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東大数理院試過去問解答例(2026B02)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2026B02の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2026B02

$K=\mathbb{C}(X)$を複素係数$1$変数関数体とし、$K$係数$8$次多項式
$$ f(T)=T^8-2T^4+X^2 $$
の最小分解体を$L$とおく。以下の問いに解答しなさい。

  1. $\sqrt{X}$$L$の元であることを示しなさい。
  2. $L$$\mathbb{C}(X^2)$上の$f$の最小分解体であることを示しなさい。
  3. $L/K$の最大アーベル拡大を求め、ガロア群$\mathrm{Gal}(M/K)$の群構造を巡回群の積で表しなさい。
  4. $L/K$の中間体$M$で、ガロア群$\mathrm{Gal}(L/M)$が位数$8$の四元数群と同型になるようなものを全て挙げなさい。
  1. $L$は、その定義から、
    $$ \sqrt[4]{1\pm\sqrt{1-X^2}}=\frac{1}{\sqrt[4]{2}}\sqrt{\sqrt{1+X}\pm\sqrt{1-X}} $$
    を含んでいる。よって
    $$ \sqrt{X}=\sqrt[4]{1+\sqrt{1-X^2}}\sqrt[4]{1-\sqrt{1-X^2}}\in L $$
    が従う。
  2. まず
    $$ L=\mathbb{C}\left(\sqrt{X},\sqrt[4]{1-\sqrt{1-X^2}}\right) $$
    である。ここで$M=\mathbb{C}\left(\sqrt[4]{1-\sqrt{1-X^2}}\right)$$K$$8$次拡大であるり、これは$\sqrt{1-X^2}$を含んでいるから、特に$\sqrt{X}\notin M$である。よって推進定理から$[L:K]=16$が従う。よって$[L:K']=2\cdot 16={\color{red}32}$である。
  3. まず$G:=\mathrm{Gal}(L/K)$の元は
    $$ \begin{array}{ccc} L&\to &L&\\ \sqrt{X}&\mapsto&(-1)^a\sqrt{X}\\ \sqrt{1-X^2}&\mapsto&(-1)^b\sqrt{1-X^2}\\ \sqrt{\sqrt{1+X}+\sqrt{1-X}}&\mapsto&i^c\sqrt{\sqrt{1+X}+(-1)^b\sqrt{1-X}}\\ \sqrt{\sqrt{1+X}-\sqrt{1-X}}&\mapsto&i^{2a-c}\sqrt{\sqrt{1+X}-(-1)^b\sqrt{1-X}}\\ \end{array} $$
    で定義される元$\sigma_{a,b,c}$全体の集合として表される。$\alpha=\sigma_{1,0,0}$及び$\beta:=\sigma_{0,0,1}$及び$\tau:=\sigma_{0,1,0}$とおくと
    $$ \mathrm{Gal}(L/K)=\left\{\alpha,\beta,\tau\middle| \begin{array}{c} \alpha^2=1\\ \beta^4=1\\ \alpha\beta=\beta\alpha\\ \tau^2=1\\ \tau^{-1}\alpha\tau=\alpha\beta^2\\ \tau^{-1}\beta\tau=\beta^3 \end{array}\right\} $$
    と表される。これのアーベル化をとると${\color{red}\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}}$になる。そして実際
    $$ {\color{red}\mathbb{C}\left(\sqrt{X},\sqrt{1+X},\sqrt{1-X}\right)} $$
    $K$$8$次のアーベル拡大かつ$L/K$の中間体であり、これが求めたかったものである。
  4. まず$H=\mathrm{Gal}(L/M)$とする。$[G:H]=2$なので$\beta^2\in H$である。ここで$x^2=\beta^2$を満たすのは
    $$ \beta,\beta^3,\alpha\beta,\alpha\beta^3,\alpha\beta\tau,\alpha\beta^3\tau $$
    で尽くされている。四元数群は位数$2$の元を$1$個、位数$4$の元を$6$個持つから
    $$ H=\{\beta,\beta^3,\alpha\beta,\alpha\beta^3,\alpha\beta\tau,\alpha\beta^3\tau,\beta^2,1\} $$
    である。ここで$M$$S/K$の中間体であるが、その中で$H$によって固定されるのは
    $$ M={\color{red}\mathbb{C}\left(\sqrt{X(1-X^2)}\right)} $$
    のみであり、これが所望の部分体である。
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藍色日和
藍色日和
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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