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現代数学解説
文献あり

sn関数の累乗に関するヤコビの公式

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はじめに

 この記事ではヤコビの発見した
(2kKπ)3sn3u=2n=1((1+k2)(2Kπ)2(2n1)2)qn121q2n1sin(2n1)v
のような公式について解説していきます。

snnu(snu)(m)との関係

d2du2snnu=n(n1)snn2un2(1+k2)snnu+n(n+1)k2snn+2u

 簡単のためx=snuとおくと
dxdu=(1x2)(1k2x2)
より
dduxn=nxn1(1x2)(1k2x2)d2du2xn=n(n1)xn2(1x2)(1k2x2)nxn((1k2x2)+k2(1x2)) =n(n1)xn2n2(1+k2)xn+n(n+1)k2xn+2
を得る。

 あるk2についてのm次多項式An(m),Bn(m)(ただしBn(n)n2次多項式)が存在して
(ksnu)2n+1=1(2n)!m=0nAn(nm)d2mdu2mksnu(ksnu)2n=1(2n1)!m=1nBn(nm)d2m2du2m2k2sn2u+k2Bn(n)(2n1)!1sn2n+1u=1(2n)!m=0nAn(nm)d2mdu2m1snu1sn2nu=1(2n1)!m=1nBn(nm)d2m2du2m21sn2u+k2Bn(n)(2n1)!
が成り立つ。特にAn(m),Bn(m)は漸化式
An(m)=An1(m)+(2n1)2(1+k2)An1(m1)(2n2)2(2n1)(2n3)k2An2(m2)Bn(m)=Bn1(m)+(2n2)2(1+k2)Bn1(m1)(2n3)2(2n2)(2n4)k2Bn2(m2)
を満たす。

 (ksnu)nの場合についてはn=1,2の場合は明らかであり
n(n+1)k2snn+2u=d2du2snnu+n2(1+k2)snnun(n1)snn2u
に注意するとわかる。
 また1/snnuの場合については
sn(u+iK)=1ksnu
に注意すると(ksnu)nの場合の系として導ける。

具体例

 以下の具体例はJaocbi(1829)によるものである。
2!k2sn3u=d2du2snu+(1+k2)snu4!k4sn5u=d4du4snu+10(1+k2)d2du2snu+3(3+2k2+3k4)snu6!k6sn7u=d6du6snu+35(1+k2)d4du4snu+7(37+38k2+37k4)d2du2snu+45(5+3k2+3k4+5k6)snu8!k8sn9u=d8du8snu+84(1+k2)d6du6snu+42(47+58k2+47k4)d4du4snu+4(3229+3315k2+3315k4+3229k6)d2du2snu+315(35+20k2+18k4+20k6+35k8)snu3!k2sn4u=d2du2sn2u+4(1+k2)sn2u25!k4sn6u=d4du4sn2u+20(1+k2)d2du2sn2u+8(8+7k2+8k4)sn2u32(1+k2)7!k6sn8u=d6du6sn2u+56(1+k2)d4du4sn2u+112(7+8k2+7k4)d2du2sn2u+128(18+15k2+15k4+18k6)sn2u48(24+23k2+24k4)

An(m),Bn(m)と楕円積分

 ちなみに上で出てきた展開係数An(m),Bn(m)は実は不完全楕円積分
K(x,k)=0xdt(1t2)(1k2t2)=0x(n=0(12)n(1)nt2n)(n=0(12)n(1)n(kt)2n)dt=n=0(l=0n(12)l(12)nl(1)l(1)nlk2l)x2n+12n+1
の展開係数を用いることで次のようにも求めることができる。

K(x,k)m=xmn=0Rn(m)x2nsnmu=xmn=0Sn(m)u2n
とおくと
(ksnu)2n+12n+1=m=0nRnm(2m+1)(2m+1)!d2mdu2mksnu(ksnu)2n2n=m=1nRnm(2m)(2m)!d2m2du2m2k2sn2uk2m=2nRnm(2m)Sm2(2)2m(2m1)1(2n+1)sn2n+1u=m=0nRnm(2m+1)(2m+1)!d2mdu2m1snu12nsn2nu=m=1nRnm(2m)(2m)!d2m2du2m21sn2uk2m=2nRnm(2m)Sm2(2)2m(2m1)
が成り立つ。

(ksnu)2n+1について

 積和公式
sn(u+v)sn(uv)=2snvcnudnu1k2sn2usn2v=1k(snv1+ksnusnv+snv1ksnusnv)ddusnu
uについて積分することで
0u(sn(s+v)sn(sv))ds=1klog1+ksnusnv1ksnusnv
が成り立つので、これを
sn(u+v)=m=0vmm!dmdumsnulog(1x)=n=11nxn
と展開することで
m=0v2m+1(2m+1)!d2mdu2mksnu=n=012n+1(ksnusnv)2n+1
を得る。
 またsn関数の定義よりK(snv,k)=vつまり
v2m+1=n=mRnm(2m+1)sn2n+1v
が成り立つことに注意すると
m=0v2m+1(2m+1)!d2mdu2mksnu=m=0n=mRnm(2m+1)(2m+1)!sn2n+1vd2mdu2mksnu=n=0(m=0nRnm(2m+1)(2m+1)!d2mdu2mksnu)sn2n+1v
と展開できるのでsn2n+1vの係数を比較することで
(ksnu)2n+12n+1=m=0nRnm(2m+1)(2m+1)!d2mdu2mksnu
を得る。

(ksnu)2nについて

 積和公式
sn(u+v)+sn(uv)=2snucnvdnv1k2sn2usn2vsn(u+v)sn(uv)=2snvcnudnu1k2sn2usn2v
を掛け合わせることで
sn2(u+v)sn2(uv)=(ddusn2u)(ddvsn2v)(1k2sn2usn2v)2
が成り立つのでこれをu,vについて積分することで
0u0vsn2(s+t)sn2(st)dtds=dxdy(1k2xy)2(x=sn2u,y=sn2v)=1k2x(111k2xy)dx=1k2log(1k2xy)=1k2log(1k2sn2usn2v)
を得る。
 あとは上と同様にして
k220u0vsn2(s+t)sn2(st)dtds=m=0v2m+2(2m+2)!(d2mdu2mk2sn2sk2(2m)!Sm1(2))=n=1(m=1nRnm(2m)(2m)!d2m2du2m2k2sn2uk2m=2nRnm(2m)Sm2(2)2m(2m1))sn2nv=12log(1k2sn2usn2v)=n=112n(ksnusnv)2n
と展開することでわかる。

 ちなみにsnnvの方を展開しvmの係数を比較することで
1(2m+1)!d2mdu2msnu=n=0mk2n22n+1Smn(2n+1)sn2n+1u
のような公式も導出できる。

snnuのフーリエ級数展開

 さて 前に書いた記事 では以下の公式を示したのであった。

2kKπsnu=+4n=1qn121q2n1sin(2n1)v(2kKπ)2sn2u=A8n=1nqn1q2ncos2nv2Kπ1snu=1sinv+4n=1q2n11q2n1sin(2n1)v(2Kπ)21sn2u=1sin2v+A8n=1nq2n1q2ncos2nv
ただし
u=2Kπv,A=(2kKπ)201sn2(2Kt)dt
とおいた。

 このことから
2Kπddu=ddv
に注意するとsnnuのフーリエ級数展開を得ることができる(1/snnuの一般式については同様かつ煩雑なので割愛)。

(2kKπ)2n+1sn2n+1u=4(2n)!l=1(m=0n(1)mAn(nm)(2Kπ)2(nm)(2l1)2m)ql121qlsin(2l1)v(2kKπ)2nsn2nu=4(2n1)!l=1(m=1n(1)mBn(nm)(2Kπ)2(nm)(2l)2m1)ql1q2lcos2lv+1(2n1)!(ABn(n1)(2Kπ)2n2+k2Bn(n)(2Kπ)2n)

 これにより例えば
(2kKπ)3sn3u=2n=1((1+k2)(2Kπ)2(2n1)2)qn121q2n1sin(2n1)v6(2kKπ)4sn4u=4(1+k2)(2Kπ)2A2k2(2Kπ)44n=1(4(1+k2)(2Kπ)22n(2n)3)qn1q2ncos2nv
といった式が得られることとなる。

余談

  テータ関数の積に関する公式 について考察するのに何か使えるかもとこの記事を書き始めてみたはいいものの、本質的にはsnusn2uのフーリエ級数と変わらないので特に新しい結果が見出されるわけではなさそうですね。かのJacobiもこの公式から目ぼしい結果を導いているわけではなさそうですし。

参考文献

[1]
C. G. J. Jacobi, Fundamenta Nova Theoriae Functionum Ellipticarum, 1829
[2]
C. G. J. Jacobi 著, 高瀬正仁 訳, 楕円関数原論, 講談社, 2012
投稿日:2024213
更新日:2024215
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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  1. はじめに
  2. snnu(snu)(m)との関係
  3. 具体例
  4. An(m),Bn(m)と楕円積分
  5. snnuのフーリエ級数展開
  6. 参考文献