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東大数理院試過去問解答例(2015B06)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2015B06の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2015B06

$S^1=\left\{z\in\mathbb{C}\middle||z|=1\right\}$とおく。ここでトーラス$T^2:=S^1\times S^1$及び厚みつきトーラス$T^2\times[0,1]$を考え、このトーラスの部分集合$T^2\times\{0\}$及び$T^2\times\{1\}$
$$ (z,\zeta,1)\sim(z,z^2\zeta,0) $$
によって同一視して得られる商空間を$X$とする。また$(z,\zeta,t)\mapsto(z,e^{2\pi\sqrt{-1}t})$の誘導する連続写像$\pi:X\to T^2$とおく。

  1. 整係数ホモロジー群$H_\ast(X,\mathbb{Z})$を求めなさい。
  2. $\pi\circ s=\mathrm{id}_{T^2}$なる連続写像$s:T^2\to X$は存在しないことを示しなさい。
  1. 初めに$X$の部分集合$A:=\pi(T^2\times(0,1)),B:=\pi(T^2\times(\frac{1}{2},\frac{3}{2}))$を考えたとき、$A$及び$B$はトーラスに、$A\cap B$は二つのトーラスにホモトピー同値なので、Mayer-Vietoris完全列
    $$ \begin{array} &&\cdots&\to&0&\to&H_3(M,\mathbb{Z})\\ \to&\mathbb{Z}^2&\to&\mathbb{Z}^2&\to&H_2(M,\mathbb{Z})\\ \to&\mathbb{Z}^4&\to&\mathbb{Z}^4&\to&H_1(M,\mathbb{Z})\\ \to&\mathbb{Z}^2&\to&\mathbb{Z}^2&\to&\mathbb{Z}&\to0 \end{array} $$
    が得られる。ここで$1$次の準同型は適切な基底をとることで
    $$ \begin{pmatrix} 1&0&1&0\\ 0&1&0&1\\ 1&0&1&-2\\ 0&1&0&1\\ \end{pmatrix} $$
    である一方、$2$次の準同型は適切な基底をとることで
    $$ \begin{pmatrix} 1&1\\ 1&-2 \end{pmatrix} $$
    である。以上から
    $$ \color{red}H_\ast(X,\mathbb{Z})=\begin{cases} \mathbb{Z}&(\ast=0)\\ \mathbb{Z}^2\times\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}&(\ast=1)\\ \mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}&(\ast=2)\\ 0&(\textsf{if else}) \end{cases} $$
    である。
  2. まず$H_1(X,\mathbb{Z})$$p(\{(1,\zeta,0)|\zeta\in S^1\})$で生成される非自明な部分群を持つが、この生成元の代表元は$\pi$によって一点に移される。よって所望の$s$は存在しない。
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント

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