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ここでは東大数理の修士課程の院試の2019B07の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2019B07
- $\mathbb{R}^5$の部分空間
$$
X=\left\{(x_1,x_2,x_3,x_4,x_5)\in\mathbb{R}^5\middle|\begin{array}{c}
x_1^2+x_2^2+x_3^2+x_4^2+x_5^2=1\\
x_1^2+x_2^2+x_3^2-x_4^2-x_5^2=0
\end{array}\right\}
$$
のホモロジー群$H^\ast(X,\mathbb{Z})$を求めなさい。 - $\mathbb{R}P^4$の部分空間
$$
X=\left\{(x_1,x_2,x_3,x_4,x_5)\in\mathbb{R}P^4\middle|x_1^2+x_2^2+x_3^2-x_4^2-x_5^2=0\right\}
$$
のホモロジー群を求めなさい。
- $X$は$S^2\times S^1$に同相である。ここで$S^k$のホモロジー群は全て$\mathbb{Z}^r$に同型であり、この$\mathrm{Tor}$群は$0$であるから、Kunnethの公式によって
$$
\begin{split}
H^\ast(X,\mathbb{Z})&\simeq \bigoplus_{i=0}^\ast H^i(S^2,\mathbb{Z})\otimes H^{\ast-i}(S^1,\mathbb{Z})
\end{split}
$$
である。以上から
$$
{\color{red}H^\ast(X,\mathbb{Z})=\left\{\begin{array}{cc}
\mathbb{Z}&(\ast=0,1,2,3)\\
0&(\textsf{if else})
\end{array}\right.}
$$
がわかる。 - まず$Y$は$X$に対して$\pm 1$による作用を同一視した空間である。そして$\pi:S^2\times S^1\to Y$を自然な全射とする。ここで$S^1$の部分集合$A,B$を
$$
\begin{split}
A&=\{(x,y)\in S^1|x\neq0\}\\
B&=\{(x,y)\in S^1|y\neq0\}
\end{split}
$$
とする。ここで$A'$及び$B'$を$\pi(S^2\times A)$及び$\pi(S^2\times B)$と定義する。これらは$S^2$にホモトープである。また
$$
Y=A'\cup B'
$$
であり、
$$
A'\cap B'=\pi\left(\left(S^2\times (A\cap B)\right)\right)
$$
であり、これは$S^2$にホモトープな$2$つの連結成分からなる。以上からMayer-Vietoris完全列
$$
\begin{array}{cc}
&&&&&\cdots&\to\\
\to&0&\to &0&\to&H^3(Y,\mathbb{Z})&\to \\
\to&\mathbb{Z}\times \mathbb{Z}&\to&\mathbb{Z}\times \mathbb{Z}&\to& H^2(Y,\mathbb{Z})&\to& \\
\to& 0&\to& 0&\to& H^1(Y,\mathbb{Z})&\to&\\
\to&\mathbb{Z}\times \mathbb{Z}&\to& \mathbb{Z}\times \mathbb{Z}&\to& H^0(Y,\mathbb{Z})&\to& 0
\end{array}
$$
が得られる。 まず$Y$は連結であるから$H^0(Y,\mathbb{Z})=\mathbb{Z}$である。次にランクの比較と自由$\mathbb{Z}$-加群の部分加群が自由であることから$H^1(Y,\mathbb{Z})=\mathbb{Z}$である。次に$A'\cap B'$の連結成分から$A'$及び$B'$への埋め込みはホモトピー同値を定めているから、上記の完全列の$2$次の行の$\mathbb{Z}\times \mathbb{Z}$の間の群準同型は適切な基底の下
$$
\begin{pmatrix}
1&1\\
1&1
\end{pmatrix}
$$
で表示される。以上をまとめると
$$
{\color{red}H^\ast(Y,\mathbb{Z})\simeq\left\{\begin{array}{cc}
\mathbb{Z}&(\ast=0,1,2,3)\\
0&(\textsf{if else})
\end{array}\right.}
$$
である。