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約数に関する研究5

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お久しぶりです.今回約数関数の上界について,それなりに有用なものが得られたので紹介します.
なお,関数の定義は以下の通りです.

約数関数

$$ \sigma_x(n) = \sum_{d \vert n,0\lt d} d^x $$

一般化したプライムオメガ関数

$$ n = \prod_{p;\mathrm{prime} \ , \ p \vert n} p^{v_p(n)} $$

と素因数分解したとき

$$ \mathrm{Omega}(n,x) = \sum_{p;\mathrm{prime} \ , \ p \vert n} v_p(n)^x $$

この記事では$\mathrm{Omega}(n,0) = \omega(n) \ , \ \mathrm{Omega}(n,1) = \Omega(n)$と書くことにする.

評価式とその証明

証明はこちらの記事「 約数関数に関する予想の証明 」の補題2のものと似ています.

$p_n$$n$番目の素数を表すとする.

$$ p_n \geq 2n - 1 \ \ \ (n \geq 2) $$

が成り立つ.

$p_2 = 3 , \ p_n \geq p_{n - 1} + 2 \ \ \ (n \geq 3)$ より

\begin{align} p_n &\geq p_{n -1} + 2 \\ &\geq p_2 + 2(n - 2) \\ &\geq 2n - 1 \end{align}

$n \gt 1,x \geq 1$とする.次が成り立つ.

$$ \sigma_x(n) \lt \dfrac{2^{x + 1}}{2^x - 1} \dfrac{\omega(n)}{4^{\omega(n)}}{}_{2\omega(n)}C_{\omega(n)} \ n^x $$

$n(\gt 1)$を自然数とする.

$$ n = \prod_{p \vert n} p^{k_p} $$

$n$を素因数分解すると

\begin{align} \sigma_x(n) &= \prod_{p \vert n} \dfrac{p^{x(k_p + 1)} - 1}{p^x - 1} \lt n^x \prod_{p \vert n} \dfrac{p^x}{p^x - 1} \leq n^x \prod_{i = 1}^{\omega(n)} \dfrac{p_i^x}{p_i^x - 1} \\ &\leq n^x \dfrac{2^x}{2^x - 1} \prod_{i = 2}^{\omega(n)} \dfrac{p_i}{p_i - 1} \\ &\leq n^x \dfrac{2^x}{2^x - 1} \prod_{i = 2}^{\omega(n)} \dfrac{2i - 1}{2i - 2} \\ &= n^x \dfrac{2^x}{2^x - 1} \dfrac{(2\omega(n) - 1)!!}{(2\omega(n) - 2)!!} \\ &= \dfrac{2^{x + 1}}{2^x - 1} \dfrac{\omega(n)}{4^{\omega(n)}}{}_{2\omega(n)}C_{\omega(n)} \ n^x \end{align}

補足

定理2 は$n$を奇数に限定するとさらに精度の良いものになる.実際

\begin{align} \sigma_x(n) &= \prod_{p \vert n} \dfrac{p^{x(k_p + 1)} - 1}{p^x - 1} \lt n^x \prod_{p \vert n} \dfrac{p^x}{p^x - 1} \leq n^x \prod_{i = 2}^{\omega(n) + 1} \dfrac{p_i^x}{p_i^x - 1} \\ &\leq n^x \dfrac{3^x}{3^x - 1} \prod_{i = 3}^{\omega(n) + 1} \dfrac{p_i}{p_i - 1} \\ &\leq n^x \dfrac{3^x}{3^x - 1} \prod_{i = 3}^{\omega(n) + 1} \dfrac{2i - 1}{2i - 2} \\ &= n^x \dfrac{3^x}{3^x - 1} \dfrac{2}{3} \dfrac{(2\omega(n) + 1)!!}{(2\omega(n))!!} \\ &= \dfrac{3^{x - 1}}{3^x - 1} \dfrac{2\omega(n) + 1}{2^{2\omega(n) - 1}}{}_{2\omega(n)}C_{\omega(n)} \ n^x \end{align}

となり,$\omega(n)$が十分に大きいときを考えるとその違いが良くわかるだろう.$n = 1$のとき$x = 1$でのみ等号が成立する.

$n \gt 1, x \leq - 1$とする.次が成り立つ.

$$ \sigma_x(n) \lt \dfrac{1}{1 - 2^x} \dfrac{\omega(n)}{2^{2\omega(n) - 1}} {}_{2\omega(n)}C_{\omega(n)} $$

$\dfrac{\sigma_x(n)}{n^x}=\sigma_{-x}(n)$であることを利用し,$x$$- x$に置き換えれて整理すればよい.

以前の評価式との比較

今回示した式が以前のものと比べてどれだけ正確か,Excelを用いて確認してみます.簡単のため$x = 1$とします.
今回の式を$n$の偶奇で分けて次のようにします.

$$ \sigma_1(n) \leq \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \dfrac{\omega(n)}{4^{\omega(n) - 1}}{}_{2\omega(n)}C_{\omega(n)} \ n \ \ \ \ \ \ \ \ \ (n:\textrm{even}) \\ \dfrac{2\omega(n) + 1}{4^{\omega(n)}}{}_{2\omega(n)}C_{\omega(n)} \ n \ \ \ \ (n:\textrm{odd}) \end{array} \right. \end{eqnarray} $$

比較するのは次の2つの式です.

比較する式1

$$ \sigma_1(n) \leq (\omega(n) + 1)n $$

比較する式2

$n \neq 2,4,8,16$のとき

$$ \sigma_1(n) \leq n^{\sigma_0(n)^{\frac{1}{2\Omega(n)}}} $$

公式2,公式3の証明はどちらもこちらの記事「 約数関数に関する予想の証明 」で紹介しています.

さて,約数関数$\sigma_x(n)$

=LAMBDA(n,x,SUM(UNIQUE(REDUCE(1,SEQUENCE(SQRT(n)),LAMBDA(a,b,IF(MOD(n,b),a,VSTACK(a,b,n/b)))))^x))

で計算します.簡単のために「名前の定義」でsigmaとします.
そして,一般化したプライムオメガ関数$\mathrm{Omega}(n,x)$

=LAMBDA(n,x,REDUCE(0,SEQUENCE(n),LAMBDA(a,b,IF(MOD(n,b),a,IF(sigma(b,0)=2,a+INDEX(REDUCE(VSTACK(n,0),SEQUENCE(LOG(n,b)),LAMBDA(c,d,IF(MOD(INDEX(c,1),b),c,c/VSTACK(b,1)+VSTACK(0,1)))),2)^x,a)))))

で計算します.簡単のために「名前の定義」でomegaとします.

以下で,自然数$n$とそれに対する$\sigma_1$,そして公式それぞれを用いたときの$\sigma_1$の上界の値を計算して表にしました.

公式の比較 公式の比較

この表を見ると公式1がどれだけ優れているのかがよく分かります.

終わりに

公式1において$\omega(n) = 2$と仮定すると次のようになります.

$$ \sigma_1(n) \lt \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 3n \ \ \ \ \ \ \ \ (n : \textrm{even})\\ \dfrac{15}{8}n \ \ \ \ (n : \textrm{odd}) \end{array} \right. \end{eqnarray} $$

これはつまり,$\omega(n) = 2$を満たす奇数の完全数は存在しないことを示しています.
(私が中学1年の時に苦労して証明したことが,こんなにもあっさり証明できてしまうなんて・・・!)

また表を見れば分かるように,公式3はどうしようもないほど使えないことが分かります.苦労して証明した不等式なのに悲しいですね.

ここまで読んでいただきありがとうございます.

投稿日:225
更新日:315

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投稿者

約数関数、数列関係の記事を中心に書いていきます。 記事の内容に間違いがあれば教えてくれるとありがたいです。

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