ここでは京大数学教室・RIMSの修士課程の院試の2024専門03の解答例を解説していきます(但し解説の都合上少し問題を改変しています)。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
多項式$f=X^6+kX^3+27$の任意の根$\alpha$について体拡大$\mathbb{Q}(\alpha)/\mathbb{Q}$が$6$次ガロア拡大になるような正の自然数$k$を全て求めなさい。
まず条件が満たされているとすると、$\mathbb{Q}(\alpha)$は$\alpha$の取り方によらず$f$の最小分解体になっている。これを$K$とする。$\omega^3$の$1$の原始$3$乗根とする。このとき
$$
\omega\in K
$$
である。ここで$\alpha$を
$$
\alpha^3=\frac{-k+\sqrt{k^2-108}}{2}
$$
なる根とし、$\beta$を
$$
\beta^3=\frac{-k-\sqrt{k^2-108}}{2}
$$
であるとすると、それぞれ$K$の元であるから
$$
\sqrt{k^2-108}\in K
$$
である。ここで$4\nmid6$であるから、所望の条件を満たすためには$\mathbb{Q}(\omega)=\mathbb{Q}(\sqrt{-3})=\mathbb{Q}(\sqrt{k^2-108})$でなければならない。これを満たすような$k$は${k=9}$のみである。そして実際このとき
$$
\mathbb{Q}\qty({\sqrt{3}}e^{i\frac{5\pi}{18}})
$$
は既約多項式$f$の根を足した体であるから$\mathbb{Q}$上$6$次であり、これは
$$
\omega=-\frac{1}{27}\qty({\sqrt{3}}e^{i\frac{5\pi}{18}})^6
$$
$$
{\sqrt{3}}e^{-i\frac{5\pi}{18}}=\frac{3}{{\sqrt{3}}e^{i\frac{5\pi}{18}}}
$$
であるから、$f$の根を全て含み、$\mathbb{Q}$上ガロア拡大になっている。一方$\mathbb{Q}$に$f$の他の根を足した体もこのガロア拡大に含まれる$6$次拡大なのでガロア拡大である。よって${\color{red}k=9}$の場合に限り所望の条件が満たされていることがわかった。