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近傍系と開核作用素の関係

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目次

はじめに

この記事では、近傍系と開核作用素の間にある対応について軽くメモ書き。

定義

$X$を集合とし、$2^X$$X$の冪集合とする。

近傍系の定義は次のとおりである。

近傍系

写像$\mathcal{U}\colon X\to 2^{2^X}$$X$上の近傍系であるとは、各点$x\in X$に対して次の条件をそれぞれ満たすときいう。

  • $\mathcal{U}(x)$$X$上の空でないフィルターである。すなわち、
    • 任意の$U,V\in\mathcal{U}(x)$に対して$U\cap V\in \mathcal{U}(x)$
    • 任意の$V\in\mathcal{U}(x)$$U\subseteq X$に対して、$V\subseteq U$を満たすならば$U\in\mathcal{U}(x)$である。
  • $U\in\mathcal{U}(x)$に対して$x\in U$
  • 任意の$U\in\mathcal{U}(x)$に対して次を満たすような$V\in\mathcal{U}(x)$が存在する:
    • 任意の$y\in V$に対して$U\in\mathcal{U}(y)$となる。

$x\in X$に対して$\mathcal{U}(x)$の各元を点$x$の近傍という。

他方、開核作用素の定義は次のとおりである。

開核作用素

写像$I\colon 2^X\to 2^X$$X$上の開核作用素であるとは、各$A,B\in 2^x$に対して次の条件をそれぞれ満たすときいう。

  • $I(A)\subseteq A$かつ$I(X)=X$
  • $I(I(A))=I(A)$
  • $I(A\cap B)=I(A)\cap I(B)$

$A\subseteq X$に対して$I(A)$$A$の内部という。

近傍系と開核作用素の間の対応

位相空間$X$において、写像$\mathcal{U}\colon X\to 2^{2^X}$,$I\colon 2^X\to 2^X$

  • $x\in X$に対して$\mathcal{U}(x):=\{S\in 2^X\mid x\in G\subseteq S$を満たすような$X$の開集合$G$が存在する$\}$
  • $S\in 2^X$に対して$I(S):=\{x\in X\mid x\in G\subseteq S$を満たすような$X$の開集合$G$が存在する$\}$

とすることで、$\mathcal{U},I$はそれぞれ$X$の台集合上の近傍系、開核作用素となる。このとき、$\mathcal{U},I$をそれぞれ$X$上の近傍系、開核作用素という。
他方、集合$X$に対して定まる$X$上の近傍系$\mathcal{U}$、開核作用素$I$に対して

  • $G$$(X,\mathcal{U})$において開集合であることを、各$x\in G$に対して$G\in\mathcal{U}(x)$が成り立つときとする。
  • $G$$(X,I)$において開集合であることを、$I(G)=G$が成り立つときとする。

として2つの位相空間$(X,\mathcal{U})$,$(X,I)$が定まる。このとき、先程と同様にして$(X,\mathcal{U})$上の近傍系を$\mathcal{V}$, $(X,I)$上の開核作用素を$J$とすると$\mathcal{U}=\mathcal{V}$かつ$I=J$が成り立つ。

今得られた結果を次にまとめておく。

位相空間とその近傍系
  • 位相空間$X$$X$の台集合上の近傍系$\mathcal{U}$の間の対応$X\mapsto\mathcal{U}$を次のように定める。
    $x\in X$に対して$\mathcal{U}(x):=\{S\in 2^X\mid x\in G\subseteq S$を満たすような$X$の開集合$G$が存在する$\}$として定める。
  • 集合$S$上の近傍系$\mathcal{U}$$S$を台集合に持つ位相空間$X$の間の対応$\mathcal{U}\mapsto X$を次のように定める。
    $S$の部分集合$G$$X$の開集合であることを、各$x\in G$に対して$G\in\mathcal{U}(x)$が成り立つときとする。

このとき、この2つの対応は互いに逆の関係にある。

証明本文
  1. 位相空間$X$により定まる$\mathcal{U}$が近傍系であることを示す。
  2. $x\in X$を任意にとり固定する。
    • $U,V\in\mathcal{U}(x)$に対して$x\in G\subseteq U$かつ$x\in H\subseteq V$を満たすような$X$の開集合$G,H$が存在する。ここで、$G\cap H$もまた$X$の開集合であるため$x\in G\cap H\subseteq U\cap V$より$U\cap V\in\mathcal{U}(x)$である.
      $V\in\mathcal{U}(x)$とし$X$の部分集合$U$$V\subseteq U$を満たすとして任意にとると、$x\in G\subseteq V$なる$X$の開集合$G$がとれるため$x\in G\subseteq U$より$U\in\mathcal{U}(x)$となる。
      これらより、$\mathcal{U}(x)$はフィルターである。
    • $\mathcal{U}$の定め方より明らかに各$U\in\mathcal{U}(x)$に対して$x\in U$である。
    • $U\in\mathcal{U}(x)$を任意にとり固定する。このとき、$x\in G\subseteq U$となる$X$の開集合$G$がとれるため、$G\in\mathcal{U}(x)$であり、$y\in G$に対して$y\in G\subseteq U$より$U\in\mathcal{U}(y)$となる。
    これらより、$\mathcal{U}$$X$の台集合上の近傍系である。
  3. 集合$S$上の近傍系$\mathcal{U}$により定まる空間$X$が位相空間であることを示す。
    • $x\in X$に対して$\mathcal{U}(x)$は空でないフィルターであるため$X\in\mathcal{U}(x)$となる。よって$X$は開集合である。
      $\emptyset$が開集合でないとすると、$\emptyset\notin\mathcal{U}(x)$となる$x\in\emptyset$が存在してしまうため矛盾。よって$\emptyset$は開集合である。
    • $\mathcal{G}$$X$の開集合からなる有限集合とする。$\bigcap\mathcal{G}=\emptyset$または$\mathcal{G}=\emptyset$ならば先の結果から$\bigcap\mathcal{G}$$\emptyset$または$X$となるため開集合である。他方、$\bigcap\mathcal{G}\neq\emptyset$かつ$\mathcal{G}\neq\emptyset$ならば、$x\in\bigcap\mathcal{G}$を任意にとり固定したとき、各$G\in\mathcal{G}$に対して$G\in\mathcal{U}(x)$となるため、$\bigcap\mathcal{G}\in\mathcal{U}(x)$となる。よって、$\bigcap\mathcal{G}$$X$の開集合となる。
    • $\mathcal{H}$$X$の開集合からなる(有限とは限らない)集合とする。$\mathcal{H}=\emptyset$ならば先の結果から$\bigcup\mathcal{H}=\emptyset$となるため開集合である。他方、$\mathcal{H}\neq\emptyset$ならば、$x\in\bigcup\mathcal{H}$に対して$x\in H$となる$H\in\mathcal{H}$が存在して$H\in\mathcal{U}(x)$となるため、$H\subseteq\bigcup\mathcal{H}$より$\bigcup\mathcal{H}\in\mathcal{U}(x)$となる。よって、$\bigcup\mathcal{H}$$X$の開集合となる。
    • これらより、$X$は位相空間となる。
  4. この2つの対応が互いに逆の関係になっていることを示すが、ほとんど明らかなため省略する。
位相空間とその開核作用素
  • 位相空間$X$$X$の台集合上の開核作用素$I$の間の対応$X\mapsto I$を次のように定める。
    $S\subseteq X$に対して、$x\in G\subseteq S$なる$X$の開集合$G$が存在するような$x\in X$全体を$I(S)$として定める。
  • 集合$S$上の開核作用素$I$$S$を台集合に持つ位相空間$X$の間の対応$I\mapsto X$を次のように定める。
    $S$の部分集合$G$$X$の開集合であることを、$I(G)=G$が成り立つときとする。

このとき、この2つの対応は互いに逆の関係にある。

証明本文
  1. 位相空間$X$により定まる$I$が開核作用素であることを示す。
  2. $A,B\subseteq X$を任意にとり固定する。
    • $x\in I(A)$に対して$x\in G\subseteq A$となる$X$の開集合$G$が取れるため$x\in A$。よって$I(A)\subseteq A$。特に$A$が開集合であるとき$x\in A$に対して$x\in I(A)$となるため$I(A)=A$となる。
    • $A\subseteq B$を満たすと仮定する。このとき、$x\in I(A)$に対して$x\in G\subseteq A$となる$X$の開集合$G$が取れるため$x\in G\subseteq B$より$x\in I(B)$となる。よって、$I(A)\subseteq I(B)$となる。
    • $I(A)\subseteq A$と先に示したことから$I(I(A))\subseteq I(A)$となる。また、$x\in I(A)$に対して$x\in G\subseteq A$となる$X$の開集合$G$が取れるため$x\in G=I(G)\subseteq I(A)$より$x\in I(I(A))$となる。よって、$I(I(A))=I(A)$となる。
    • 先に示したことから$A\cap B\subseteq A,B$より$I(A\cap B)\subseteq I(A)\cap I(B)$であり、$x\in I(A)\cap I(B)$に対して$x\in G\subseteq A$かつ$x\in H\subseteq B$を満たすような$X$の開集合$G,H$が取れて$G\cap H$もまた$X$の開集合なため$x\in G\cap H\subseteq A\cap B$より$x\in I(A\cap B)$。これらより、$I(A\cap B)=I(A)\cap I(B)$となる。
    これらより、$I$$X$の台集合上の開核作用素である。
  3. 集合$S$上の開核作用素$I$により定まる空間$X$が位相空間であることを示す。
    • $I(X)=X$かつ$I(\emptyset)\subseteq\emptyset$より$X,\emptyset$$X$の開集合である。
    • $\mathcal{G}$$X$の開集合からなる有限集合とする。$\bigcap\mathcal{G}=\emptyset$または$\mathcal{G}=\emptyset$ならば先の結果から$\bigcap\mathcal{G}$$\emptyset$または$X$となるため開集合である。他方、$\bigcap\mathcal{G}\neq\emptyset$かつ$\mathcal{G}\neq\emptyset$ならば、各$G\in\mathcal{G}$に対して$I(G)=G$なため、$\bigcap_{G\in\mathcal{G}}I(G)=\bigcap\mathcal{G}$となる。よって、$\bigcap\mathcal{G}$$X$の開集合となる。
    • $\mathcal{H}$$X$の開集合からなる(有限とは限らない)集合とする。$\mathcal{H}=\emptyset$ならば先の結果から$\bigcup\mathcal{H}=\emptyset$となるため開集合である。他方、$\mathcal{H}\neq\emptyset$ならば、$x\in\bigcup\mathcal{H}$に対して$x\in H$となる$H\in\mathcal{H}$が存在するため$x\in H\subseteq\bigcup\mathcal{H}$より$x\in I(\bigcup\mathcal{H})$となる。よって、$\bigcup\mathcal{H}$$X$の開集合となる。
    • これらより、$X$は位相空間となる。
  4. この2つの対応が互いに逆の関係になっていることを示すが、ほとんど明らかなため省略する。

これらによって得られる、位相空間とその台集合上の近傍系の間、位相空間とその台集合上の開核作用素の間にある1対1な対応により、集合$X$を固定するごとに$X$上の近傍系と$X$上の開核作用素の間にある1対1な対応が導かれるが、この対応は次に定める写像$\varphi_{X,2}$の部分写像となっている。

集合$X,Y$に対して写像$\varphi_{X,Y}\colon (Y^X)^{Y^X}\to (Y^{Y^X})^X$を次のように定める。

$\varphi_{X,Y}(t)(x)(p)=t(p)(x),\qquad x\in X,\quad p\in Y^X,\quad t\in (Y^X)^{Y^X}$

$\varphi_{X,Y}\colon (Y^X)^{Y^X}\to (Y^{Y^X})^X$は全単射な写像となっており、全単射な写像$f\colon X\to A,g\colon Y\to B$に対して次の図式が可換となる。


$ \xymatrix{ (B^A)^{B^A}\ar[rr]^{\varphi_{A,B}}\ar[d]^{p(f,g)}&& (B^{B^A})^A\ar[d]^{q(f,g)}\\ (Y^X)^{Y^X}\ar[rr]^{\varphi_{X,Y}}&& (Y^{Y^X})^X } $

ただし、$u\in (B^A)^{B^A},v\in(B^{B^A})^A,t\in Y^X,x\in X$に対して
\begin{align*}p(f,g)(u)(t)(x)&=\,(g^{-1}\circ u(g\circ t\circ f^{-1})\circ f)(x)\\q(f,g)(v)(x)(t)&=\,g^{-1}\circ(v\circ f)(x)(g\circ t\circ f^{-1})\end{align*}
として定まる。

証明本文$u\in (B^A)^{B^A},t\in Y^X,x\in X$に対して、

\begin{align*}q(f,g)\circ\varphi_{A,B}(u)(x)(t)&=\,g^{-1}\circ(\varphi_{A,B}(u)\circ f)(x)(g\circ t\circ f^{-1})\\&=\,g^{-1}\circ\varphi_{A,B}(u)(f(x))(g\circ t\circ f^{-1})\\&=\,g^{-1}\circ u(g\circ t\circ f^{-1})(f(x))\\&=\,p(f,g)(u)(t)(x)\\&=\,\varphi_{X,Y}\circ p(f,g)(u)(x)(t)\end{align*}より、$q(f,g)\circ\varphi_{A,B}=\varphi_{X,Y}\circ p(f,g)$なため図式は可換となる。

近傍系と開核作用素の間の1対1対応

$X$を集合とする。このとき、$X$上の近傍系全体と$X$上の開核作用素全体は先に定めた写像$\varphi_{X,2}$により同型となる。

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桜武
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