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ここでは東大数理の修士課程の院試の2006B06の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2006B06
$\mathbb{R}^3$の単位球面上の円の全体集合を$M$とする。但し球面上の円とは、球面と平面の共通部分で、空集合でも一点集合でもないものを指す。
- 全射写像$f:M\to\mathbb{R}P^2$を一つ構成しなさい。
- 単射写像$g:M\to\mathbb{R}P^3$で、$g(M)$が$\mathbb{R}P^3$の開集合であるようなものを一つ構成しなさい。
- 上で求めた$g$によって$M$に$\mathbb{R}P^3$の開部分多様体の構造をいれる。$M$は向き付け可能であるかどうか判定しなさい。
- 初めに$\mathbb{R}P^2$は$\mathbb{R}^3$の原点を通る直線の集合として実現される。写像$f:M\to\mathbb{R}P^2$を
$$
f(C)=(C \textsf{ を含む平面に直交し、原点を通る直線})
$$
とする。原点を通る任意の直線$L$に対して、これに直交する平面と球面の共通部分$C$に対して$f(C)=L$になっているから、$f:M\to\mathbb{R}P^2$は全射である。 - まず$C$を含む平面と$f(C)$との交点を、$C$の中心と呼ぶ。写像
$h:M\to\mathbb{R}P^3$を
$$
g(C)=\left[f(C),\frac{C\textsf{ の中心}}{(a,b,c)}(a^2+b^2+c^2)\right]
$$
とおく。但しここで$[a,b,c]=f(C)$であり、$\frac{C\textsf{ の中心}}{(a,b,c)}$とは$r(a,b,c)$が$C$の中心になるような実数$r$を指す。原点から$(a,b,c)\in C$までの距離を$1$としたときの、原点から$C$の中心までの距離とする。このとき
$$
g(M)=\{[a,b,c,r]|r^2<{a^2+b^2+c^2}\}
$$
である。$g(M)$は$h[a,b,c,r]=\frac{a^2+b^2+c^2-r^2}{a^2+b^2+c^2+r^2}$で定義される連続関数$h:\mathbb{R}P^3\to\mathbb{R}$による$\mathbb{R}_{>0}$の逆像であるから、$g(M)$は$\mathbb{R}P^3$の開部分集合である。また$g$は円$C$に対して、その中心、そして中心と原点を結ぶ直線を出力するが、これらが定まれば球面上の円$C$は一意に定まるから、$g$は単射である。 - $\mathbb{R}P^n$が向き付け可能であるためには、$n$が奇数であることが必要充分であり、特に$\mathbb{R}P^3$は向き付け可能である。よってその開部分多様体である$M$も向き付け可能である