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正則ではない有限Borel測度

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位相的正則性には台がコンパクトな連続関数で近似する時などお世話になっていますがこれはどれくらい珍しいことなのでしょうか.
まず幾つか定義をします.

Borel測度,Radon測度

開集合系が生成するσ代数上の測度をBorel測度という.σ代数の元Eにおける値がEを含む開集合における値の下限で与えられるとき,測度は外部正則であるといい,Eに含まれるコンパクト集合における値の上限で与えられるとき,内部正則であるという.外部正則かつ内部正則であるとき単に正則であるという.正則な有限Borel測度をRadon測度という.

ポーランド空間

可分であり完備な距離によって距離化可能な空間をポーランド空間という.

慣れ親しんだRは明らかにポーランド空間ですが,例えばQはポーランド空間ではありません.実際Qに完備な距離が入るとすれば1点集合の可算和で表してベールのカテゴリーを用いると1点が開球を含むことになり矛盾します.

ここで次の定理が成り立ちます.

Mayerの定理の系

ポーランド空間の有限Borel測度は内部正則である.

Qはポーランド空間ではありませんが可算なのでいかなる有限測度も内部正則です.
正則でない有限Borel測度が見たい…

そこで今回は正則ではない有限Borel測度を構成しようと思います.

(X,A,μ)を有限測度空間,CX(可測とは限らない)とする.
AXに対してその外測度μ,内測度μ
μ(A)=inf{μ(B) | AB,BA}
μ(A)=sup{μ(B) | BA,BA}
により定める.

(a)AC={AC | AA}σ代数をなす.

(b)AXとする.あるA0,A1Aが存在して
A0XA1,μ(A)=μ(A0),μ(A)=μ(A1)を満たす.

(c)(b)によりCC1,μ(C1)=μ(C)を満たすC1Aを取ることができる.A1,A2AA1C=A2Cを満たすときμ(A1C1)=μ(A2C1)が成り立つ.

(d)AAに対しμC(AC)=μ(AC1)と定める.
任意のBACに対しμC(B)=μ(B)が成り立つ.
よってμCC1の取り方に依存しない.

(e)μC(C,AC)上の測度となる.

(a)簡単な集合の計算で分かる.

(b)下限の定義から任意のnNに対しあるBnAが存在してABn,μ(Bn)1n<μ(A)を満たす.よってA1=nBnとおくとμ(A1)μ(Bn)<μ(A)+1n.自然数nは任意だからμ(A1)μ(A).一方AA1だから外測度の単調性からμ(A)μ(A1)=μ(A1)となり結論を得る.同様にA0の存在も分かる.

(c)k=1,2に対しμ(C1Ak)>μ(CAk)であると仮定する.
μ(C1)=μ(C1Ak)+μ(C1Ak)
=μ(C1Ak)+μ(C1Ak)
>μ(CAk)+μ(CAk)
μ(C)=μ(C1)
となり矛盾する.よってμ(C1Ak)=μ(CAk).これと仮定から示される.

(d)B=BC,BAとおく.μC(B)=μ(BC1){μ(A) | BA,AA}の最小値であればよい.BA,AAとする.BC=BACなので(c)からμ(BC1)=μ(BAC1)μ(A)となりいえた.

(e)AnCAC,AnA(n=1,2,),AnAmC=ϕ(nm)とする.
μ((A1C1)(k=2(AkC1))
=μ(A1C1)+μ(k=2(AkC1))μ(k=2(A1AkC1))
ここで
μ(k=2(A1AkC1))μ(A1AkC1)
=μ(A1AkC)=0.
帰納的に
μ(k=1(AkC1))=k=1nμ(AkC1)+μ(k=n+1(AkC1))
有限測度だから
μ(k=n+1(AkC1))0 (n)であり
μ(k=1(AkC1))=k=1μ(AkC1)
示された.

もう一つ命題を証明します.

(X,A,μ)を有限測度空間とし,その完備化を(X,Aμ,μ)とする.前命題と同様に
μ(A)=inf{μ(B) | AB,BA}
μ(A)=sup{μ(B) | BA,BA}とおく.
AAμであるための必要十分条件はμ(A)=μ(A)が成り立つことである.

まずAAμであるとする.完備化の定義からあるE,FAが存在してEAF,μ(FE)=0を満たす.このとき
μ(E)μ(A)μ(A)μ(F)=μ(E).

逆にμ(A)=μ(A)を仮定する.nNに対しあるBn,CnAが存在してBnACn,
μ(Bn)1n<μ(A)μ(A)<μ(Cn)+1nを満たす.
B=nBn,C=nCnとおくとこれらはAの元でBACを満たし任意のnNに対し
μ(CB)μ(CnBn)0
なのでAA.

これらを用いて次が分かります.

μをルベーグ測度,Cを有界なルベーグ非可測集合とし命題2の測度空間(C,AC,μ)を考えるとこれは正則でない有限Borel測度空間である.

μ(C)=μ(C)=sup{μ(B) | BC,BAC:cpt}なら命題3によりCがルベーグ可測となり矛盾する.

特にルベーグ非可測集合には完備な距離が入らないこともわかります.実際はポーランド空間の部分空間に対してはGδ集合であることとポーランド空間であることは同値なのでBorel可測でなければ不可能です.
ルベーグ非可測集合は選択公理を使って構成している反面Rの部分集合なので身近なようなそうじゃないような…
他の例も気になるところです.

参考文献
https://math.stackexchange.com/questions/1374292/trace-sigma-algebra-and-measurable-envelope
Cohn, D.L.: Measure Theory, 2nd edn. Springer, New York (2013)

投稿日:2024330
更新日:2024330
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