ここでは東大数理の修士課程の院試の2021B10の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2021B10
の有界閉集合
をとる。ここで線型作用素を
で定義する。
- は上の有界線型作用素であることを示し、作用素ノルムを計算しなさい。
- 合成の正の固有値を全て求めなさい。
- まず
であるからは有界線型作用素である。そしてをの充分小さい近傍で、それ以外はになるような関数としてとるとはに収束する。よってである。 - まずがの固有ベクトルのとき、
と表せる。このとき
であり、の固有値をとすると
である。これを辺々で階微分すると
である。よっての固有ベクトルとしてあり得るのは
で表される関数である。このとき上で得られていたに関する積分方程式にを代入することでが得られ、積分方程式をについて階微分したものにを代入するとが得られる。よっては
を満たしているから、が固有値の固有ベクトルになっているとき
になっており、これを満たすためには整数を用いて
つまり
と表される必要がある。一方がこのように表されているとき、
とおくと、
であるからはの固有値になっている。よっての正の固有値は上で挙げたもので尽くされている。