こんにちは,itouです.
Zeckendorfの定理というものがあります.
任意の正整数
ただし
すなわち任意の正整数は連続しないフィボナッチ数の和で表示できます.Knuthは以下のことを示しました.
とゼッケンドルフ表現したとき,二項演算
このとき,二項演算
非常に非自明な結果です!Knuthはゼッケンドルフ表示の性質を調べることでこれを示しました([1])が,P.Arnouxは剰余環
また,この積は
という表示があります.
この演算についてはさらなる一般化が調べられています.
一般の線形漸化式への一般化は[3],Knuth積のfloor関数表示の類似については[4]にまとめられています.
私がこの積に興味を持ったのは友人Tが紹介してくれたからです.Tは次の示唆をしました.
「Knuth積は結合的だが単位的でない.和の取り方を変えれば単位的な積にできるのではないか」
つまり,以下のように定義します.
とゼッケンドルフ表現したとき,二項演算
このとき,二項演算
インデックスを
すべての正整数
たとえば以下のように計算します.
こうすると単位的かつ結合的な積になる!...と思ったのですが,この積は常に結合的とは限りません.
この反例を見つけたときはかなりがっかりしたのですが,多くの場合で結合法則が成立することは事実です.もう少し調べると,Tが以下のような予想を得ました.
後のために,以下のように再定義します.
とゼッケンドルフ表現したとき,二項演算
このとき,二項演算
以下,このずらしたフィボナッチ数列を
Tが以下の予想を見つけました.
「ゼッケンドルフ表現に
さらに,任意の
実験を行うと,他にも予想が生えてきます.この記事では,我々が得た予想を紹介します.
とする.
単位的Knuth積は以下のようにも表示できるようです.
これにより,負の整数に対しても単位的Knuth積を拡張できます.
以下のように素数の概念を導入します.
ある正整数
を満たすような組
ただし,1はクヌース素数ではないとする.クヌース素数全体の集合を
結合法則について調べていると,以下の集合に出会いました.
を満たすような整数
(クラス1,2という名前は私が考えたのですが,ダサいと言われたのでもっとかっこいい名前を募集中.)
クラス1,2については以下のような性質を見つけました.
正整数
(1)
また,
(2)
上の
分配法則は常には成り立たないのですが,「補正項」を付け加えることで成立します.
任意の
(1)
(2)
(3)
なお,任意の
私が実験的に予想し,Sが証明しました.単位的Knuth積のfloor表示を用いて計算すると証明できます.
これで分配法則については完全に分かったことになります.
しかし,結合法則についてはこれほど単純ではありません.
いくつか生えてきた予想を並べてみます.
(1)
(2)
(3)
(真ん中が
任意の
予想だけが立つばかりで,証明は全然得られていません.代数的な見方ができればよいのかも...
分配法則同様,結合法則の補正項についても考えてみました.
任意の
(ただし,
補正項としてありうるパターンは上の9個だけという予想です.
結合法則は実験してもなかなか法則性がつかめません.クラス1,2という道具だけでは足りないようです.さらに実験をおこなうために,以下の概念を導入しました.
正整数
実験によると,先頭誤差としてありえる数は
を満たすような自然数
なお,
(クラスA,Bという名前は私が考えたのですが,ダサいと言われたので(略)
これ面白くないですか!!?かなり非自明な予想です.
クラスA,Bを用いると,結合法則の必要条件を与えることができます.
組
組
なら
組
なら
いずれも十分条件ではないことに注意してください.
以上が私とT,Sが得た結果です.ほとんど予想ですが...証明のめどは立ってないです.なにかアイデアあればぜひ教えてください.Knuthが論文を出して以来,結合法則に関しては類似の演算がたくさん見つかっていますが,単位元の存在するような演算についてはあまり調べられていないのではないでしょうか.また,フィボナッチ数以外の線形漸化式についても同様に単位的な演算を考えることができるので,そちらも気になる所です.
誤植指摘等よろしくお願いいたします.ここまで読んで下さりありがとうございました.また,助言を下さった友人のFに感謝いたします.