$$$$
ここでは東大数理の修士課程の院試の2018B02の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2018B02
以下の問いに答えなさい
- 相異なる複素数$\lambda,\mu,\eta$をとり
$$
A=\mathbb{C}[x,y,z]/(x^2+y^2+z^2+1,\lambda x^2+\mu y^2+\eta z^2+1)
$$
を考える。$A$の任意の極大イデアル$\mathfrak{m}$について
$$
\dim_\mathbb{C}\mathfrak{m}/\mathfrak{m}^2=1
$$
であるためには、$\lambda,\mu,\eta\neq1$であることが必要充分であることを示せ。 - $\lambda,\mu,\eta\neq1$であるとする。このとき環
$$
B=A\otimes_{\mathbb{C}[z]}(\mathbb{C}[z]/(x-a))
$$
が非自明な巾ゼロ元を持たないような$a$を全て挙げなさい。
- $\mathfrak{m}=(x-a,y-b,z-c)$について
$$
\dim_\mathbb{C}\mathfrak{m}/\mathfrak{m}^2=3-\mathrm{rank}\begin{pmatrix}
a&b&c\\
\lambda a&\mu b& \eta c
\end{pmatrix}
$$
であるから、これが常に$1$であるためには、$a^2+b^2+c^2=\lambda a^2+\mu b^2+\eta c^2=1$なる任意の$a,b,c$について上の式の右辺行列のランクが常に$2$であることが必要充分である。この条件が満たされているとき、$(a,b,c)=(0,0,i)(0,i,0)(i,0,0)$はいずれも$a^2+b^2+c^2=\lambda a^2+\mu b^2+\eta c^2=-1$を満たしてはいけないから、$\lambda,\mu,\eta\neq 1$が従う。一方条件が満たされていないとき、それを反例たり得るのは$(a,b,c)=(i,0,0)(0,i,0)(0,0,i)$に限られるから、このときは$\lambda,\mu,\eta$のいずれかが$1$であることが従う。 - まず
$$
\begin{split}
B&=\mathbb{C}[x,y]/(x^2+y^2+1+a^2,\lambda x^2+\mu y^2+\eta a^2+1)\\
&=\mathbb{C}[x,y]/\left(y^2+\frac{(\eta-\lambda) a^2+(1-\lambda)}{\mu-\lambda},x^2+\frac{(\eta-\mu) a^2+(1-\mu)}{\lambda-\mu}\right)
\end{split}
$$
である。ここで$\mathbb{C}[x,y]/(x^2+s,y^2+t)$が巾ゼロ元を持つには$s=0,t=0$のいずれかが満たされることが必要充分であるから、よって所望の条件を満たすような$a$は
$$
\color{red}a=\pm i\sqrt{\frac{1-\lambda}{\eta-\lambda}},\pm i\sqrt{\frac{1-\mu}{\eta-\mu}}
$$
で尽くされている。