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大学数学基礎解説
文献あり

有限体をわかりたい

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自分用にまとめたものなので, 証明などは省略しています.
誤っているところがあれば, コメントで教えてください!!
(追記)koumeiさんから, 「方程式の解の範囲をどこで考えているかを決めなければいけない. $\mathbb{F}_p$の代数閉包を固定しておけば問題ない.」という趣旨のコメントを頂きました。この記事では, $\mathbb{F}_p$の代数閉包を固定して考えます!

$p$元体

$K$の乗法群$K^{\times}$の有限部分群$G$は巡回群である.
特に$K$が有限体なら, $K^{\times}$は巡回群である.

pを素数とする。

$p$元体

$\mathbb{F}_p := \mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$は位数$p$の体である.
$\mathbb{F}_p^{\times}$は位数$p-1$の巡回群であり, 生成元$r$$p$の原始根という.

標数

$K$$1 \in K$に対して,
$1 + \cdots + 1\,(n\,\mbox{個の和}) = 0$となる最小の自然数$n$$K$の標数といい, $\mathrm{Char}(K)$とかく. このような自然数が存在しないとき, $\mathrm{Char}(K) = 0$と定める.

$n1 = 1 + \cdots + 1$を, 単に$n$とかくことにする.
環の準同型$\iota : \mathbb{Z} \to K, n \mapsto n$を考えると, $\mathrm{Ker}(\iota) = \mbox{Char}(K)\mathbb{Z}$であるから,
$$ \mathbb{Z}/\mbox{Char}(K)\mathbb{Z} \simeq \mathrm{Im}(\iota)$$
が成り立つ. $\mathrm{Im}(\iota) \subset K$は整域なので, $\mbox{Char}(K)$$0$か素数$p$になる.

  1. $K = \mathbb{Q},\,\mathbb{R},\,\mathbb{C}$の標数は$0$である.
  2. 標数が$p > 0$の体$K$の任意の元$a \in K$対して,
    $pa = a + \cdots + a = (1 + \cdots + 1)a = 0a = 0$
    が成り立つ.
  3. $\mathbb{F}_p$の標数は$p$である.

$K$を標数$p$の体とするとき, $\mathbb{F}_p \subset K$とみなせる.
$K$を標数$0$の体とするとき, $\mathbb{Q} \subset K$とみなせる.
特に, 有限体の標数は$0$でない.

$\mathbb{F}_p^{\times}$は位数$p-1$の巡回群なので, $a \in \mathbb{F}_p^{\times}$$a^{p-1} = 1$を満たす.$x^{p-1} - 1 = 0$は高々$p-1$個の解しかもたないので, $\mathbb{F}_p^{\times}$$x^{p-1} = 1$の解全体の集合と一致する. さらに$x = 0$も考えれば, $\mathbb{F}_p$の元は$x^p - x = 0$の解全体の集合と一致する.

$q$元体

$F$を位数$q$の有限体で, $\mathrm{Char}(K) = p$とすると, $\mathbb{F}_p \subset F$とみなせる. したがって, $F$$\mathbb{F}_p$上の有限次ベクトル空間である. その拡大次数を$n = [F :\mathbb{F}_p]$とおくと, $q = p^n$が成り立つ. 実際, 基底を$\{e_1,\,\cdots,\,e_n\}$とすれば,
$$ F = \{a_1e_1 + \cdots + a_ne_n \mid a_i \in \mathbb{F}_p\}$$
とかけて, 各$a_i$$p$元集合$\mathbb{F}_p$全体を動く.
また, $F^{\times}$は位数$q-1$の巡回群なので, $a \in F^{\times}$$a^{q-1} = 1$を満たす. $x^{q-1} - 1 = 0$は高々$q-1$個の解しかもたないので, $F^{\times}$$x^{q-1} - 1 = 0$の解全体の集合と一致する. さらに$x = 0$も考えれば, $F$の元は$x^q - x = 0$の解全体の集合と一致する.

$q$元体

$F$を位数$q$の体とすると, 標数$p$$\mathbb{F}_p$上の拡大次数$n$を用いて$q = p^n$とかける. $F$は, $x^q - x = 0$の解全体の集合である.
さらに, 位数$q$の有限体は同型を除いてただ一つである. これを$\mathbb{F}_q$とかく.

最後だけ示す. $F,\,F'$を位数$q$の有限体とする.
$a \in F^{\times}$を生成元として, $\mathbb{F}_p[x] \to F$$f(x) \mapsto f(a)$と定めると, $\mathbb{F}_p$上の既約多項式$\varphi(x) \mid x^q-x $で, $\mathbb{F}_p[x]/(\varphi(x)) \simeq F, \mathrm{deg}(\varphi) = n$となるものが存在する.
$F' = \{x \mid x^q -x = 0\}$であるから, $\exists b \in F', \varphi(b) = 0$となる. この$b$によって,
$\mathbb{F}_p[x] \to F$$f(x) \mapsto f(b)$と定めると, $\mathbb{F}_p[x]/(\varphi(x)) \simeq F'$となる.
したがって, $F \simeq F'$である.

素数位数でない有限体の例
  1. $\mathbb{F}_{3^2}$を調べる. $\mathbb{Q}$上では,
    $$ x^9 - x = x(x-1)(x+1)(x^2+1)(x^4+1)$$
    と因数分解でき, $x^2 + 1$$\mathbb{F}_3$上で既約であるから, $\mathbb{F}_{3^2} = \mathbb{F_3}[x]/(x^2+1)$である.
    今, $\mathbb{F}_3$の拡大体の中で$\alpha^2 + 1 = 0$となる元をとると, $$ \mathbb{F}_{3^2} = \mathbb{F}_3(\alpha) = \{a + b\alpha \mid a,\,b \in \mathbb{F}_3\}$$
    である. $r = 1 + \alpha$とおくと,
    $r^2 = 2\alpha, r^4 = 2, r^8 = 1$であるため, $r$の位数が$8$とわかる. したがって, $\mathbb{F}_{3^2}^{\times} = \langle 1 + \alpha \rangle$である.
    ちなみに, $x^9 - x$$\mathbb{F}_3$での既約分解は,
    $$ x^9 -x = x(x-1)(x+1)(x^2+1)(x^2 + x + 2)(x^2 -x + 2)$$
    である.

$1$の原始$n$乗根を$\zeta_n$とすると, 以下は同値.

  1. $\zeta_n \in\mathbb{F}_q,$
  2. $n \mid q-1,$
  3. $q \equiv 1\,\mathrm{mod}\,n.$

部分群に関するLagrangeの定理より明らか.

有限体$\mathbb{F}_{p^k}$$1$の原始$4$乗根$\sqrt{-1}$を含むための必要十分条件は, $p^k \equiv 1\,\mathrm{mod}\,4$である.

  1. $p = 3$のとき, $3^k \equiv 1\,\mathrm{mod}\,4 \Leftrightarrow k$が偶数$\,$であるから, $\sqrt{-1} \notin \mathbb{F}_3,\,\sqrt{-1} \in \mathbb{F}_{3^2}$である. 実際, 上の例では$\sqrt{-1} = \alpha$である.
  2. $p = 5$のとき$5 \equiv 1\,\mathrm{mod}\,4$であるから, $\sqrt{-1} \in \mathbb{F}_{5}$である. 特に, 任意の自然数$k$に対して$\sqrt{-1} \in \mathbb{F}_{5^k}$である.

有限体のGalois群

位数$q = p^n$の有限体は$\mathbb{F}_p$$n$次拡大体で, $x^q -x$の最小分解体であった. したがって, $\mathbb{F}_{q}/\mathbb{F}_{p}$$n$次Galois拡大である. そのGalois群について調べよう.

$K$を標数$p$の体とするとき, 任意の$a,\,b \in K$と任意の自然数$n$に対して,
$$ (a + b)^{p^n} = a^{p^n} + b^{p^n}$$
が成り立つ.

写像$\sigma_p : \mathbb{F}_{q} \to \mathbb{F}_q, x \mapsto x^p$は準同型となる.
$$x^p = y^p \Leftrightarrow x^p - y^p = 0 \Leftrightarrow 0 = (x - y)^p = x - y \Leftrightarrow x = y$$
となるので, $\sigma_p$は単射である. 位数が等しい有限集合の単射は全単射なので, $\sigma_p$$\mathbb{F}_{q}$の自己同型写像である. すると, $\sigma_p^2,\,\sigma_p^3, \cdots $$\mathbb{F}_{q}$の自己同型写像になるが, $\sigma_p$の位数は$n$である.
したがって, $\mathrm{Gal}(\mathbb{F}_{q}/\mathbb{F}_p)$は位数$n$の巡回群である.
巡回群の部分群は位数$d \mid n$の巡回群であり, これに対応する中間体は$\mathbb{F}_{p^d}$であるから,
$$ \mathbb{F}_{p^d}\, \mbox{が}\, \mathbb{F}_{q}\, \mbox{の中間体} \Longleftrightarrow\,d \mid n$$
が成り立つ.

$q = p^n$のとすると, $\mathbb{F}_{q}/\mathbb{F}_{p}$はGalois拡大で,
$$ \mathrm{Gal}(\mathbb{F}_{q}/\mathbb{F}_{p}) \simeq \langle \sigma_p \rangle $$
ただし, $\sigma_p : \mathbb{F}_{q} \to \mathbb{F}_q, x \mapsto x^p$である. $\sigma_p$を, Frobenius自己同型という.
$\mathbb{F}_{q}/\mathbb{F}_{p}$の中間体は, $\mathbb{F}_{p^d},\,d \mid n$とかけるものすべてである.

参考文献

[1]
山本芳彦, 数論入門
投稿日:66
更新日:616

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