ここでは東大数理の修士課程の院試の2013B08の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2013B08
の部分集合
を考える。
- はの部分多様体になることを示せ。
- 行列に対して、写像をと定義する。は微分同相写像であることを示せ。
- 写像で以下の条件
- 各に対して、のへの制限は線型写像を誘導する。
- 任意のについてである。
- 任意の及びについてである。
を満たすようなものは存在しないことを示せ。
- 写像
を取ったとき、のヤコビ行列は
である。これがランクになるのはの場合だが、この像はであるから、は正則値である。よって正則値定理からはの部分多様体である。 - まずトレースと行列式の共役不変性からである。または線型写像であるから特に級である。またの逆写像は線型写像で与えられるから、は微分同相写像である。
- 存在を仮定して矛盾を導く。とし、の基底をうまくとることでと表現されているとする。ここでとおく。このときである。いまは
で生成されている次元空間であり、この基底の下でのの表現行列は
である。ここでがと可換であるためにはの型の行列、またはその共役であることが必要になる。このときトレースと行列式の共役不変性からこの行列がと共役になり得るのは及びの場合のみであり、このようなことは実数の範囲では起こり得ない。よって矛盾が言えたからの非存在が示された。