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大学数学基礎解説
文献あり

開円盤の閉包が開集合に含まれていたら,ちょっとだけ大きな開円盤もまた含まれるという話

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$$\newcommand{Cbb}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{Ge}[0]{\varepsilon} \newcommand{GO}[0]{\Omega} \newcommand{ol}[1]{\overline{#1}} \newcommand{Rbb}[0]{\mathbb{R}} $$

示したいこと.

$\GO\subset \Cbb$を開集合,$c\in \GO$$R>0$に対して$B=B(c,R)$とおいて,$\ol{B}\subset \GO$とする.このときある正の実数$\Ge$が存在して$B(c,R+\Ge)\subset \GO$となる.

 ここで$B(c,R)=\{z\in \Cbb\mid |c-z|< R\}$と定めている.これを点$c$を中心とする半径$R$の開円盤と呼んだりする.
 今回は$\Cbb$で考えているけれど,証明を見れば分かるように$\Rbb^n$とかでも成り立つ.距離空間とかまで一般化できたら気持ちいいだろうな~~~.

方針

 閉円盤$\ol{B}$と開集合の境界$\partial \GO$の間がちょっと開いてるね、っていうのが今回の主張だから,$\ol{B}$$\partial \GO$の距離を測りたい.それが$0$にならないことを示せばあとは何とでもなりそう.

準備

 距離空間$(X,d)$に対して,一点$x\in X$$X$の部分集合$A$の間の距離$d(x,A)$を次式で定義する(定義は内田集合位相のp61による).
\begin{align*} d(x,A)=\inf \{d(x,a)\mid a\in A\} \end{align*}

 注意として,$d(x,A)=0$であることと次の二つの条件を満たすことと同値.

  1. 任意の$a\in A$に対して$0\leq d(x,a)$となる.
  2. 任意の正の実数$\Ge>0$に対してある$a\in A$が存在して$d(x,a)<\Ge$となる.

 1.に関しては距離関数の正値性から常に成り立つから,2.が成り立つことが重要.例えば$x\in A$だったら当たり前だし,もう少し広げて$A$$\Rbb^n$の開球として$x$をその触点とすれば,$x$を中心とする任意の開球は$A$と共通部分を持つから,この場合でも2.が成り立つ.これは逆も然りで,したがって次が成り立つ.

$(X,d)$を距離空間,$A\subset X$$X$の空でない部分集合とする.このとき$x$$A$の触点,つまり任意の$\Ge>0$に対して$B(x,\Ge)\cap A\not= \emptyset$であることと$d(x,A)=0$となることは同値.

 思ったんだけど,最初に作った証明よりずっと簡単に示せそうな気がしてきた.

証明

命題1の証明(前半)

任意の$x\in \ol{B}$に対して$d(x,\GO^c)>0$である.実際もし$0$なら$x$$\GO^c$の触点だが$\GO^c$は閉集合だから$x\in \GO^c$となる.一方で$x\in \GO$だからこれは矛盾.「するとある正の実数$\Ge$であって$d(x,\GO^c)>\Ge>0$となるものが取れる」(コメント欄を見て).

 最初は$d(-,\GO^c)\colon \ol{B}\to \Rbb,x\mapsto d(x,\GO^c)$が連続写像で$\ol{B}$がコンパクトだから$d(-,\GO^c)$は最小値を持って,この最小値が$0$じゃないことを示してた.難しいこと考えられて偉いね~.

 はい.

命題1の証明(後半)

 この$\Ge$に対して$B(c,R+\Ge)\subset \GO$が成り立つ.実際,もし$y\in B(c,R+\Ge)$であって$y\not\in \GO$となるものが存在すると仮定すると,$y\in \GO^c$となるので,$c$から$y$への線分を考えると,$R< d(c,y)$となるからこの線分は必ず$\partial \ol{D}$の一点$x$を通る.すると$d(c,y)=d(c,x)+d(x,y)$が成り立つ.また
\begin{align*} \Ge< d(x,\GO^c)=\inf \{d(x,z)\mid z\in \GO^c\}\leq d(x,y) \end{align*}
が成り立つから
\begin{align*} R+\Ge< R+d(x,y)=d(c,x)+d(x,y)=d(c,y) \end{align*}
となるので,$y\not\in D(c,R+\Ge)$が成り立ってしまいこれは矛盾.したがって$D(c,R+\Ge)\subset \GO$となる.

 お絵描きしながら考えたら何やってるかも分かるから,まぁ良さそう.

 強調した部分を補完しておく.例えば$\Rbb^2$でお絵描きすれば明らかだけど. 点$c$から$y$への線分は次式で表される:$\varphi(t)=ct+(1-t)y\ (t\in [0,1])$.また$z=c$から$z=\varphi(s)\ (s\in [0,1])$までの長さ$\varPhi(s)$$\displaystyle\int_0^s |\varphi'(t)|dt$で表されて,これも連続関数.$\varPhi(0)=0,\varPhi(1)=d(c,y)>R$となるから中間値の定理を用いればよい.またこのような点は$\varPhi(s)$が単調増加であることからただ一つしかないことも分かる.

一般化への方針.

 前半は良さそう~.つまり次が成り立つ.

$(X,d)$を距離空間とし,開集合$\GO\subset X$をとる.また点$c\in X$と正の実数$R\in \Rbb_{>0}$をとり,$ \ol{B(c,R)}\subset \GO$であるとする.このとき任意の$x\in \ol{B(c,R)}$に対して$d(x,\GO^c)>0$となる.

 距離空間だと開球の閉包は必ずしもコンパクトにはならない(らしい.友人に聞いた.関数解析の人だしたぶん無限次元ヒルベルト空間の閉球とかがそういう例になってる気がする.関数解析やった方がよさそう)から,簡単に示せてよかった~って感じ.コンパクト性はこの問題ではそんな重要じゃなさそうというのが所感.

 後半は線分を取って議論してるから,距離空間$(X,d)$を例えば凸空間に限定するとか,あるいは開集合の方に制限をつける(これは友人の案)とかすれば良さそう。また何か思いついたら追記しようかなぁ.

参考文献

[1]
内田 伏一, 集合と位相
投稿日:216
更新日:217
OptHub AI Competition

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