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アペリーの数列の姉妹たち

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こんにちは、itouです。
注:以下の内容は数値計算で得られた結果をもとにしています。厳密な証明はしていません。

訂正

本文では条件\ref{name2}を満たす数列の分母は指数関数程度になるとしていましたが、$(n!)^2$のオーダーになるようです。訂正いたします。
(訂正日2023年11月3日)

前提知識

次の数列をアペリーの数列といいます。
$ (n+1)^3a_{n+1}=(17(n^3+(n+1)^3)-12(2n+1))a_n-n^3a_{n-1}(a_0=1,a_1=5)$
また、この数列は
$a_n=\sum_{k=0}^{n}{ n+k \choose k}^2{ n \choose k }^2$という表示をもちます。ロジャー・アペリー(Roger Apéry)はこの数列(と$a_n$と同じ漸化式を満たす数列で初期条件が$a'_0=0,a'_1=6$である数列$a'_n$)を用いて$\zeta(3)$の無理数性を示したのでした。

アペリーの数列と同様の性質をもつ(と思われる)数列

$(n+1)^3a_{n+1}=g(n)a_n-n^3a_{n-1}$という形の漸化式を満たす数列がゼータ値と関係があることは私の この記事 で解説しました。今回、この漸化式について新しい発見がありました。

$$ (n+1)^3a_{n+1}=(a(n^3+(n+1)^3)-b(2n+1))a_n-n^3a_{n-1}\tag{1.0}\label{name1}$$

\ref{name1}において$(a,b)$にどのような整数の組を代入すると「性質がよい」数列を得られるでしょうか。ここで「性質が良い」とは、「$a_n$を既約分数にしたときの分母が指数関数的にしか増えていかない」ことを指します。一般には$a_n$の分母は$(n!)^3$のオーダーになるはずです。例えば、

例1

$(a,b)=(1,1)$$a_0=1,a_1=1$のとき、${a_n}$$\frac{1}{1},\frac{1}{1},\frac{5}{8},\frac{43}{108},\frac{1193}{4608},\frac{72991}{432000},\frac{898361}{8294400},\frac{156497359}{2370816000},\frac{7436866369}{208089907200},\frac{3018595549241}{ 221225582592000},\frac{-4280233528717}{ 1573159698432000},\frac{-28217617021345043}{1884488002751692800},\frac{-3413171427076747837}{140969492153892864000}………$

となり、分母はどんどん大きくなってしまいます。

しかし、以下のような場合は分母が指数関数程度となります!!
以下の場合には分母が$(n!)^2$のオーダーになります。

条件:$m$を1または正の偶数として、整数の組$(a,b)$$(3+2\sqrt{2})^m=a+b\sqrt{2}$を満たす。かつ、$a_0=1,a_1=a-b$である。$$\tag{2.0}\label{name2} $$

(例2の場合は特別なようです。)

例2

$(a,b)=(3,2)$$a_0=1,a_1=1$のとき、${a_n}$$\frac{1}{1},\frac{1}{1},\frac{5}{2},\frac{17}{2},\frac{1067}{32},\frac{4547}{32},\frac{40909}{64},\frac{191185}{64},\frac{117655547}{8192},\frac{578191787}{8192},\frac{5782677235}{16384},\frac{29330582935}{16384},\frac{2408526012775}{262144}………$

となります。分母は$1,1,2,2,32,32,64,64,8192,8192,16384……$と、2の冪になり、常に$4^n$の約数であることがわかります。実際、私は次の表示を見つけました。

conjecture1

$a_n=\sum_{k=0}^{n}{ 2k \choose n }^2{ n \choose k }^24^{-n}$$ (n+1)^3a_{n+1}=(3(n^3+(n+1)^3)-2(2n+1))a_n-n^3a_{n-1}$を満たす。

\ref{name2}において、$n$が偶数の場合の表示は$n=2$の場合(つまりアペリーの数列の場合)を除けばまだ得られていません。

考察

今回の発見は個人的には大きなものです!既出でなければそれなりの成果といえるのではないでしょうか。それにしても、分母が指数関数程度$(n!)^2$のオーダーになるほど約数が割り切れていくとはなんとも不思議なことです。

謝辞

ここまで読んで下さりありがとうございました。誤植指摘よろしくお願いいたします。

投稿日:2023112
更新日:2023113

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itou
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