準備
として,連続写像のことを複素関数って定義します.面倒を避けるためには開集合でとっておくことにして,複素関数の微分可能性は次で定義します.
を開集合とする.がで微分可能であるとは,極限
が存在するときをいう.
複素関数が与えられたときにをとおけば,ある実連続関数が存在して
とかけてくれる.このときが連続になることは,新しくみたいな二変数関数を考えて連続性の定義を思い出してあげればすぐわかる.逆に適当な実連続関数をとってでをとれば,が連続になることも分かる.だから,連続性だけ見るならば複素関数はベクトル値関数としてみても特に問題はないっぽい.以降,複素関数に対して得られる実連続関数をそれぞれの実部,虚部って呼ぶことにする.
本題
複素関数の微分可能性について,次が必要十分条件になる.
は開集合でを複素関数,とする.このときがで微分可能であることと,の実部と虚部が実関数の意味でで微分可能で,かつ等式
が成り立つことは同値.
この命題の中で与えられてる関係式
はCauche-Riemannの関係式って呼ばれていて,神保先生の複素関数入門には一つの式で書くこともできるって書いてある.まぁでもそっちは今回使わないから,これを指してCauchy-Riemannの関係式と呼ぶことにする.
こっからこの命題を証明していくわけだけど,実関数の微分可能性周りについて先に色々まとめておくことにします.そっちの方が見やすいし.
二変数の微分可能性
(連続とは限らない)二変数関数について,ある実数が存在して極限
が成り立つとき,は点で微分可能という.
関数について「連続とは限らない」って言葉をつけたけど,微分可能だったら次の手順で連続性がわかるからって理由.二変数関数が点で微分可能であれば,あるが存在して
が成り立つのだから,とおけば上の式は
が成り立つことと同値になる.さていま,
となって,どっちの式もに収束するから全体としてもに収束する.よって連続性の定義からは点で連続となる.でももっと偉くて,微分できるなら偏微分できることも分かる.これは二変数関数が偏微分可能とはは軸に沿った方向微分が可能ということに注意すれば,すぐに証明の方針も思いつくと思う.
二変数関数が点で微分可能ならばは点で偏微分可能である.
示すことは二つの極限
が存在することである.仮定からある実数が存在して
が成り立つから,とすれば左の式について
となるから,
が成り立つ.右の式についても同様.したがっては点で偏微分可能.
この命題から分かるように,が微分可能であるときに与えられるという実数は,それぞれをに関する点での偏微分係数に一致する.実は一般にこの逆は成り立たず,偏導関数が少なくとも一つ連続であることが必要になる.こういう関数のことを級関数とか呼んだりするけど,こっからその名前を使わないので知ってる人だけ「あ~知ってる知ってる」って顔しててください.
定理1の証明
この証明は
このpdf
のp44~45を参照しています.…….
まず複素関数が点で微分可能ならばの実部と虚部が微分可能であることを示す.
がで微分可能であるとは,ある実数が存在して極限についての等式
が成り立つことであった.いまとおけば,
が成り立つ.すると,
となるから,これをで割れば,次の等式を得る.
もし左辺がでに収束するならば,右辺のノルムの中身の実部と虚部についてもに収束する必要があるから,この実部と虚部のノルムもに向かう.ここでだから結局は点で微分可能となる.
したがっての実部と虚部は偏微分もできて,このときとなるから,Cauchy-Riemannの関係式も成り立つと分かる.
あとは逆を示せばいい.
定理1の逆.
の実部と虚部が実関数の意味でで微分可能で,かつCauchy-Riemannの関係式
が成り立つとする.このときの微分可能性からある実数が存在して,以下の二つの式
の,点が点へ向かう極限がになる.このはそれぞれの点における方向についての偏導値に一致して,この偏導値についてCauchy-Riemannの関係式が成り立つのだから,とおけばこれらの式はそれぞれ次の式に一致する:
さて,等式
に関しては,の微分可能性を使わずに式変形のみで得られるから,右辺について三角不等式を用いれば
となる.よってはさみうちの原理により
となって,の点での微分可能性が分かる.
おわり
乾燥した感想ですが,冗長だなぁという感じです.まぁわざとそう書いたのでそうなんですけど,やってることとしては定義を使うことと解析特有の謎変形くらい?めんどくさかったです.あと調べてて知ったんですけど,多変数の微分可能性を”全微分可能”とか呼んだりするらしい.次は解析入門I(杉浦)のp122から引用.
――このように多変数関数では微分可能ということは,各座標について偏微分可能というより強い条件である.このことを強調して,微分可能のことを全微分可能ともいう.
本文中で一瞬だけ触れた気がするけど,そういう理由らしい.何か誤植とか致命的なミスとか間違いがあればコメントください.待ってます.