ここでは東大数理の修士課程の院試の2012B02の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2012B02
を複素数とし、上の多項式環
を考える。
- の極大イデアルを全て求めなさい。
- (1)で求めた各極大イデアルに対してを求めなさい。
- の冪零でない元を全て求めなさい。
- のを含む極大イデアルと対応していることを考慮すれば
で尽くされている(は任意の複素数)。 - まずのへの引き戻しもとおくと
である。よって
である。 - 初めにの元はの元を適切に足すことで
の形の元で代表される(但しは複素係数多項式、は複素数)。これが冪零であるとし、乗してになる、つまり
を満たすとする。まずを代入するとこの多項式はになる必要があるからが従う。更にを代入してになる必要もあるからが従う。以上からのとき冪零元はのみであり、のとき冪零元はイデアルの元で尽くされるであることがわかる。