値もになる。このとき任意のの元がによる作用の合成で不変になるが、このとき及びに対して、が極を持たず零点を持つような非零元が存在し、これによってになるが、このときよりになる。及びは自由加群の生成元であったから、これによりがわかり矛盾する。各直和成分はによる作用で安定であり、上の議論からなるが存在してはに倍に作用している。
と置いた(上記と同様の考察によりこれもランクの自由加群である)とき、は全て同型になる。の基底をとし、及びをこの同型でうつしたものとする。ここで
を考える。このとき、まず加群
を考えたとき、はを基底とするランクの自由加群である。ここで
を考える。の定義及びそれぞれへのの作用の仕方から
であるので、あるを用いて
と表せる。以上の構成から
と表され、は、はに対応していることがわかる。
以上から
が示せた。
もっと厳密に書きたかったですが、時間がかかりそうなので後回しにして記事を公開しました。後日時間のある時に加筆します。
このあとの構成はからを構成し、そこからを構成する方法が取られます。詳細はSTのp.50以降を参照してください。こちらについても時間のある時に記事を書こうと思います。
のカスプ
次にのカスプを見ていきます。のときは直接モジュラー曲線を構成する方針で行きましたが、ここからはわかっている性質をフルに使って見ていきます。なのでここまでで述べた定理もどんどん用いていきます。初めにFD&JSのp101の記述により、のカスプの個数は
です。一方を含む体上で定義されるNeronの角形のレベル構造も
個です。以上からを含む体について
がわかります。