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ここでは東大数理の修士課程の院試の2013B05の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2013B05
$C^1$級関数$f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}$について、 $\mathbb{R}^3$上の微分形式
$$
\omega:=xdy\wedge dz-2zf(y)dx\wedge dy+yf(y)dz\wedge dx
$$
を考える。以下の問いに答えなさい。
- $d\omega=dx\wedge dy\wedge dz$かつ$f(1)=1$を満たすような$f$を求めなさい。
- $\mathbb{R}^3$の曲面
$$
S=\left\{(x,y,z)\in\mathbb{R}^3\middle|x^2+y^2+z^2+xy+yz+zx=\frac{1}{2}\right\}
$$
を考える。この曲面に向きを一つ定め、その向きに関して積分$\int_S\omega$を計算しなさい。
- 実際に計算すると
$$
d\omega=(1-f(y)+yf'(y))dx\wedge dy\wedge dz
$$
である。微分方程式$f=yf'$の解で$f(1)=1$を満たすのは$\color{red}f=y$である。 - まず$a=\frac{1}{{2}}(x+y),b=\frac{1}{{2}}(y+z),c=\frac{1}{{2}}(z+x)$とおくと、$S$の定義式は$a^2+b^2+c^2=\frac{1}{4}$になる。このとき$D=\{(a,b,c)|a^2+b^2+c^2<\frac{1}{4}\}$とおくと
$$
\begin{split}
\int_{S}\omega&=\int_{D}d\omega\\
&=\int_D d(a+c-b)\wedge d(a+b-c)\wedge d(b+c-a)\\
&=4\int_Dda\wedge db\wedge dc
\end{split}
$$
になる。ただし上記の議論に於いては、$\mathbb{R}^3$に$da\wedge db\wedge dc$の定める向きを入れ、$S$にそこから誘導される$\omega$の向きを入れている。このときこの積分値は$\color{red}\frac{3\pi}{8}$になる。