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命題論理に入門したい!

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目次

  • はじめに
  • 準備
  • 定義
  • Ωは"本当にほしいもの"か?
  • モデル論

はじめに

今回は、命題論理に入門したい!ということで、基礎論のいくつかの本を読んで、学んだ内容を勉強ノート替わりにここに書き留めたいと思います。
本記事では、命題論理についての形式的な定義から、命題の真偽、コンパクト性定理まで述べます。

以下、この記事ではω=N={0,1,2,},N>0=N+={1,2,3,}とし、
自然数nと言った場合は、nNを指すものとする。

準備

集合Xに対して、Xの要素を並べた有限列全体の集合をX<ω=n=1Xnで定める。
Xの有限列xX<ωに対して、xXnなるnが一意に存在する。このnを有限列x長さ(length)という。

記法
長さnの有限列xx=(x1,x2,,xn)であるとき、
x=x1x2xnと書くと約束する。
また、x=x1xn,y=y1ynのとき、xy=x1xny1ynとする。

定義

Ω0を可算集合とする。
また、NからΩ0への全単射でもって、Ω0の元を0番目から順に一列に並べておく。
すなわち、Ω0={p0,p1,p2,}とする。
これらのpnΩ0 (n=0,1,2,)命題変項(propositional variable)といい、これらは原子命題を表す非論理記号 (nonlogical symbol)である。

記号¬,,,,(,)論理記号(logical symbol)という。これら6つのうち丸括弧以外は論理演算子を表す記号である。

論理記号はすべてΩ0に含まれないとする。
つまり、{¬,,,,(,)}Ω0=である。

Ωlng={¬,,,,(,)}Ω0を、命題論理の言語(language)という。
また、ΩseqΩlngの有限列全体、つまり、ΩseqΩlng<ωと定め、
Ωseqの元を記号列(symbolic sequence)と呼ぶ。

(¬x)((pq)(qp))なども記号列だが、これに限らず、
→→pとか¬¬))とか¬¬qみたいな意味不明(まだ"意味"も定義していないが...)なやつも記号列に含まれる。
また、命題変項pnΩ0も、長さ1の記号列である。

上で述べたように、扱いたい文字列ではないものまでΩseqに入ってくるので、これをうまいこと落として"論理式"を定義したい。ここでは二通りで述べる。しっくりくる方で理解すれば良いと思う。

論理式(1)

記号列のうち、論理式(formula)であるものを、以下のように帰納的に定める。

  1. 命題変項pnΩ0(n=0,1,2,)は論理式である。
  2. A,Bが論理式ならば、(¬A),(AB),(AB),(AB)という記号列は全て論理式である。
  3. 以上により論理式であると定まる記号列以外は論理式ではない。

以上により定まるΩseqに含まれる論理式全体の集合をΩとする。

論理式(2)

記号列全体の集合Ωseqの部分集合ΩΩseq論理的であるとは、Ωが以下を満たすことである。

  1. Ωは全ての命題変項pnΩ0(n=0,1,2,)を含む。つまり、Ω0ΩΩseqを満たす。
  2. 記号列A,Bが、もしΩの元ならば、(¬A),(AB),(AB),(AB)という記号列は全てΩの元である。

Ωseqはそれ自身、Ωseqの論理的な部分集合である。よって論理的な部分集合は少なくとも1つ存在する。Ωseqの論理的な部分集合のうち、(包含関係で)最小のものをΩΩseqと定める。ΩΩseqの全ての論理的な部分集合の共通部分と一致するので存在することがわかる。
このとき、Ωに含まれる記号列を論理式(formula)という。

ここで得た、Ωは我々が普段数学をしている日常生活でよく見る意味での論理式と一致していると考えて良いだろう。丸括を必ず書かなければいけないというルールがあるが、それも後々省略することになる。

Ωは"本当にほしいもの"か?

さて、前節では論理式と論理式全体の集合Ωを定義したが、これは本当に我々がほしいものになっているのだろうか?という疑問が残る。本当にほしいものとは、命題変項から出発して、¬,,,をつける操作を有限回繰り返して得られる記号列のことである。もちろん、そのような記号列は全て論理式であることは明らかであろう。しかし、この操作で得られるものが論理式の全てだろうか?という問題が残る。そこで、問題をはっきり述べるために以下を定義する。

Ω0={p0,p1,p2,...}(再掲)
Ω1={A,(¬A),(AB),(AB),(AB)A,BΩ0}
...
Ωn+1={A,(¬A),(AB),(AB),(AB)A,BΩn}
...
として、帰納的にΩn(n=0,1,2,)を定義する。また、
Ω=nNΩn=Ω0Ω1Ωn
また定義から、これらは上昇列
Ω0Ω1ΩnΩ
をなす。また、Ωの元xに対してxΩnとなる最小のnx深さといい、n=d(x)で表す。

実は、このΩαは一般の順序数αに対して定義できる。いわゆる超元気農法💪もとい超限帰納法である。

(余談)

順序数αに対して、Ωαを以下で定義する。

  1. α=0のとき、Ω0={p0,p1,p2,...}(再掲)
  2. αが後続順序数でα=β+1のとき、
    Ωα={A,(¬A),(AB),(AB),(AB)A,BΩβ}
  3. αが極限順序数のとき、
    Ωα=β<αΩβ

これに従うと、ΩとはΩωのことであると分かる。しかし実際は、ωαなる任意の順序数αに対して、Ω=Ωαであることが、以下の命題から従う。

Ω=Ω

nに対して、Ωnの定義から明らかに、ΩnΩ
よって、ΩΩ
一方、A,BΩの任意の元とする。ここで、n=max{d(A),d(B)}とすると、A,BΩnであるから、(¬A),(AB),(AB),(AB)Ωn+1Ω
よって、ΩΩseqの論理的な部分集合だから、Ωの最小性から、ΩΩ
ゆえに、Ω=Ω

以上より、Ωが本当に我々がほしい集合であるとわかった。

モデル論

ここまでで、命題論理に用いる記号と、その記号列のうち、命題論理が扱う"論理式"と呼ばれる形の記号列を定義した。ここで再度確認する。

諸定義再掲

Ω0={p0,p1,p2,}
Ωlng={¬,,,,(,)}Ω0
ΩseqΩlng<ω
Ω={ΩΩΩseqは論理的}

さて、論理式は定義したので、次に考えたいのは"真偽"である。ただし、当然Ω0に属する各命題変項pnは自明に真偽が決まっているわけではない。しかし、論理式ABの真偽が定まれば、(¬A),(AB),(AB),(AB)の真偽も定まってほしい。そこで、論理式の真偽を以下で定義する。

写像v:Ω{0,1}真理値関数あるいはモデル,解釈,意味であるとは、写像vが以下を満たすことである。

  1. v((¬A))=1v(A)=0
  2. v((AB))=1v(A)=1かつv(B)=1
  3. v((AB))=1v(A)=1またはv(B)=1
  4. v((AB))=1v(A)=0またはv(B)=1

論理式AΩと真理値関数vに対して、
v(A)=1となるとき、Avにおいて真である(充足する,妥当である)といい、
v(A)=0となるとき、Avにおいて偽である(充足しない,非妥当である)という。
また、
Avにおいて真であるとき、vA
Avにおいて偽であるとき、vA
と書く。

ここで興味があるのは、Ωの部分集合上で1を取る真理値関数、つまり、いくつかの論理式を真にさせるモデルについてである。そのようなモデルの存在の有無や、それら全てで一定の真偽値を持つ命題について考える。

TΩに対して、T上で常に値が1のみを取る真理値関数を、Tを充足する真理値関数あるいはTのモデルという。真理値関数vTを充足するとき、vTと書く。

TΩに対して、Tを充足する真理値関数が存在するとき、
Tは充足可能であるという。

TΩAΩに対して、Tを充足する任意の真理値関数vに対して、vAを充足するとき、つまり、任意の真理値関数vに対して、
vTvA
が成り立つとき、AT上妥当であるといい、TAと書く。

T={p0,(¬p0)}Ωとすると、Tは充足不可能である。
実際、任意の真理値関数vに対して、v(p0)=0v((¬p0))=1より、v(p0)=v((¬p0))=1となることはない。

Ω0及びその部分集合は充足可能である。
実際、帰納的に(深さに関する帰納法により)Ω0,Ω1,...と順次真偽値を確定させていくことで、具体的に目的の真理値関数を得ることができる。

この真理値関数について考察することが、命題の真偽についての形式的な考察に繋がる。
以下の命題は最も基礎的な定理の一つである。

コンパクト性定理

TΩに対して、Tの任意の有限部分集合T0Tが充足可能とする。
このとき、Tは充足可能。

この証明は、もう少し準備が必要なので、次回に回す。

力尽きたので、今回はここで。次回はコンパクト性定理の証明を目指します。

投稿日:2024927
更新日:2024927
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投稿者

どうも、テトリス代数の人です。

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