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ここでは東大数理の修士課程の院試の2023A03の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2023A03
有限次元$\mathbb{C}$線型空間$V$をとり、$r$を$\dim V$未満の正整数とする。$\mathbb{C}$線型写像$f:V\to V$に対して、$\wedge^r:\wedge^rV\to \wedge^rV$を$f$の誘導する$\mathbb{C}$線型写像とする。
- ある$r$に対して$\wedge^r$が同型であれば、$f$も同型であることを示しなさい。
- $f$が同型であるとする。ある$r$に対して$\wedge^rf$が対角化可能であれば、$f$も対角化可能であることを示しなさい。
- 対偶を示す。$f$が同型でなかったとする。このとき$f(x)=0$なる$x\neq 0$をとり、$e_1=x$になるよう$V$の基底$e_1,\cdots,e_n$を取る。このとき
$$
e_1\wedge\cdots\wedge e_k\neq0
$$
である一方、この$\wedge^kf$による像は$0$になる。特に$\wedge^kf$は同型ではない。 - 対偶を示す。$f$が対角化不可能であるとする。ここで$V=\oplus_{i=1}^{n}W_i$を各直和成分上$f$は固有ベクトルを$1$つしか持たず、$V_1$の次元が$2$以上になるような固有空間分解とする。そして$a_i$を各直和成分上$f$の固有値とする。このとき$V_i$の基底$e^i_1,\cdots,e^i_{n_i}$を
$$
f(e_i)=\begin{cases}
a_ie^i_s+e_{s-1}&(i\neq 1)\\
a_ie_1&(i=1)
\end{cases}
$$
を満たすように取れる。このとき$\sum_{i}l_i=r$かつ任意の$i$に対して$l_i\leq n_i$でありかつ$l_1< n_1$であるような自然数列$l_i$をとり、
$$
x=(e^1_1\wedge\cdots\wedge e^1_{l_1})\wedge\cdots\wedge(e^n_1\wedge\cdots\wedge e^n_{l_n})
$$
$$
y=(e^1_1\wedge\cdots\wedge e^1_{l_1-1}\wedge e^1_{l_1+1})\wedge\cdots\wedge(e^n_1\wedge\cdots\wedge e^n_{l_n})
$$
とおく。このとき
$$
f(x)=\left(\prod_ia_i^{l_i}\right)x
$$
$$
f(y)=\left(\prod_ia_i^{l_i}\right)y+\frac{\prod_ia_i^{l_i}}{a_1}x
$$
であるから$x,y$で生成される空間$W$は$\wedge^rf$で安定な一方、$\wedge^rf$は$W$上で対角化不可能である。対角化可能な線型写像はその写像で安定な部分空間上でも対角化可能であるから、これにより$\wedge^rf$の対角化不可能性が従う。