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大学数学基礎解説
文献あり

Serre, Treeの演習問題

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SerreのTree1の演習問題をやってみた.

Tree, Amalgams

Amalgams

Direct limits

Exercise 1

$f_1:A \to G_1, f_2 : A \to G_2$を準同型とし, $G=G_1 *_A G_2$を対応するamalgamとする.
$A, G_1, G_2$のsubgroups $A^n, G_1^n, G_2^n$を次のように定める:
$A^1=\{1 \}, G_1^1= \{1 \}, G_2^1= \{ 1\},$
$A^n$$f_1^{-1}(G_1^{n-1})$$f_2^{-1}(G_2^{n-1})$で生成される$A$の部分群,
$G_i^n$$f_i(A^n)$で生成される$G_i$正規部分群.
$A^\infty=\cup A^n, G_i^\infty=\cup G_i^n$とおく.
このとき, $f_i$は単射$A/A^\infty \to G_i/G_i^\infty$を誘導し, $G$$G_1/G_1^\infty$$G_2/G_2^\infty$$A/A^\infty$に沿ったamalgamであることを示せ.
また, 自然な写像$A \to G, G_i \to G$の核は$A^\infty, G_i^\infty$であることを示せ.

1では「正規」が抜けている.

$A^{n} \subset A^{n+1}, G_i^n \subset G_i^{n+1}\ (\forall n \geq 1)$であり, 各$A^n, G_i^n$$A, G_i$の正規部分群であるから, $A^\infty, G_i ^\infty$$A,G_i$の正規部分群であることに注意する.
$f_i(A^n)\subset G_i^n \subset G_i^\infty \ (\forall n)$であるから, $f_i$は準同型$\bar{f}_i : A/A^\infty \to G_i/G_i^\infty$を誘導する. これが単射であることを示そう.
任意に$a \in A$をとる. $f_i(a) \in G_i^n$と仮定すると, $a \in f_i^{-1}(G_i^n)\subset A^{n+1}\subset A^\infty$. これで$\bar{f}_i$の単射性が示された.
自然な射影$A \to A/A^\infty, G_i \to G_i/G_i^\infty$は自然な準同型$p:G=G_1 *_A G_2 \to \bar{G}:=(G_1/G_1^\infty) *_{(A/A^\infty)} (G_2/G_2^\infty)$を誘導し, direct limitの構成から(生成元を考えれば)全射である.
これが同型であることを示すには, 次を示せばよい;

  • $H$と準同型$h:A \to H, g_i : G_i \to H$$h=g_i \circ f_i$を満たすものが与えられた時, 準同型$\bar{h}: A/A^\infty \to H, \bar{g}_i:G_i/G_i^\infty \to H$が誘導され, $\bar{h}=\bar{g}_i\circ \bar{f}_i$を満たす.

なぜなら, 上の主張が示されたとすると, $p$が誘導する自然な射$p^*:\operatorname{Hom}(\bar{G},H) \to \operatorname{Hom}(G,H)$は(direct limitの定義から)全射であることが分かるが, $p$の全射性から$p^*$は単射であるので, $p^*$は全単射となり, 表現関手の一意性から$p$が同型であることが従う.
さて, 上の主張を証明しよう.
$H$と準同型$h:A \to H, g_i : G_i \to H$$h=g_i \circ f_i$を満たすものが与えられたとする.
$\bar{h}, \bar{g}_i$が誘導されることを示せば, $\bar{h}=\bar{g}_i\circ \bar{f}_i$が成り立つことは明らかである.
したがって, 以下では$h(A^n)=\{1\}, g_i(G_i^n)=\{ 1\}$$n$に関する帰納法で示す. (これが示されたら証明は完了する)
ある$n\geq 1$に対して$h(A^n)=\{1\}, g_i(G_i^n)=\{ 1\}$が示されたとする.
$h(f_i^{-1}(G_i^n))=g_i(f_i(f_i^{-1}(G_i^n)))\subset g_i(G_i^n)=\{1\}$より$h(A^{n+1})=\{1\}$を得る.
また, $g_i(f_i(A^{n+1}))=h(A^{n+1})=\{1\}$であるので, $f_i(A^{n+1})\subset \ker (g_i)$. $\ker(g_i)$は正規部分群であるから, $G_i^{n+1}$の最小性から$G_i^{n+1} \subset \ker(g_i)$, すなわち$g_i(G_i^{n+1})=\{1\}$. これで示された.

自然な準同型$A \to G, G_i \to G$$A/A^\infty \to G, G_i/G_i^\infty \to G$を経由し, 1Theorem 1の結果からこれらは単射であるから, $A \to G, G_i \to G$の核はそれぞれ$A^\infty, G_i^\infty$であることが従う.

Exercise 2

$A=\mathbb{Z}$, $G_1 = \operatorname{PSL}(2,\mathbb{Q}), G_2= \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$とする.
$f_1:A\to G_1$を単射, $f_2: A \to G_2$を全射とする.
このとき, $G_1*_A G_2 = \{1 \}$を示せ.

$G_1=\operatorname{PSL}(2,\mathbb{Q})$ 単純群 である.

問題1の記号を用いる. 全射$f_2: \mathbb{Z}\to \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$は自然な射影しかないことに注意する.
$f_1$は単射だから, $A^2=\ker (f_2)=2\mathbb{Z}$, $G_1^2=\textrm{normal subgroup generated by }f_1(2\mathbb{Z})(\neq 1)=G_1, G_2^2=\{ 0\}$.
また, $f_1^{-1}(G_1^2)=f_1^{-1}(G_1)=\mathbb{Z}, f_2^{-1}(G_2^2)=2\mathbb{Z}$より$A^3=\mathbb{Z}$.
よって$G_1^3=G_1, G_2^3=G_2$.
したがって$A^\infty=A, G_1^\infty=G_1, G_2^\infty=G_2$を得る.
ゆえに問題1の結果から, $G_1 *_A G_2$$2$つの自明な準同型$f_1, f_2: \{1 \} \to \{1\}$のamalgamに同型で, これは明らかに自明$\{1 \}$である.

Amalgamsの構造定理の帰結

$i \in I$ に対して単射$A \to G_i$が与えられているとする.

p.8 Exercise 1

$g,h \in *_A G_i$をlength $n,m$とし, type $(i_1,\dots, i_n),(j_1,\dots, j_m)$ とする. この時, $l(gh)\leq n+m$であること, また, 等号が成り立つ必要十分は$i_n \neq j_1$であることを示せ.
また, そのとき, $gh$のtypeは$(i_1,\dots, i_n,j_1,\dots, j_m) $であることを示せ.

$n$に関する帰納法で示す.
$n=0$のとき$l(gh)=m$であることは明らか.
$n\geq 1$とする. $g=g_1 \cdots g_n, g_k \in G_{i_k}'$の形にかく. 帰納法の仮定から$l(g_2\cdots g_n h)\leq (n-1)+m$である.
$g_2\cdots g_n h$のtypeが$(l_1,\dots,l_k)$ ($k=l(g_2\cdots g_n h)$)とする. $i_1 \neq l_1$ならば$g_1 (g_2\cdots g_n h)$のtypeは$(i_1, l_1,\dots,l_k)$であるから, $l(gh)= 1+k \leq n+m$. $i_1=l_1$ならば$gh=g_1(g_2\cdots g_n h)$のtypeは$( l_1,\dots,l_k)$または$(l_2,\dots,l_k)$であるので, $l(gh)\leq k < n+m$.

$i_n \neq j_1$ならば$gh$のtypeが$(i_1,\dots, i_n,j_1,\dots, j_m) $で等号が成り立つことは, reduced decompositionから明らか
$i_n=j_1$のとき, $g,h$の分解を考えると, $g_n h_1 \in A$のとき$l(gh)=n+m-2$, $g_nh_1\in G_{i_n}-A$のとき$l(gh)=n+m-1$である.

p.8 Exercise 2

$H$$G=*_A G_i$の部分群とし, $AH=G$と仮定する.
$B=A \cap H$, $H_i =G_i \cap H$とおく.
このとき, $H$$H_i$で生成されていることを示せ.
したがって, $H$$*_B H_i$と同一視できる.

後半の主張は, 単射$*_B H_i \to *_A G_i$の存在と, その像が$H_i$で生成される部分群であることから分かる.
前半の主張を示そう.
$H_i$で生成される$G$の部分群を$K$とすると$K \subset H$が成り立つ.
逆の包含関係$K \supset H$を示す.
$h \in H$を任意の元とする.
長さ$l(h)=0$のとき, $h \in A$である. よって$h\in A \cap H \subset G_i \cap H=H_i$であるから, $h \in K$.
長さ$l(h)=1$のとき, ある$i \in I$が存在して, $h=g_i$, $g_i \in G_i -A$. よって$h =g_i \in G_i \cap H =H_i$なので$h \in K$.

$l(h)$に関する帰納法. $n=l(h) \geq 2$と仮定し, $h$のtypeを$(i_1,\dots, i_n)$とする.
このとき, $h=g_1\cdots g_n$.
$g_n \in G=AH$より, $g_n =ah_n, a \in A, h_n \in H$とかける.
よって$h h_n^{-1}=g_1\cdots (g_{n-1}a) \in H$は長さ$n-1$なので, 帰納法の仮定から$h h_n^{-1}\in K$.
一方で$a^{-1}g_n = h_n \in G_{i_n}\cap H =H_{i_n}\subset K$であるので, $h=(hh_n^{-1})h_n \in K$.

$G_1=\langle x_1, x_2 \mid x_2 x_1 x_2^{-1}=x_1^2 \rangle$, $G_2 = \mathbb{Z}\left[\dfrac{1}{2} \right] \rtimes \mathbb{Z}$とおく. ここで, $\mathbb{Z}$の作用は$n \mapsto 2n$である.
このとき, $G_1 \cong G_2$であることを示そう.
$f:G_1\to G_2$$x_1 \mapsto (1,0)$, $x_2 \mapsto (0,1)$で定めることができる.
一方, $g:G_2 \to G_1$が次のように定義される.
$\dfrac{m}{2^n}\in \mathbb{Z}\left[\dfrac{1}{2} \right]$に対し, $x_2^{-n} x_1^mx_2^n$を対応させるmapを$g_1$とする. $ \dfrac{m}{2^n}=\dfrac{m'}{2^{n'}}$のとき, $2^{n'}m=2^n m'$なので, $n \geq n'$と仮定すると$m=2^{n-n'}m'$である. よって,
$x_2^{-n} x_1^mx_2^n=x_2^{-n} x_1^{2^{n-n'}m'}x_2^n=x_2^{-n}x_2^{n-n'}x_1^{m'}x_2^{-n+n'}x_2^n = x_2^{-n'}x_1^{m'}x_2^{n'}$.
ゆえに$g_1$はwell-definedな群準同型である.
また, $g_2:\mathbb{Z}\to G_1$$1 \mapsto x_2$で定める.
このとき,
$g_2(n')g_1(m/2^n)g_2(n')^{-1}=x_2^{n'}x_2^{-n} x_1^mx_2^n x_2^{-n'}=x_2^{-(n-n')}x_1^m x_2^{n-n'}=g_1(m/2^{n-n'})=g_1(n' \cdot (m/2^n))$
より, $g_1, g_2$$g : G_2 \to G_1$を誘導する.
$g_1,g_2$は互いに逆であることが明らかなので, $g_1,g_2$は同型写像である.

p10 Excercise 1

関係式
$$ x_2 x_1x_2^{-1}=x_1^2, x_3 x_2x_3^{-1}=x_2^2, x_1 x_3x_1^{-1}=x_3^2$$
で定義される群は自明群である.

分からなかった. 調べたところ Mathematics Stack Exchange で質問されていた.

p12 Excercise 1

問題文省略

Iharaの結果より特に$ \Gamma = \operatorname{SL}_2(\mathbb{Z}_{(p)})$, $A=\left\{\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \in \Gamma : c \equiv 0 \mod p \right\}$とおくと, $\operatorname{SL}_2(\mathbb{Q})\cong \Gamma *_A \Gamma$.
$H:=\operatorname{SL}_2(\mathbb{Z}[1/p])\subset \operatorname{SL}_2(\mathbb{Q})$とおく.

Claim: $AH=\operatorname{SL}_2(\mathbb{Q})$.
$X=\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \in \operatorname{SL}_2(\mathbb{Q})$を任意にとる. $v_p$$p$進付値とする.
$ad-bc=1$であるので, $a,b$のうち少なくとも一つは$0$でない. 必要なら$X$に右から$\begin{pmatrix} 0 & 1 \\ -1 & 0 \end{pmatrix} \in H$をかけることで$a \neq 0$であると仮定してよい.
また, 適当な$p$のべき$x \in \mathbb{Z}[1/p]$に対して$X$の右から$\begin{pmatrix} x & 0 \\ 0 & x^{-1} \end{pmatrix} \in H$をかけることで, $a \in \mathbb{Z}_{(p)}^\times$と仮定してよい.
さらに, 左から$\begin{pmatrix} a^{-1} & 0 \\ 0 & a \end{pmatrix} \in A$をかけることで$a=1$と仮定してよい.
$v_p(b)<0$と仮定する. このとき, ある$x \in \mathbb{Z}[1/p]$があって, $v_p(b+x)\geq 0$が成り立つ. したがって, 必要であれば$X$に右から$\begin{pmatrix} 1 & x \\ 0 & 1 \end{pmatrix} \in H$をかけることで$v_p(b)\geq 0$であると仮定してよい.
$v_p(c)>0$ならば, $d=1+bc\in \mathbb{Z}_{(p)}^\times$より$X=\begin{pmatrix} 1 & b \\ c & d \end{pmatrix}\in A$となってclaimの証明が終わる. よって以下では$v_p(c)<0$と仮定する.
$v_p(c)<0$のとき, $X$の左から$\begin{pmatrix}1 & -c^{-1} \\ 0 & 1 \end{pmatrix} \in A$をかけると, $\begin{pmatrix}1 & -c^{-1} \\ 0 & 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix}1 & b \\ c & d \end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0 & * \\ c & d \end{pmatrix}$の形になる. この右から$\begin{pmatrix} 0 & 1 \\ -1 & 0 \end{pmatrix} \in H$をかけ, さらに最初の議論をもう一度繰り返すことで, $X=\begin{pmatrix}1 & 0 \\ c & 1 \end{pmatrix}$ $(c \in \mathbb{Q})$の形になっていると仮定してよい. $v_p(c)>0$なら$X\in A$なので証明が終わる. $v_p(c)\leq 0$のとき, $c=\dfrac{n}{mp^e}$, $m,n$は互いに素な整数で, それぞれ$p$と互いに素であり, $e \geq 0$, の形に表す. $1=mx+p^{e+1}y$となる整数$x,y$をとれば, $c=\dfrac{n}{mp^e}=\dfrac{nx}{p^e}+\dfrac{pny}{m}$で, $\dfrac{nx}{p^e} \in \mathbb{Z}[1/p]$, $ \dfrac{pny}{m}\in p\mathbb{Z}_{(p)}$であり, $X=\begin{pmatrix}1 & 0 \\ c & 1 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1 & 0 \\ pny/m & 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix}1 & 0 \\ nx/p^e & 1 \end{pmatrix}\in AH$.
(Claimの証明終わり)

明らかに$\Gamma \cap H=\operatorname{SL}_2(\mathbb{Z})$であり, $A \cap H =\left\{\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \in \operatorname{SL}_2(\mathbb{Z}) : c \equiv 0 \mod p \right\}=\Gamma_0(p)$である.
よってp8 Exercise 2の結果から$H=\operatorname{SL}_2(\mathbb{Z}) *_{\Gamma_0(p)} \operatorname{SL}_2(\mathbb{Z})$.

参考文献

[1]
Jean-Pierre Serre, Trees, Springer Monographs in Mathematics, Springer
投稿日:82
OptHub AI Competition

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投稿者

代数学が好きです。ゆるく数学を歩いていきます。

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