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大学数学基礎解説
文献あり

不足数(σ(n) < 2n)の十分条件

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$\sigma$を約数関数,すなわち$\sigma(n):=n\mbox{の約数の総和}$として,$\sigma(n) < 2n$となる自然数$n$のことを不足数と言います.
本記事では こちら の論文によって示された不足数の十分条件について,証明がとても鮮やかで巧みだったため,ご紹介したいと思います .

有限個の自然数からなる集合$S=\{a_1, a_2,...,a_N\}$について,$S$の空でない部分集合の和は全て異なる.
このとき,$$\sum_{i=1}^N \frac{1}{a_i} < 2 $$となる.特に,自然数$n$の約数の集合を$D:=\{d_1,d_2,...,d_N\}$としたとき,
$\displaystyle \frac{\sigma(n)}{n} = \sum_{i=1}^N \frac{1}{d_i}$より,$D$の空でない部分集合の和が全て異なるならば,$n$は不足数となる.

例えば,$2^N$の約数は$1,2,2^2,...,2^N$で,二進数の性質から,どのように組み合わせても和が異なります.そして実際,$1+2+2^2+...+2^N = 2^{N+1} - 1 < 2\cdot 2^N$より,不足数であることが分かります.

それでは定理1を証明していきましょう.

$x \in (0,1)$とする.
多項式$\displaystyle \prod_{i=1}^N (1+x^{a_i})$$x^n$の係数は,$S$の空でない部分集合で,和が$n$となるものの個数を表す.
今,$S$の空でない部分集合の和は全て異なるため,$x^n$の係数は$1$以下となる.よって,
\begin{align*} \prod_{i=1}^N (1+x^{a_i}) &< \sum_{n=0}^{\infty} x^n = \frac{1}{1-x}, \end{align*}となる.両辺自然対数を取り,

\begin{align*} \sum_{i=1}^N \log(1+x^{a_i}) &< -\log(1-x). \end{align*}
さらに両辺$x$で割り,$(0,1)$区間で積分すると,
\begin{align*} \sum_{i=1}^N \int_0^1 \frac{\log(1+x^{a_i})}{x}~dx &< -\int_0^1 \frac{\log(1-x)}{x}~dx. \end{align*}
左辺の各項について,$x^{a_i} = y$とおけば,
\begin{align*} \sum_{i=1}^N \frac{1}{a_i}\int_0^1 \frac{\log(1+y)}{y}~dy &< -\int_0^1 \frac{\log(1-x)}{x}~dx. \end{align*}
$\displaystyle \int_0^1 \frac{\log(1+y)}{y}~dy = \frac{\pi^2}{12},$ $\displaystyle -\int_0^1 \frac{\log(1-x)}{x}~dx = \frac{\pi^2}{6}$より,

\begin{align*} \sum_{i=1}^N \frac{1}{a_i} &< 2, \end{align*}となる.

参考文献

投稿日:20231110
更新日:20231110

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Mathお
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