$R$を可換環, $M, N$を$R$-加群とし, 線形写像$\varphi \colon M \to N$は単射であるとする. このとき, $N$と同型な$R$-加群$M'$と線形写像$f \colon N \stackrel{\sim}{\to} M'$の組$(M', f)$で, 次の条件をみたすものが少なくとも1つ存在する :
(1) $M$は$M'$の部分$R$-加群である,
(2) $\iota \colon M \to M'$を包含写像とするとき, $\iota = f \circ \varphi$が成り立つ. すなわち, $M$で完全な次の図形が可換になる:
\begin{xy}
\xymatrix{
0 \ar[r] &M \ar[r]^-\varphi \ar[rd]_-{\iota} & N \ar[d]^-{f}\\
& & M'
}
\end{xy}
上の定理をいいかえると, $M \to N$が単射ならば$M$はある$N$と同型な$M'$に埋め込めるということです.
$\varphi$が全射であり, すなわち$M \simeq N$ならば$M' = M$とすればよいから, $\varphi$は全射ではないとする. $M$と交わらない集合$X \neq \varnothing$を$\#X = \#(N \setminus \Im{\varphi})$となるようにとり, $M' = M \cup X$とする. そして, 写像$f \colon N \to M'$を
$$
f(x) = \begin{cases}
\varphi^{-1}(x) & (x \in \Im{\varphi})\\
y \in X & (x \in N \setminus \Im{\varphi})
\end{cases}
$$
ただし$a, b \in N; a \neq b \iff f(a) \neq f(b)$, となるように定義する. これは明らかに全単射である. そして, $M'$に加法と$R$の元によるスカラー積を,
\begin{align}
&x + y = f(f^{-1}(x) + f^{-1}(y)), \\
&a x = f(a f^{-1}(x))
\end{align}
として定義すれば$f$は線形写像となり. $N \simeq M'$となることがわかる. そして, $x \in M$に対し$f(\varphi(x)) = \varphi^{-1}(\varphi(x)) = x$だから$\iota = f \circ \varphi$が成り立つこともわかる. したがって組$(M', f)$は定理の条件(1), (2)を満たす.