$K$を完備な非アルキメデス付値体とする。そして$L$を$K$の有限拡大とする。このとき非アルキメデス絶対値$|\cdot|:K\to\mathbb{R}_{\geq0}$は非アルキメデス絶対値$|\cdot|_L:L\to\mathbb{R}_{\geq0}$に一意的に拡張する。これにより$L$は完備な非アルキメデス付値体になる。
初めに拡張の存在を示す。まず$L/K$はガロア拡大として良い。$x\in L$を取り、
$$
|x|_L:=\left|\prod_{\sigma\in\mathrm{Gal}(L/K)}\sigma(x)\right|^{\frac{1}{[L:K]}}
$$
と置く。また$x,y\in L$に対して
$$
\begin{split}
|xy|_L&:=\left|\prod_{\sigma\in\mathrm{Gal}(L/K)}\sigma(xy)\right|^{\frac{1}{[L:K]}}\\
&=\left|\prod_{\sigma\in\mathrm{Gal}(L/K)}\sigma(x)\right|^{\frac{1}{[L:K]}}\left|\prod_{\sigma\in\mathrm{Gal}(L/K)}\sigma(y)\right|^{\frac{1}{[L:K]}}\\
&=|x|_L|y|_L\\
\end{split}
$$
が従う。また$\mathrm{Gal}(L/K)$の元を$\{\sigma_{1},\cdots,\sigma_{[L:K]}\}$とナンバリングすると
$$
\begin{split}
|x+y|_L&:=\left|\prod_{\sigma\in\mathrm{Gal}(L/K)}\sigma(x+y)\right|^{\frac{1}{[L:K]}}\\
&=\left|\left(\sigma_1(x)+\sigma_1(y)\right)\cdots\left(\sigma_{[L:K]}(x)+\sigma_{[L:K]}(y)\right)\right|^{\frac{1}{[L:K]}}\\
&=\max\{|x|_L,|y|_L\}
\end{split}
$$
である。$x=0$と$|x|=0$の同値性と$|\cdot|$の$K$への制限が元の非アルキメデス絶対値に等しいことは$|\cdot|_L:L\to\mathbb{R}_{\geq0}$の定義よりすぐに従う。以上から$L$への拡張の存在が分かった。
次に拡張の一意性を示す。$L$に二つの拡張$|\cdot|_1,|\cdot|_2$が取れたとすると、これらは次の補題の条件(i)(ii)(iii)を満たしているから、補題より$|\cdot|_1,|\cdot|_2$は$L$に対して同じ位相を定めている。よって更に次の補題から任意の$x\in L$に対して
$$
|x|_1^r=|x|_2
$$
であるような$r$が存在することがわかる。ここで$K$の絶対値は非自明であったから、これにより$r=1$が従う。
最後に拡張した$|\cdot|_L$が完備であることを示す。$L$の$K$上の基底を取りそれによって$L$上のノルム$\|\cdot\|_\infty$を定めると、補題から$|\cdot|_L$と$\|\cdot\|_\infty$は同じ位相を定めている。後者の定める位相は$K$の有限直積位相(特に完備)であるから、$|\cdot|_L$の完備性が従う。
$K$を完備な非アルキメデス付値体とする。有限次元$K$線型空間$V$には二つのノルム$\|\cdot\|_1,\|\cdot\|_2:V\to\mathbb{R}_{\geq0}$が入っていて、これらは共に
であるとする。このとき任意の$x\in V$に対して
$$
A\|x\|_1\leq\|x\|_2\leq B\|x\|_1
$$
が成り立つような正定数$A,B\in\mathbb{R}$が存在する。特に$\|\cdot\|_1$及び$\|\cdot\|_2$は$V$に同じ位相を定めている。
$\dim V$に関する帰納法で示す。$\dim V=1$の場合示すことは何もない。次に次元$< N$の場合に成り立つことを仮定して$\dim V=N$に成り立つことを示す。まず$V$の基底$x_1,\cdots,x_N$を取り、$V_m$をこの基底のうち$x_m$以外で生成される$N-1$次元$K$線型空間とする。ここで写像$\|\cdot\|_\infty:V\to\mathbb{R}_{\geq0}$を
$$
\left\|\sum_{n=1}^{N}a_nx_n\right\|_\infty:=\max\{|a_n|\}_{n=1}^N
$$
で定義する。これは上の条件(i)(ii)(iii)を満たしている。ここで帰納法の仮定から$\|\cdot\|_1,\|\cdot\|_2,\|\cdot\|_\infty$は各$V_m$に対して同じ位相を定め、よってこの位相は完備位相である。特に各$V_n$は$V$の閉部分集合である。特に
$$
x_m+V_m:=\{x_m+a|a\in V_m\}
$$
も$V$の閉部分集合である。また$0\notin x_m+V_m$である。これによって充分小さい$\delta_1>0$をとれば
$$
(x_m+V_m)\cap\{x\in V|\|x\|_1<\delta_1\}=\varnothing
$$
が満たされている。いま
$$
A_1:=\min\{\delta_n\}_{n=1}^N
$$
$$
B_1:=\sum_{n=1}^N\|x_n\|_1
$$
と置く。このとき任意に取った$x=\sum_{n=1}^Na_nx_n\in V$に対して
$$
A_1\leq \delta_n\leq \|x_m^{-1}x\|_1=\frac{\|x\|_1}{|x_m|}
$$
であるから、これにより任意の$x\in V$に対して
$$
A_1\|x\|_\infty\leq \|x\|_1\leq B_1\|x\|_\infty
$$
が従う。同様にして任意の$x\in V$に対して
$$
A_2\|x\|_\infty\leq \|x\|_2\leq B_2\|x\|_\infty
$$
であるような正定数$A_1,B_2$も存在する。$A=\frac{A_2}{B_1}$及び$B=\frac{B_2}{A_1}$と置けば、ここまでの議論から、任意の$x\in V$に対して
$$
A\|x\|_1\leq \|x\|_2\leq B\|x\|_1
$$
が成り立っていることがわかる。
体$k$上のノルム$|\cdot|_1,|\cdot|_2$について以下の条件は同値である。
初めに(i)から(ii)を示す。$i=1,2$に対して
$$
U_i:=\{x\in k||x|_i<1\}
$$
とおく。$x\in U_1$を任意にとる。このとき点列$\{x^n\}_{n=0}^\infty$は$0$に収束する。ここで$U_2$は、(i)を考慮すると、$|\cdot|_1$の定める位相の下で$0$の開近傍なので、充分大きな$n$に対して$x^n\in U_2$であり、このとき
$$
|x|_2=\left(|x|_2^n\right)^{\frac{1}{n}}<1
$$
つまり$x\in U_2$であることが従う。以上から$U_1\subseteq U_2$が示た。また$1,2$を入れ替えれば$U_2\subseteq U_1$も示せるから、(ii)が従う。
次に(ii)から(iii)を示す。自明ノルムの場合はすぐに示せるから、$\|\cdot\|_1,\|\cdot\|_2$は共に非自明なノルムとする。このとき$0<|y|_1<1$なる$y\in k$が取れる。このとき(ii)より$0<|y|_2<1$も成り立っている。これにより
$$
r:=\frac{\log|y|_1}{\log|y|_2}
$$
は正実数である。以下任意の$x\in k$に対して$|x|_1^r=|x|_2$であることを背理法で示していく。この等式を満たさない$x$が存在すると仮定する。必要であれば逆数を取ることで
$$
|x|_1^r<|x|_2
$$
となるように取ることができる。ここで写像$\mathbb{Q}\to \mathbb{R}_{\geq0}$を$q\mapsto|y|_2^q$で定義したとき、この写像の像は$\mathbb{R}_{\geq0}$に於いて稠密なので、特に
$$
|x|_1^r<|y|_1^r=|y|_2^q<|x|_2
$$
を満たすような$q\in\mathbb{Q}$が存在する。$q=\frac{s}{t}$を既約分数表示とする。このとき
$$
\left|\frac{x^t}{y^s}\right|_1<1
$$
$$
1<\left|\frac{x^t}{y^s}\right|_2
$$
が同時に従い(ii)に矛盾する。よって(iii)が従う。
(iii)から(i)は位相の定義からすぐに従う。
以上から(i)(ii)(iii)は同値である。
$K$を完備な非アルキメデス付値体とする。そして$\overline{K}$を$K$の代数閉包とする。このとき非アルキメデス絶対値$|\cdot|:K\to\mathbb{R}_{\geq0}$は非アルキメデス絶対値$|\cdot|_\overline{K}:\overline{K}\to\mathbb{R}_{\geq0}$に一意的に拡張する。これにより$L$は非アルキメデス付値体になるが、一般には完備ではない。
$|\cdot|$は$K$の有限拡大上に一意的に拡張でき、かつその拡張は一意的であった。よって、$\overline{K}$が$K$の有限拡大たちの和集合であることを考慮すれば、$|\cdot|$の拡張可能性・一意性・非アルキメデス性が示せる。
最後に完備ではない例を挙げることで、一般には完備でないことを示す。$\mathbb{Q}$の元$q$が素数$p$及びそれと互いに素な整数$m,n$、そして整数$v$を用いて$q=\frac{m}{n}p^v$と表せるとき、$v$を$q$の$p$進付値と呼ぶ。ここで$\mathbb{Q}$のノルム$|\cdot|_p:\mathbb{Q}\to\mathbb{R}_{\geq0}$を
$$
|q|_p:=e^{-v}
$$
で定める。このノルムに関する$\mathbb{Q}$の完備化を${\color{red}\mathbb{Q}_p}$と表記する。このときノルム$|\cdot|_p:\mathbb{Q}_p\to\mathbb{R}_{\geq0}$の像は自然対数の整数乗で表される実数全体$e^\mathbb{Z}$であるから、拡張$|\cdot|_p:\overline{\mathbb{Q}}_p\to\mathbb{R}_{\geq0}$の像は自然対数の有理数乗で表される実数全体$e^\mathbb{Q}$であり、これは$\mathbb{R}_{\geq0}$に於いて稠密である。ここで点列$\{x_n\}_{n=1}^\infty$を$\log|x_n|=\frac{[10^n\pi]}{10^n}$であるように取ると、これは$\overline{\mathbb{Q}}_p$のコーシー列である一方収束はしない。よってこれが所望の例になっている。
$K$が完備でない場合、非アルキメデス付値を上のようにして有限拡大に拡張することはできますが、その一意性は成り立ちません。実際$\mathbb{Q}$の$5$進ノルム$|\cdot|_5$を考えます。そして$L=\mathbb{Q}(i)$とします。このとき$a=1,2$に対して$q\in\mathbb{Q}(i)$の$(2+(-1)^ai)$進付値を$2+(-1)^ai$と互いに素なガウス整数$m,n$と有理整数$v$を用いて$q=\frac{m}{n}(2+(-1)^ai)^v$と表せるときの$v$として定義し、
$$
|q|_a:=e^{-v}
$$
と定義します。このとき$|\cdot|_a$は共に$\mathbb{Q}$に於いて$|\cdot|_5$になる一方で
$$
|2+i|_1=1
$$
$$
|2-i|_1=\frac{1}{e}
$$
$$
|2+i|_2=\frac{1}{e}
$$
$$
|2-i|_2=1
$$
なので一致しません。$K=\mathbb{Q}_5$とした場合、実はヘンゼルの補題から$i\in\mathbb{Q}_5$なので、上のような問題は起きません。計算してみると、$X^2+1$の根のうち$i$を$5|i-2$であるように取るか$5|i+2$であるように取るかで拡張の表示は変わりますが、上で示した通り拡張自体は一意に定まります。まとめた言い方をすると、$\mathbb{Q}_5(i)=\mathbb{Q}_5$に於ける$5$進付値は一意だが、埋め込み$\mathbb{Q}(i)\subseteq\mathbb{Q}_5$が複数あるせいで、$\mathbb{Q}(i)$への拡張が一意に定まらないということです。