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大学数学基礎解説
文献あり

Feynman's trickについて

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今回初めて記事を書きます。
最近, 積分の中に偏微分を登場させて計算するテクニックを学び, 調べてみると名前がついていたので, 備忘録がわりに紹介したいと思います。
誤っているところなどあったら教えていただけると嬉しいです。

問題

いきなりですが, 次の積分を考えて見ましょう。

01x1logxdx

分母に対数があるため, 不定積分を求めるのは難しそうです。
そこで, 積分に次のようなパラメータtを導入してみようと思います。

I(t)=01xt1logxdx

すると, 求める積分値はI(1)です。
I(t)を微分してみると,
I(t)=t01xt1logxdx=01txt1logxdx=01xtdx=11+t
となります。
また, I(0)=0であることもわかります。これで準備が整いました!

計算する

I(1)=[I(t)]01=01I(t)dt=[log(t+1)]01=log2

以上より,
01x1logxdx=log2
とわかりました!

Feynman's trick

前節の問題が解けたのは, 非積分関数にパラメータtを導入すると, そのtに関する偏微分が積分しやすい(できる)関数になったことがポイントでした。一般に, このような積分の計算方法をFeynman's trickというようです。
この計算ができることは, 次の定理によって保証されています(証明は省略しますし, 上の積分は広義積分になっていますが見なかったことにします)。

偏微分と積分の順序交換

f(x, y)yに関して偏微分可能で, その偏導関数も連続ならば,
yabf(x, y)dx=abyf(x, y)dx
が成り立つ。

他にも計算してみる

次は, ディリクレ積分と呼ばれる有名な積分です。

0sinxxdx=π2

I(t)=0etxsinxxdx
とおくと, 求める積分はI(0)である。
I(t)=0etxsinxdx=11+t2
である。また, limtI(t)=0より,
I(0)=[I(t)]0=011+t2=π2
以上より,
0sinxxdx=π2
である。

3行目は, sinxのラプラス変換を知っていると楽に計算できますね。
パラメータtがそのまま登場するわけではないので思いつくのは難しいですが, うまくいきました。次の注意が示すように, パラメータの取り方はなんでもいいわけではありません。

J(t)=0sintxxdx
とおく。
J(t)=0costxdx
となるが, この積分は発散する。

繰り返しになりますが, tに関する偏微分が積分しやすい(できる)関数になったことがポイントです。

他にも例を書きたかったのですが, 簡単に計算できるものが思いつかなかったので終わります。この方法が効く積分を, コメントで教えていただけるとすごく喜びます!
ここまで読んでいただいてありがとうございました。

参考文献

投稿日:2023716
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