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大学数学基礎解説
文献あり

多項式版Goldbachの予想

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多項式版Goldbachの予想

整数論の有名な未解決問題の1つであるGoldbachの予想とは次のものです.

Goldbachの予想

4以上のすべての偶数は2つの素数の和として表すことができる.

非常に有名なので, 知っている人が多いでしょう. それに対し, 今回証明する "多項式版Goldbachの予想" とは, 次の定理のことです.

f(X)Z[X]がモニック多項式でdegf=d1ならば, Z上既約なモニック多項式g(X),h(X)Z[X]が存在して, f(X)=g(X)+h(X)となる.

Goldbachの予想に似ていますね. ただし, Goldbachの予想における "4以上の偶数" に対応する部分は "任意の定数でないモニック多項式" となっています.

証明

この証明はaのTheorem 1の証明を和訳・一部改変したものです.
証明に次の2つの補題を使います. これらは有名なものなのでここでは証明しません.

Eisensteinの既約判定法

f(X)=anXn+a0Z[X] (an0)とする. このとき, ある素数pが存在してpai (1in1),pan,p2a0が成り立つならばfQ上既約である.

整数a,bが互いに素ならば, 整数u,vが存在して
au+bv=1
となる.

それでは, 定理の証明を行っていきます.

f(X)=Xd+Fd1Xd1++F1X+F0とする. ここで, Fd11=±1のときはf(X)f(X+2)で置き換えて, Fd11±1であるとしてよい. (同型Z[X]Z[X+2],XX+2で写せばよい.) 補題1により, 任意の素数pに対して多項式g(X)=Xd+pGd1Xd1++pG1X+G0 (G0p(modp2))Z上既約である. 同様に, 任意の素数qに対して多項式h(X)=Xd1+qHd2Xd2++qH1X+H0 (H0q(modq2))Z上既約である. ここでpqとすれば, 補題2によりGi,Hi (1id2)pGi+qHi=Fiとなるようにとることができる. ゆえに, 次の2つを示すことで証明が完了する.
(1) ある素数pが存在してp(Fd11).
(2) ある整数G0,F0が存在してG0p(modp2),H0q(modq2),G0+H0=F0.
(1)は, Fd11±1だからpFd11の任意の素因数からとればよい.
(2) pqは互いに素だから, p2modq2における逆元が存在する. これを(p2)q1で表わす.
G0=p(p2)(p2)q1(p+qF0)H0=F0p+(p2)(p2)q1(p+qF0)
とすると, G0p(modp2),H0q(modq2)であり, G0+H0=F0である.

おわり

証明できました. ところで, Goldbachの予想が約3世紀もの間証明されていないことを考えると, "多項式版" の証明は非常に簡単なように思えます. これは, 多項式ゆえの簡単さが関係していると考えています. 例えば, 整数の場合は, 生成する値が常に素数になる式のようなものがいまだ見つかっておらず, 非常に重要な問題の1つとなっていますが, 整係数多項式の場合はEisensteinの既約判定法により比較的簡単に既約多項式を作ることができる, ということです. 生きている間にGoldbachの証明を見てみたいですね.

参考文献

投稿日:119
更新日:123
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