ここでは東大数理の修士課程の院試の2010B01の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2010B01
可換環
について以下の問いに解答しなさい。
- 単射環準同型を一つ構成し、剰余群の濃度を計算しなさい。
- の素イデアルで、を含むものを全て求めなさい。
- 乗法群の群構造を巡回群の直積として表しなさい。
- を
で定める。ここでの元は全て
の形(但し)のもので代表されるが、による像がになるのはのときに限る。よっては単射である。ここではを適切な基底を取ったとき
と表現されるから、が分かる。よってである。 - まずを含むのでここから及びを含むこともわかる。よって
である。 - によって環準同型
が誘導される。右辺の単元がの像に含まれているにはかつであることが必要充分である。ここでの単元の為す群構造は
である。またの像に含まれる位数の元はのみであり、の像はを含むから、ランクと捩れ群を考えることで
が分かる。