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東大数理院試過去問解答例(2018B10)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2018B10の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。 

2018B10(改)

Cの単位開円板をΔとおき、その閉包を[Δ]とおき、S1=[Δ]Δとおく。そしてS[Δ]の近傍で定義された正則関数でf([Δ])[Δ]を満たすもの全体とする。fSf(S1)S1を満たしているとする。fΔ内に於けるゼロ点は重複を含めて有限個しかないことを示しなさい。また重複を含めたゼロ点をa1,,amと置いたとき、ある定数cS1が存在して
f(z)=ci=1mϕai(z)
と表せることを示しなさい。

まずfΔに於けるゼロ点が無数に存在したとすると、一致の定理からf=0になりf(S1)={0}であり矛盾する。よってfΔに於けるゼロ点は有限個しかない。ここで
g(z)=f(z)i=1mϕai(z)
とおく。gSである。ここでgg(S1)S1を満たす正則関数である。 この性質からgは定数関数であるかf([Δ])=[Δ]であることが従う 。しかしgΔ上にゼロ点を持たないから定数関数になる他ない。よって結果が従う。

今回は大幅に問題を変えているので元の問題を載せておきます。

2018B10
  1. fSに対して
    Tf=ϕf(0)(f(z))z
    Sの元であることを示しなさい。
  2. fSをとり、f0=f
    fn+1=T(fn)
    と置いたとき、あるnについて|fn(0)|=1であればf(S1)=S1であることを示しなさい。
  3. fSf(S1)=S1を満たすとする。このときfΔ内に少なくとも1つ以上のゼロ点を含むこと・ゼロ点の個数は有限であることを示しなさい。また重複を含めたゼロ点をa1,,amと置いたとき、ある定数cS1が存在して
    f(z)=ci=1mϕai(z)
    と表せることを示しなさい。

(1)はz=0でもwell-definedであることを確認するだけ。(2)は|fn(0)|=1なるnについて、最大値原理からfnが定数なことがわかり、fnの構成から任意のknについてfk(S1)S1が従います。あとはf(S1)S1と上の解説で述べたことからf(S1)=S1が従います。(3)は上の改題の結論から全て従います。

ここでは(1)(2)が蛇足に見えたので省略しました。元々の問題の解答は例えば Deltaさんの解答 などをご覧ください。ちなみにDeltaさんによると、この問題の(1)(2)を除いたもの(つまり今回の改題に近い形式)が1981年の京都大の院試で出ているそうです。

投稿日:221
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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