導入
今回は,数列の収束定理について考えてみたいと思います.大学入試の問題では「この数列の極限値を求めよ」というような問題は頻出です.特に,漸化式によって定義される数列の極限を求める問題は,漸化式から一般項を求めたり,不等式で評価してはさみうち,など色々と問題のタイプが考えられます.
そんな(無限)数列の極限についての定理について紹介し,大学入試の問題への応用を考えてみようと思います.まあ,大学数学すげえ!たのしい!ってなりたいだけなんですけどね
牛刀の準備
用語の定義
まず,有界数列について紹介します.
数列の有界性(有界数列)
数列が有界であるとは,すべてのに対して
なる,に依存しない定数が存在すること.特に,となることを上に有界であるといい,となることを下に有界であるという.
これは数列のいずれの項も,数直線上にプロットしたときに有限な区間の中に収まる,ということを意味します.
有界数列の例
例えばは,すべてのに対してが成り立つので,有界数列です.
次に,数列の単調性について紹介します.
数列の単調性(単調増加数列・単調減少数列)
数列が単調増加であるとは,すべてのに対してが成立すること.また,数列が単調減少であるとは,すべてのに対してが成立すること.
これは分かりやすいと思います.数列の各項が増加していけば単調増加,減少していけば単調減少です.
数列の単調収束定理
さて,今回のメインテーマである数列の収束定理を紹介します.
数列の収束(数列の単調収束定理)
上に有界で単調増加な数列は収束する.また,下に有界で単調減少な数列は収束する.
この定理は増加(または減少)に限界のある数列は収束するという意味だと解釈できます.
どうやって応用するのか
前述の定理は,漸化式で与えられた数列の極限を求める際に便利です.次のように考えます.
数列の極限値と漸化式
で定義されている数列がに収束するとき,が成立する.
大学入試問題で牛刀割鶏
それでは,上記の定理を用いて大学入試の問題を解いてみましょう.数列の収束を示すためには,有界性と単調性を言えばよいです.これを示せば,前述の命題2を使うことが出来ます.あとはそれによって得られた方程式を解くだけです.
2019 東北大
2019 東北大学 理系 第3問 (設問(1)(2)省略)
を実数とし,数列を次の漸化式によって定める.
(3) のとき,数列の極限を調べよ.
解答
ゆえ,数列は単調増加.またであり,ならばゆえ
からを得る.よって数列は上に有界である.以上より数列は収束し,その極限値をとすると
よって数列はに収束.
2024 慶應大
2024 慶應義塾大学 理工学部 第1問(2)
関数は実数全体で定義されており,において
を満たしているものとする.数列は漸化式
を満たしているものとする.
- ならば,すべての自然数に対してとなることを証明しなさい.
- ならば,の値によらずとなることを証明しなさい.
解答
- とおく.の下,まずは真.さらにが真ならば,が成立し
よりも成立.よって数学的帰納法により示された. - のとき,前問よりは上に有界.また,命題からゆえは単調増加数列.よっては収束し,その極限値をとすると,すなわちを得る.なので
よってが示された.
2005 東京大
2005 東京大学 理類
関数をとする.ただし,は自然対数の底である.
(1) ならばであることを示せ.
(2) を正の数とするとき,数列を,によって定める.であれば,であることを示せ.
解答の前に
流石の東大,といったところでしょうか.先ほどの問題たちは,出題される数列がそのまま単調数列になっているのですが,本問のは単調数列ではないんですよね.この問題を解くためには,とある工夫が必要です.
ちなみに(1)は頑張って微分して増減表を描けば示せるので省略します.
(2)の解答
数列を考え,これがに収束することを示す.とおくとで下に有界.あとはが単調減少であることを示す.
で,平均値の定理により
なるがとの間に存在.区間ではは単調増加ゆえ,ならば.これとから帰納的に.したがって,はとの間ゆえを得る.よって(1)からだから
となって単調減少.よっては収束するのでも収束.の極限値をとおくと,からゆえ